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「由宇子の天秤」春本雄二郎と片渕須直、“超情報化社会”に警鐘鳴らす

ナタリー

左から春本雄二郎、片渕須直。

「由宇子の天秤」の記者会見が東京・日本外国特派員協会で9月13日に行われ、監督の春本雄二郎、プロデューサーを務めた片渕須直が出席した。

女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子が、父・政志から思いもよらぬ“衝撃的な事実”を聞かされ究極の選択を迫られることになる本作。瀧内公美が由宇子、光石研が政志を演じた。

ダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ)、クシシュトフ・キェシロフスキ、増村保造といった映画監督が自分の人生に大きな影響を与えたと語る春本。本作においては、ともにシナリオを作り上げた2人の人物の影響が大きかったようで「脚本が骨太になったのは、彼らの力があってこそ。本来だと表に出てこないようなプロデューサーによって、ディレクターのメッセージが情報操作によってゆがめられてしまったり、なかったことにされてしまうという実態が業界にあるんだと彼らは教えてくれました」と振り返る。しかし映画が完成して間もなく突然2人とも亡くなってしまい、春本は「すごく楽しみにされていたのに、観ることができなかった。それが僕の中では一番心残りです。彼らの思いを残していくためにも、この映画を1人でも多くの方に届けていきたい」と胸の内を語った。

また本作を通して何を訴えたいか問われると、春本は「この世の中で私が問題だと思うのは、情報があふれすぎていること。現代は情報化社会を飛び越えた“超情報化社会”だと思います」と語り出す。「メディアはより注目を浴びるため、わかりやすく、かつ視聴者が飛び付くような切り取り方をして、結果、情報が間違った形で視聴者に伝わってしまう。それを見て、誰かが犯したミスを一時的な感情で叩いたり、つるし上げてしまうことが起きがちです」と指摘し、「光が届いていないことにこそ、もっと想像を及ぼさないといけない。受け取る側も、メディアは一部の情報なんだという冷静な視野を持つことが必要。この映画がその一助になればと思います」と力説した。

また片渕は「『由宇子の天秤』というタイトルを最初に聞いて、てっきり裁判・法廷の映画かと思ったんですよ。ジャッジする人がいて、『お前が犯人だ』と言う人がいて、弁護する人がいるような。しかしこの映画は、それが1人の心の中で起こっている出来事なんだと脚本を読んで理解しました」と述べる。「果たして自分自身をジャッジすることはできるのか? 客観的に自分を見ることはできるのか? それができないんだとしたら、何に頼ればいいのでしょう。彼の脚本から突き付けられました」と本作のテーマを投げかけ、会見を締めくくった。

「由宇子の天秤」は9月17日より東京・ユーロスペースほか全国で順次ロードショー。

(c)2020 映画工房春組 合同会社

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