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アナウンサー・弘中綾香が語る、“純度100パーセント”の本音 「多様性を人生のポリシーにしている」

リアルサウンド

21/2/16(火) 10:00

    テレビ朝日の弘中綾香アナウンサーが2月12日に初のフォトエッセイ『弘中綾香の純度100%』を発売した。雑誌『Hanako』の公式ウェブメディア『Hanako.tokyo』で連載中のエッセイのほか、作家の林真理子、お笑いタレント・オードリーの若林正恭、テレビプロデューサーの加地倫三の3名との対談や、彼女がひそかに憧れていたアナウンサー以外の職業になりきる「アナウンサー以外の弘中綾香29歳」のコーナーなど書籍オリジナル企画も加えた、盛り沢山の内容となっている。

 発売日は弘中綾香の30歳の誕生日。ひたむきに頑張ってきた20代を振り返りながら、新しく始まろうとする30代を見据えて、仕事や恋愛、人生を語った本著書を軸に、彼女の心のうちを探る。(とり)

“純度100パーセント”な言葉

――今回出版されるエッセイ本『純度100%』では、『Hanako.tokyo』で連載されていたエッセイのほかに、対談や憧れの職業になりきるページがありますが、この構成は弘中さん自身がお考えになったのでしょうか。

弘中:連載を一冊の本にまとめませんかという提案をしたのですが、30歳の誕生日に本を出すのが夢だったので、編集部のみなさんと相談しながら、構成はほぼ自分で考えました。まず、30歳の誕生日に発売するので、30歳までの私について綴ったパートと、30歳からの私について考えるパートの2つを軸にしようと。そこに、人生の先輩方と対談するページと今までの人生と違った道を歩んでいたらどんな仕事をしていただろう?という妄想をして憧れの職業を語るページを設けました。

――30歳の誕生日で本を出す夢はいつ頃から?

弘中:連載を始めさせていただいた当初は全く考えていなかったんですが、連載を続けていくうちに書くことに自信がついてきたので、「ある程度本数が溜まったら、書籍化とかできますかね?」と(笑)。自分の名前で本を出すことができ、夢が一つ叶いました。

――タイトルの『純度100%』とは?

弘中:初回で書いた「所信表明」というエッセイの文章中に“純度100パーセント”と書いていて、編集部の方が気に入って、タイトルにつけてくださいました。エッセイにも書きましたが、全て私が書いている文章なので、嘘偽りのない“純度100パーセント”な内容になっています。

――やはり、連載を始めるまでは、世間が抱くイメージと本来の自分にギャップを感じていたんでしょうか。

弘中:そうですね。アナウンサーとしてテレビ局の看板を背負って仕事している以上、発言には社員としての責任が伴います。仮にゴシップやガセネタが流れても、簡単には反論できない場合もあって。一方的にイメージが作り上げられていくなか、当時はSNSもやっていなかったので、自分の思いをストレートに発言する手段がないことに不甲斐なさを感じるようになっていました。私はもともと書くことが好きなので、今まで見せていなかったような自分の人となりを知ってもらうために、もっとオープンに文章を書きたいと思うようになりました。

――加地さんとの対談で、「好きなアナウンサー1位」の肩書きがなくても、本質で見てくれる人が大事だというお話をされてましたね。30歳を迎えるタイミングで今まで綴ってきたエッセイを一冊にまとめられたことは、本質を見てもらうきっかけになるんじゃないでしょうか。

弘中:連載は2019年の春から書かせていただいてますが、まさに私が注目され始めたのが2019年頃で。だんだんお仕事が忙しくなってきて、ゆっくり気持ちを整理する時間もなかったので、等身大の自分でいられる心の拠り所として連載を持たせていただけたことは、とてもありがたいことでした。連載を続けられた自負もありますし、きっと誰かは私のことを本質で理解してくれてるだろうと思います。私の勝手な妄想かもしれないですけど(笑)。

――テレビだと、場を盛り上げなければならない立場上、思うように言葉を伝えられないこともありそうですよね。

弘中:自分が意図しない方向に編集されてしまうことがあるので、コントロールは難しいですね。でも文章だと前後がはっきり繋がった状態で自分の言葉を発信できますし、テレビだと一言だけ切り取られるのが、文章だと約1200字で掲載されるので、言いたいことが言える安心感はありますね。

犬が苦手な人もいる

――連載で書くテーマは毎回どのように決まっていったんですか?

弘中:普通に生活するなかで、ふと疑問に思ったことや、友達との会話で気になったことをメモしているので、そこから書くことが多かったです。テレワーク中は人と会う時間が減りましたが、本を読んだり映画を見たり、インプットする時間が多かったので、そこで感じたことをテーマにすることもありました。基本的には日常で感じた些細なことを題材にしているので、ネタ切れに困ることもなく、コンスタントに書けましたね。

――読みやすくまとめられていながらも、弘中さんが話している声が自然と聞こえてくる文章だと感じました。エッセイを書く際に意識されたことはありますか?

弘中:構成も何も考えずに書いてましたね。あまり考えすぎると、うまい言い回しやかっこいい慣用句を使って書きたくなってしまうので(笑)。速いときは1〜2時間でスピーディーに書き上げてました。

――連載を始める前、Hanako編集部の方に今まで書き溜めていた文章をお見せしたとエッセイに書かれていましたが、どんな内容の文章だったんでしょうか?

弘中:「〇〇が嫌いだ」シリーズです。連載でも何度か書きましたが、「犬が嫌いだ」みたいなネガティブな内容ですね。なぜネガティブなことを題材に書いていたかと言うと、負の感情でモヤモヤしたくなかったから。悲しいことやイライラすることがあっても、あまり人に相談するタイプではないので、まとめて言葉に書き出すと気持ちが楽になるんですよね。でも、あまりにネガティブな内容だったので、編集部の方からは「好きなもの」シリーズで書きませんか?と提案していただきました(笑)。そこからは、好きなものについても書くようになりましたよ。

――誰かに見せるつもりもなく書き溜めたネガティブな文章って、人に見せるのに勇気がいりませんか?

弘中:私の書いた文章が読み物として成立するのかどうかを編集部の方に判断してもらいたかったので、大丈夫かな?という不安はありましたが、ネガティブな感情を出すことに対する不安や心配は特になかったです。もちろん、いろいろ思われるでしょうけど、私は多様性を人生のポリシーにしているので。「犬が嫌いだ」って言うと「それは人じゃないよ」って言われることがあるんですけど、「犬=かわいい」ってみんなが思えるわけじゃないんですよ。エッセイを通して主義主張をしたいわけではないですが、いろんな人がいるんだってことは伝えたかったので、エッセイで発信できてよかったです。

30代、期待の変化


――対談に登場された林真理子さん、若林正恭さん、加地倫三さん。この3名はそれぞれ、弘中さんにとってどのような存在でしょうか。

弘中:まず、私はもともと夢も希望もなく生きてきた人間なんです(笑)。ですが、27歳ごろから「30代になったらどうしたいですか?」と質問される機会が多くて、考えるんですけど自分では全く見えなくて。30代を目前にして迷いのなかにいたので、人生の先輩であり憧れの存在である人たちから、私の30代からの生き方を指南していただこうと思って、このお三方にオファーさせていただきました。

 林さんは、私の憧れの女性像なんです。仕事をこなして、好きなお洋服を買って、好きなもの食べて、お友達もたくさんいて……、ずっと楽しそうだなって。小さい頃に林さんのエッセイを読んで、こんな大人になりたいって強く思ったので、ぜひお話ししてみたいと思いました。

 若林さんは普段からお仕事でご一緒させていただいてますが、改まってお話しする機会が今までなかったので、今回対談の場を設けさせていただきました。若林さんは、私の仕事ぶりを近くで見てくださってる方ですし、芸能界の第一線でずっと活躍されてる方なので、これからのお仕事についてお話ししました。

 加地さんは私の会社の先輩で、私が受けたアナウンサー試験のカメラテストで面接官をされていた方なんですが、私がテレビ朝日に入社できたのは加地さんが絶賛してくれたおかげだという噂がありまして……。その真相を聞きたいと思ったのと、まだ何者でもなかった就活生の私を選んだ理由や、今の私の現状をどう思うのかについて聞いてみたくて、きていただきました。

――林さんは今回初めてお会いになったんですよね。子どもの頃からの憧れの方に会ってみて、どうでしたか?

弘中:予想通り、とてもエネルギッシュな方で、たくさん元気をもらいました。林さんとは仕事の話に加え、恋愛、結婚の話もさせていただきましたが、いろいろ迷ってる私に対して「30代がいちばん楽しかったよ。大丈夫だよ」って言ってくださって。私は、いわゆる“出る杭は打たれる”とか、みんなに合わせなければいけないみたいな風潮は、もういらないんじゃないかって思っていて、その考え方は林さんの影響を受けているんですね。実際に林さんがそのようにエッセイに書かれていたわけではないですが、「自分のやりたいことは貪欲に挑戦していけ!」という考え方を私に教えてくださった方なので、まさに私が抱いていた印象通りの方でした。

――それこそ「アナウンサーらしくない」と言われることもあったかと思いますが、現在、アナウンサーの枠を超えてさまざまなお仕事をしてますよね。今振り返ってみて、アナウンサーという入り口を通ったことに、何か意味があると感じますか?

弘中:入り口かぁ……。どうなんでしょうね。私は滑舌がいい方ではないですし、声も高いですし、正直アナウンサー向きではないと思います。もともと就職活動のときも「名の知れた会社に入れたらいいや」程度の気持ちで受けて、はじめに内定をもらったから入社したというどうしようもない学生でしたし。入社してからがむしゃらに目の前の仕事に取り組んで、気付いたらここにいたという感じです。私にとっては全てがプラスになっていると思いますが、アナウンサーに向いてたってことなのかな……? どうなんだろう(笑)。


――ですが、入社してすぐにミュージックステーションのサブMCに抜擢されました。エッセイのなかでは、ミュージックステーションのプロデューサーに「お前には期待していない」と言われた話も書かれていましたが。

弘中:プロデューサーの言葉は鮮明に覚えてますね。まだ入社して間もない頃で、30分くらいかけて「よろしくお願いします。頑張ります」といったメールを送ったのに、たった2分で返信がきて「お前には期待してないから、大丈夫だよ」って。エッセイで詳しく書いているので、ぜひ読んでいただきたいですが、本当に驚きましたよ。

――でも「期待されてないこと」が逆にありがたかったと(笑)。もうすぐ入社して9年目になりますが、現在寄せられる「期待」についてはどう思いますか?

弘中:「期待してない」というのは、「何もできないことを承知のうえでサブMCに選んでるから、これから成長してくれればいいんだよ」という意味だったんですが、当時まだ新人だった私はその言葉の意味を知って肩の荷が降りたんです。ミュージックステーションを卒業するときも「この仕事をピークにせず、次の仕事に繋げていってください」と言われましたし、アナウンサーとして大事なことが学べる場所だったと思います。逆に今は、「期待してるよ」って言われることが多くなりました。あの頃と違ってキャリアも積んでますし、期待されないのはマズいとも思いつつ、あまり真に受けすぎないようにはしています。

 ですが、アナウンサーって、制作側の人たちから選ばれないと何も始まらない仕事なんですよね。これはタレントさんも同じだと思いますが、選ばれたからには選んでくれた方の思いを裏切らないように仕事しなければと考えています。これは入社した当初から今までずっと一貫して変わらない意識ですね。

――では、30代はどうしていきたいですか?

弘中:正直、30代を迎えることが少し不安だったんですが、林さん、若林さん、加地さんとの対談を通して、楽しみなことも増えてきました。仕事面では責任も増えてくる分、今まで頑張ってきたことを糧に、もっとやりたいことができるステージに入っていくんじゃないかって思っています。これからがスタートだって気持ちで、前向きに頑張りたいと思います。

――最後に、読者の方にエッセイ本の見所をご紹介お願いします。

弘中:想像以上に分厚くて大きな本に仕上がりました。その分、中身がいっぱい詰まっていて、お値段以上の読み応えがあると思います。見ても楽しい、読んでも楽しい内容になっていますので、損はさせないはずです!

■書籍情報
『弘中綾香の純度100%』
弘中綾香 著
定価:1,980円(税込)
出版社:マガジンハウス
公式サイト

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