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ハニーランド 永遠の谷

20/6/23(火)

NHK BS1スペシャル「ウイルスVS人類~未知なる敵と闘うために~」で国立環境研究所の五箇公一さんが、「クライシスを繰り返さないためには、自然共生という極端なライフスタイルの変換を考えなければいけない。本当に我々は手を出してはいけないところまで自然に対して侵食を果たしてしまったがために、こういった問題が起きている。このままいくと本当に人間社会はもう崩壊しか筋道がなくなってしまう。それくらい深刻に受け止めなきゃいけないっていうことを、今回のコロナウイルス問題が教えてくれている」という意味の発言をしていた。 断片的な引用なので正確には伝わらないかもしれないが、五箇氏の言葉に大きく首肯できたのは、リューボ・ステファノフ&タマラ・コテフスカ監督作品『ハニーランド 永遠の谷』を観た後だからだ。 ギリシャの北に位置する北マケドニアで作られた本ドキュメンタリーは、本年度アカデミー賞において、ドキュメンタリー映画賞部門だけでなく、国際映画賞(旧・外国語映画賞)部門にも『パラサイト 半地下の家族』などと並びノミネートされるという、アカデミー賞史上初めての快挙をなしとげたことで知られている。 北マケドニアの首都スコピエから20キロほど離れた、電気も水道もない渓谷が舞台。寝たきりの老母と暮らす“ヨーロッパ最後”の自然養蜂家の女性ハティツェは、収穫の「半分は自分に、半分は蜂に」を信条に養蜂を続けている。野菜や果実の実りに重要な役割を果たす蜂たちの生態を壊さぬように、自然界のバランスを保つことを大切に考えているからだ。しかし、彼女の平和な生活は、エンジン音とともに7人の子供と牛たちを引き連れてきた一家の襲来で激変する。 前述の五箇氏の言う「自然共生が侵食されていく現実」と本作が訴えているテーマが、偶然の一致とは思えない。洋の東西を問わず、現在はクライシスの只中にあるということ。 本作がアカデミー賞以外でも2019年のサンダンス映画祭でグランプリを含む最多3冠、全米映画批評家協会賞やニューヨーク映画批評家協会賞でも最優秀ノンフィクション賞を受賞するなど、各国の映画祭などで30以上の受賞を重ねているのは、その証左ではないだろうか。 監督を務めたタマラ・コテフスカとリューボ・ステファノフは、3年の歳月と400時間以上の撮影から自然の存在の崇高さと美しさに満ちた希望の物語を完成させた。

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