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名優ホアキン・フェニックスが語る衝撃作『ジョーカー』

ぴあ

19/10/3(木) 7:30

『ジョーカー』 (C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

現代の映画界で新作が待たれている名優は何人か存在するが、ホアキン・フェニックスは間違いなくそのリストの上位に名が刻まれている。数々の作品で重厚な演技を見せ、次はどんな役を選ぶのか、次はどの監督とタッグを組むのか映画ファンは気になっているはずだ。そんな中、彼は『ハングオーバー!』シリーズのトッド・フィリップス監督と新作に挑んだ。心優しい男が“悪のカリスマ”へと変貌を遂げる衝撃的な物語『ジョーカー』だ。

全世界の映画ファンを驚かせ、同時に脱力させた“俳優廃業&ラッパー転向事件(後に演技だったと判明)”を挟んではいるものの、ホアキン・フェニックスはキャリアを通じてシリアスで重厚、作家性の高い作品を選んで出演してきた。「僕は主にフィルムメーカーに惹かれるんだ。僕にとって良い役者と偉大な役者の違いはそこにある。大事なのは偉大なフィルムメーカーだよ。だから作品を選択をする時、フィルムメーカーの存在が僕を動機づけているんだと思うよ」

ポール・トーマス・アンダーソン、スパイク・ジョーンズ、リン・ラムジー、そしてジェームズ・グレイ……確かに彼は“どの監督と組むか?”を重視している。そこで彼は人気コメディ『ハングオーバー!』シリーズで一躍その名を知られるようになったトッド・フィリップスを次のパートナーに選んだ。「彼のコメディにはとてもニュアンスがあったと思う。キャラクター表現が豊かで、人々が“ブロ・フィルム(男友達と見る映画)”と呼んでいるようなものじゃない。キャラクターをもっと深く理解し、深く掘り下げているんだ。だから今作は彼がこれまでにやってきたことの続きだと思う。彼にはリアルな繊細さとリアルな思いやり、そして不敬でワイルドなユーモアのセンスの完璧なバランスがあるんだ」

本作でフェニックスが演じたアーサーは、過酷な大都市で病気の母親と暮らす孤独な男だ。どんな時も人を笑顔にさせることが大事だと信じてピエロの扮装で働いているが、生活は苦しく、孤独や不安は癒えず、誰かに優しさを与えても、それは暴力や攻撃によって戻ってきてしまう。俺は誰と話したらいい? 俺は誰に不安を打ち明けたらいい? 誰に考えたジョークを言えばいい? アーサーの悲痛な叫びをフェニックスは細やかに表現していく。

「観客はアーサーが孤独だと感じるかもしれないけど、僕はいつもトッド(・フィリップス監督)がすぐそこにいるように感じていた。僕がやったことのすべては、僕とトッドが常にコミュニケーションを取り合って、いろんなことについて話し合いながらやったことなんだ」

ふたりは撮影が始まるずっと前から長い時間をかけて話し合い、意見を出し合い、共同で創作を続けた。その成果のひとつが“アーサーが初めて銃を手にした夜”を描いたシーンだ。踏みにじられ、生きているだけで暴力にさらされてきたアーサーは偶然に手にした銃を持ち帰り、老いた母が寝た後で、ひとり銃を手に踊り、虚空に向かって語り、自分がこれまで表に出してこなかった感情をあらわにする。 「最初は脚本に“銃を手にして遊んでいる”と書いてあるだけのシーンだった。僕はアーサーがどういう精神状態にあるか表現し、彼が認められたいとか、パワフルに感じたいなどの圧倒的な要求を持っていることを見せるための方法を探していた。そんな中で、アーサーが銃を手に踊りながら誰かに話しかけるシーンが生まれてきたんだよ。それは最初、僕とトッドが考えていたものではなくてセットで見つけたものだ。アーサーはどのようにして人とコミュニケートしていいのかわからない人間だ。というのも、彼は暴力的ではないコミュニケーションの方法を学んだことがないからだ。彼はずっと暴力にさらされてきた。僕らは暴力というものは学習できるものだし、やがて忘れたり制御できるものだと知っている。でも、彼はそれを学ぶ機会がなかったんだよ」

身体的、精神的な暴力にさらされてきたアーサーは、小さな銃を手にしたことをきっかけに自分の中にある願いや想いを“暴力”にして表現することを覚えていく。そこでポイントになるのは、多くの映画で描かれるような“主人公が変化する決定的な瞬間”が本作では描かれないことだ。「アーサーがいつジョーカーになるのか? どうしてこんなユニークな状況が結果的に生まれてしまったのかを指摘するのは難しい。“ひとつの明確なきっかけ”があるとは思わないからね」

だからこそフェニックスは、映画の冒頭から繊細な動き、表情の変化、視線の移動を積み重ねて、心優しいアーサーが少しずつ変化し、最終的に自らを“ジョーカー”と名乗るまでを演じていく。誰よりも哀しく、誰よりも優しく、想像を絶するほどに残酷。近づきがたいほどの恐怖を感じるのに、心のどこかで共感している……観客は映画を観ながら主人公から目が離せなくなり、様々な感情が渦巻くことになるだろう。

「人生は複雑だと思うんだ。だからこそ僕は、そのことを反映しているキャラクターを探している。簡単な答えを与えてくれないものをね。僕らは映画の中でヒーローと悪役を表面的に理解してしまうことが多いけど、それは現実の社会を正しく反映していないと思うんだ。だからこそ僕はこのテーマを掘り下げられるキャラクターを探してきた。僕はクリエイターがなぜそんな題材を描こうとするのかわからない。僕の理解を超えていることもあるからね。でも、僕はあるキャラクターを“演じずにはいられない”状態になることがあるんだ。なぜそうなるのか……本当にわからないんだけどね」

『ジョーカー』 10月4日(金) 全国ロードショー

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