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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

子供に「バンドをやりたい」と言われたら…

毎週連載

第118回

前々回、江口くんがお父さんになる話をしたけど、僕は常々考えていることがあって。もし自分に子供ができて、その子供に物心がついたときにさ「私、バンドやりたい」「僕、音楽で食っていきたい」と言われたら、「どう返事をするべきかな」ってこと。

答えは決まっててさ、自分の子供がバンドとか音楽をやると言ったら絶対に反対。世の中には色んな仕事があるんだから、できるだけ安定した仕事に就いてほしいなっていう。これは子を持つ親だったら普通の考えなんじゃないかと思う。

実際、僕自身も音楽をやるにあたって山形の両親から相当な反対があった。そのときはさ、自分でも「そんな軽々しい気持ちではない。真剣なんだ」と思ったけど、そんなこと親は確かめようがない。僕自身だって何の道しるべがないところで根拠なく「真剣なんだ」って思ってるだけなんだから。それは親としたら絶対反対するよね。

だって何の保証もなければ、先行きなんかまったく見えないんだよ、バンドとか音楽をやるってことは。「野垂れ死にするかもしれない」ってことだから、それをあえて選ぶっていうのは、もうどんな不遇な目にあってもしょうがないわけさ。そんなことを勧める親はいないと思うな。

話が変わるけど、今新型コロナウイルスの感染拡大で、誰にとっても大変な状況になってるでしょ。転じて「政府の対応が良くない」とかの意見も多い。でも、僕自身は社会とか政治に対して、文句を言うことができない立場だと思ってる。普通の公務員とか会社員、自分でお店をやってる人とかは、例えば政府に対して、どんどん文句を言って良いと思うし、それは当然の権利だと思う。

あるいはライブハウスを経営している人とかもね。バンドマンとライブハウスは密接な関係だけど、ライブハウスは「経営する」っていうきちんとした仕事だからね。

でもさ、バンドマンって、どこかカタギじゃないんだよ。特に「パンクバンドをやりたい」と思った人は「世の中がどうなろうが、知ったこっちゃねぇ」ってつもりでやってるんだから、世の中が大変な状況になり、自分自身も痛い目にあっても文句は言えないはずなんだよ、本当は。

だから、僕自身は、親に猛反対されながらも「バンドをやろう」と最初に始めたときから「社会がどうなっても受け入れるしかない」っていう覚悟は当然できてる。「世の中がどうだろうが、知ったこっちゃねぇ」を選んでしまったんだから、政府とか社会に噛み付いたり、しがみついたりすることは到底できないってことなんだ。

だから、とてもじゃないけど、僕の立場からは政府に対して文句を言うことはおろか「お金ちょうだい」なんて絶対に言えないんだよね。僕なんかそんな身分じゃないというのもあるし、また気持ちのどこかでは「世の中がどうなろうが、てめぇのところでなんとかやってやる!」っていう思いもあるからね。

だから、取材とかで「新型コロナウイルス感染拡大についてどう思うか」「今の社会の風潮に対してどう思うか」って聞かれることがあるけど、できるだけそういう話はしたくないのが正直なところ。そんなことを語れる立場でもないし、自分以外の他の誰かを裁くなんてできないからね。

それがバンドマンっていう水商売を選んだ宿命だよ。だから、自分の子供がそんな道を選ぶんだとしたら、まぁ絶対反対だね。やっぱり普通に安定した職業の中で、やりたいことに近いものに就いてもらうほうが絶対に良いはずだと思うからね。

バンドマンをやるって、野垂れ死んでも仕方がないってことだよ。

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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