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赤坂アカ×横槍メンゴ『推しの子』から目が離せない! 斬新すぎるアイドル物語の行末は?

リアルサウンド

20/12/23(水) 10:00

一向に見えないアイにの本心

 AKB48などの登場に始まったアイドルブームが巻き起こり、早くも10年以上が経過しようとしている。アイドルファンの間でしか使われていなかった「推し」という専門用語も、現在は多くの人々が認知している状態だ。

 そんな中『推しの子』というタイトルを目にすれば、頭にクエスチョンマークが浮かぶのも無理はない。「推している子供?」「推している子=娘?」などと、色々なことを想像してしまうだろう。

 なんと本作は、主人公が文字通り“推し”の、“子”、つまり推していたアイドルの子供に転生するという斬新すぎるストーリー。今までにはなかった設定と、予想もつかぬ展開で話題を呼んでいる。今や週刊ヤングジャンプ、及びジャンプ+で人気沸騰中の作品だ。

 『クズの本懐』で漫画界に衝撃を走らせた横槍メンゴ、『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』で知名度が急上昇した赤坂アカがタッグを組み、2020年より連載がスタート。この二人が描く作品は個性が強く、切れ味の良さが魅力的。まさに個性×個性といった、ぶっとんだ内容に読者が次々とくぎ付けになっている。個性がぶつかっているものの決して反発し合うことはなく、彼らだからこそ織りなせる独自の世界観をうまく創り上げているのだ。

 主人公のゴローは田舎の産婦人科医でありながら、16歳のアイドル・星野アイの大ファン。かつて入院していた患者・さりなの影響がきっかけでアイのことを推すようになった。ひょんなことからアイがゴローの勤務する病院へ来院。16歳にして双子を身ごもっていたのである! 応援しているアイドルが患者として来たこと、未成年ながら妊娠していたことに驚きを隠せないが、ゴローは医者として、いちファンとして、彼女の出産を応援することに。

 だが不運なことに彼はアイの出産直前で何者かに殺害されてしまう。そして次に目が覚めた時には、彼女の子供として生まれ変わっていたのだった……。

 亡くなってすぐ生まれ変わるのもスゴイ話だが、ゴローはかつての記憶を持ったまま転生してしまったのである。「生まれ変わって推しの彼氏」や「生まれ変わって推しの許嫁」なら非常に喜ばしい話かもしれないが、子供という立場が非常に彼の心理を複雑にさせている。

 ゴロー本人は王道なファン気質であり、赤ん坊の姿でアイをアイドルとして見ている。決して「母親」という目線ではなく、物語が進んだ後も一人の人間として彼女を語るため、抱く気持ちの大きさがうかがえる。そんなアイ本人は全く掴みどころのない人間で、妊娠発覚の時点でも大きく焦っていないように見えた。16歳で妊娠、身寄りなし、売り出し中の芸能人となれば、普通は慌てふためくはずなのだが……。

 彼女本人はなかなか肝が据わっていて、あっさり出産&あっさり活動復帰。画面の中ではプロとしての顔を完璧なまでに演じている。無邪気で可愛らしく自信家、子供の世話もきちんとこなすが、アイにの本心は一向に見えない。

読者がアイに惹かれる理由

 父親も分からず、世間に内緒で子供を産み、それでも毎日を笑って過ごしている――。底抜けに明るいお馬鹿さんではなく、時折心の闇を見せながら生きる、人間臭いところがあるのだ。キラキラとして可愛いだけでなく、謎めいた要素がふんだんに含まれたキャラクターだからこそ彼女に惹かれてしまう。たくさんの影を纏うアイはよくあるヒロイン像、そしてアイドルとしてのイメージを良い意味で払拭してくれたに違いない。ミステリアスな星野アイをきっかけに始まった物語は、一体どこへ着地するのだろうか。全く予想できない展開に、時折混じるサスペンス要素。「アイドルが子供産んでキャッキャ奮闘する話でしょ?」と思っていると、度肝を抜かれるのでご注意を。

 『推しの子』は今までにない新感覚のストーリーであるため、多数の漫画を読んで飽きてしまった方にぜひお勧めしたい作品だ。今後もどのような動きを見せるのか、片時も目が離せない。

■たかなし亜妖
平成生まれのサブカル系ライター。ゲームシナリオライターとしての顔も持つ。得意技は飲み歩きと自炊。趣味はホラー映画鑑賞。

■書籍情報
『推しの子(2)』
赤坂アカ 著
横槍メンゴ 著 
定価:本体630円+税
出版社: 集英社
公式サイト

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