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ONE OK ROCK、親密な空気感とアグレッシブなパフォーマンス 『Eye of the Storm』ツアー最終公演を徹底レポート

リアルサウンド

20/2/10(月) 19:00

 ONE OK ROCKが2019年2月にリリースしたアルバム『Eye of the Storm』を携えた国内ツアー『ONE OK ROCK 2019-2020 “Eye of the Storm” JAPAN TOUR』の最終公演を1月30日、国立代々木競技場第一体育館にて行った(追加公演と振替公演は除く)。昨年9月22日、朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターからスタートしたこのツアーでは11月13日の名古屋公演が延期されるハプニングはあったものの、『Eye of the Storm』という意欲作を持って海外で揉まれた経験が良い形でライブに反映された、ONE OK ROCKの“今”と“これから”をダイレクトに伝える内容で好評を博してきた。そのツアーの集大成となるファイナル公演とあって、会場には血気盛んなオーディエンスが多数詰めかけ、バンドの熱演を今か今かと待ち続けていた。

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 定刻どおりに会場が暗転すると、ステージ前に下ろされた紗幕にはCGで描かれたTaka(Vo)の顔が映し出され、オープニングSEに合わせて動き続ける。時折挿入されるTakaのスクリームに呼応して、スクリーンのCGも同じように叫ぶなど、徐々に盛り上がりを見せる中、そのままオープニングナンバー「Eye of the Storm」へとなだれ込むと、紗幕の向こうにはONE OK ROCKの4人の姿が。紗幕のCGとメンバーの演奏する姿が重なり合うその“画”と、バンドが繰り出すエモーショナルかつモダンなサウンドが織りなす幻想的な世界に対し、早くもクライマックスと言わんばかりの大歓声が沸き起こる。

 ミディアムヘヴィの「Eye of the Storm」で独特の空気を作り上げると、Takaは「今日は俺たちとお前らの集大成にするぞ!」と叫び、疾走感あふれる「Take me to the top」やシンガロングで心をひとつにする「We are」など、近作からの人気ナンバーを立て続けに披露。前作『Ambitions』(2017年)から海外を意識したサウンドへと進化し始めたONE OK ROCKだが、ライブではそういったアルバムからの楽曲と大変革を遂げた『Eye of the Storm』収録曲、さらには『残響リファレンス』(2011年)や『人生×僕=』(2013年)といったファンにはおなじみの代表作からの楽曲がミックスされ、メンバーによるアグレッシブなパフォーマンスで表現されることにより1本芯の通ったものへと昇華されている事実に気づかされる。

 実は、『Eye of the Storm』を初めて聴いたときに一番の懸念事項だったのが、バンドの個性を確立させる上で重要な時期の楽曲をどう取り込んでいくか、新曲とどう並べていくかだった。が、そんな心配は無用だったようだ。もちろん、ここまで続けてきたワールドツアーの成果も大きいのだろうが、メンバーはもちろんのこと、客席にいる大勢のファンからもそんな心配は微塵も感じられない。どの曲もイントロが鳴り始めた途端に大歓声を上げ、シンガロングパートでは同じくらい大きな声で歌い続ける。バンドからのメッセージをしっかりと受け止め、どの曲も同じように愛してやまない。そんな幸せな結びつきがこの日のライブからもひしひしと伝わってきた。

 序盤のMCでは、メンバーがひとりずつ挨拶をしていく。興味深かったのが、TakaやRyota(Ba)がこの日のライブに対して緊張を覚えていたことだ。そんな2人に対して、クールな表情と言葉でコミュニケーションを図るToru(Gt)、ドラムというポジションで3人を後ろから優しく包み込むTomoya(Dr)からは今日1日を楽しもうという姿勢が伝わり、結果としてこのメンバー同士の関係性も良いバイブスを生み出すことへとつながったのではないかと確信している。

 このほか、MCでは観客をステージに上げてトークする場面も。海外でもGreen DayやFoo Fightersがオーディエンスとステージ上で一緒に演奏するなど、その場限りのサプライズを行うことも少なくないが、この日のONE OK ROCKは子どもから大人まで幅広い層とコミュニケーションを図った。特に若い世代にこういうプレゼントをすることが、次の世代のロックシーンへとつながっていくかもしれないと考えると、なんとも粋な計らいだと思わずにはいられない。こういった点でも、バンドとオーディエンスの幸せな関係性を感じずにはいられなかった。

 ライブ中盤では『Eye of the Storm』からの楽曲が多めに続くのだが、Toruの変幻自在なギタープレイ、バンドのボトムを的確に支えつつも時にヘビーさ、時に繊細さを表現するRyotaとTomoyaのリズム隊、そして最初から最後まで一切声量が落ちることがなかったTakaのボーカルによる“ナマ感”で表現されることにより、音源以上の躍動感が伝わってくる。と同時に、音源を聴く限りでは非常に高性能なポップスとしての主張が強かったものが、ライブでは非常にロックバンド然とした“鳴り方”、“響き方”に進化していることにも気づかされた。これも筆者にとってはうれしい誤算であり、改めてONE OK ROCKというロックバンドの凄みを感じさせられたトピックだった。

 「Be the light」「In the Stars」といったミディアム/スローナンバーでは会場が観客のスマホライトで明るく照らされ、幻想的な世界を作り上げていく。「Be the light」を歌う前に、Takaは「世界中でこれ以上悲しいことが起こらないように、ミュージシャンとして自分に何ができるのか。(その意味も込めて)今日はこの曲を置いていきます」と発言したが、そんなメッセージからも彼らが音楽と真摯に向き合っていることが感じ取れたはずだ。また、「In the Stars」ではTomoyaがピアノを、ToruとRyotaがアコギを手に楽曲の魅力を最大限に引き出す姿も印象に残り、本当にONE OK ROCKの4人は骨の髄まで“表現者”なんだなと思わずにはいられない瞬間だった。

 各プレイヤーの技量が余すところなくフィーチャーされたインストセッションを経て、「Push Back」からライブ後半戦に突入。「キミシダイ列車」「じぶんROCK」と懐かしい楽曲で会場の熱量をヒートアップさせると、「Giants」でのシンガロングで再び会場がひとつに収束していく。さらに「The Beginning」や「Mighty Long Fall」といったライブの盛り上げに欠かせない代表曲が連発されると、最後はスタジアムロック的な壮大さを伴う「Wasted Nights」でライブ本編を締めくくった。

 アンコールでは新たなアンセムのひとつ「Stand Out Fit In」で会場の一体感をさらに高め、Takaの「これからもONE OK ROCKを諦めません!」という宣言とともに繰り出された「完全感覚Dreamer」でクライマックスを迎えた。バンドが現在の4人編成になって最初に発表されたこの曲でライブを終えると、Takaを始めメンバーはその場に崩れ落ちる。まさに満身創痍という言葉がぴったりなツアーファイナルを経て、“ロックバンド・ONE OK ROCK”はこの先も国内や海外でライブを続け、新たな作品を制作していくことになる。バンドの第2章の幕開けを飾った意欲作『Eye of the Storm』を経て、彼らが次にどんな道を歩んでいくのか、早くも期待が膨らむばかりだ。(西廣智一)

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