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『ニッポンノワール』脚本家・武藤将吾の歴代作品との繋がりに驚愕 新たな作家性の開花となるか

リアルサウンド

19/12/8(日) 13:00

 『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系、以下『ニッポンノワール』)は日曜夜10時30分から放送されているサスペンスドラマだ。

 警視庁捜査一課の刑事・遊佐清春(賀来賢人)は目を覚ますと見知らぬ小屋におり、横には何者かに射殺された上司の碓氷薫(広末涼子)の遺体が横たわっていた。手に銃を持ち、ここ3カ月の記憶を失っていた清春は、薫を殺害した最重要容疑者として疑われる中、事件の捜査をはじめる。同時に薫の息子・克喜(田野井健)を預かることになった清春は、薫を殺した犯人を追ううちに正体不明のガスマスクの男と戦うことになる。

【写真】ガスマスクの男

 そして薫の殺害事件の背後に、薫たちが追っていた10億円強奪事件と半グレ集団・ベルムズ、そして「ニッポンノワール」と呼ばれる警察内部の地下組織が絡んでいることを知る。

 脚本は武藤将吾。今年(1~3月)同枠で放送され話題となった『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系、以下『3A』)を手掛けた、現在もっとも勢いのある脚本家だ。

 『3A』は、女子生徒の自殺の真相を探るためにクラスの生徒全員を人質にとり教室に立て籠もった教師を主人公にした異色の学園ドラマで、謎が謎を呼び、状況が二転三転していく超展開の連続によって視聴者を惹きつけた。

 この『ニッポンノワール』もサスペンス要素は健在だ。主人公の清春は「警視庁の癌」、「日本一の悪徳刑事」と呼ばれ警視庁では煙たがられているが、冷徹な性格と卓越した身体能力で事件に立ち向かう。

 他の刑事も奇人変人ぞろいで、毎週、ド派手なアクションが展開されるのだが、それ以上に面白いのが、謎が謎を呼ぶ陰謀論的なストーリー。そこに武藤将吾の過去作とのリンクが見られるのが、大変興味深い。

 そもそも、本作は放送前から『3A』と同じ世界観の物語だと明示されており、『3A』で起きた立て籠もり事件の半年後を舞台としている。劇中に登場する刑事や、架空の特撮ヒーロー・ガルムフェニックス、反グレ集団・ベルムズは『3A』にも登場しており、各話のゲストとして『3A』の高校生たちのその後が描かれている。つまり本作は世界観を共有する間接的な続編となっているのだ。

 この世界観の共有は、中核となるストーリーに深く絡んでいるというよりは、『3A』で魅力的だった世界観を再利用するという視聴者サービス以上のものではない。逆に言うと『ニッポンノワール』単体だけでも作品として成立しているので、作り手の“遊び”以上のものではないというのが現時点での印象だが、ちょっと驚いたのは、武藤が2010年にフジテレビ系で脚本を手掛けた刑事ドラマ『ジョーカー 許されざる捜査官』(以下、『ジョーカー』)の世界観まで、ストーリーとリンクさせてきたことだ。

 『ジョーカー』は、昼は温和で真面目な刑事・伊達一義(堺雅人)が仲間とともに夜になると法で裁けない悪人に怒りの鉄槌を下すという現代版『必殺仕事人』(テレビ朝日系)のような話だったが、犯人は殺さずに麻酔銃で眠らせた後、とある独房に監禁される。捕まった犯人たちは「神隠し」にあったと噂されていたのだが、その神隠しにあった男の一人が『ニッポンノワール』に登場する刑事・宮城遼一(細田善彦)だったことが、暗示されたのだ。

 これは『ジョーカー』第一話で演じた犯人役を、宮城を演じる細田善彦が演じていたことから起きたリンクなのだが、言うまでもなく『ジョーカー』はフジテレビ系、『ニッポンノワール』は日本テレビ系の制作である。

 宮城(だった犯人)は神隠しにあった後、ニッポンノワールによって人格修正プログラムを施され、別人として生きていた。宮城は、両親を事故で亡くしたと思い込んでいたが、過去の記憶があやふやで半年前の「立て籠もり事件」のことも忘れていた。それは記憶を操作されていたからで、劇中でさらっと語られた月に一度、必ず通っているという警察学校の健康診断が人体実験の場だと知った時は、見事な伏線回収に驚いた。

 こういった世界観をリンクさせる作り方は『機動戦士ガンダム』等のSFテイストのアニメでは定番の手法だが、ドラマでは難しい。堤幸彦監督の『ケイゾク』、『SPEC』、『SICK’S』(それぞれTBS系)の三部作が目立つぐらいだ。

 キャラクターの絵柄や時間軸をコントロールできるアニメに対し、実写の場合、生身の人間ゆえに歳を取る役者のスケジュール調整や、放送局の壁が大きく、メディア展開がとても難しい。前述した『SICK’S』にも『ケイゾク』の主人公・柴田淳が登場するが、柴田を演じた中谷美紀は出演しておらず、顔を隠すという苦肉の作がとられていた。

 今回のリンクは、おそらく非公式のお遊びだろうが、『3A』と『ニッポンノワール』はともかく『ジョーカー』まで絡ませるということは、武藤はこの自作の世界観を統合しサーガ化していくのだろうか? 

 ただの“遊び”なのか、新たな作家性の開花となるのか。今後の展開に注目である。

(成馬零一)

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