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緑黄色社会、アルバム『SINGALONG』収録曲から放たれるエネルギー 繰り返し聴きたくなる強みを分析

リアルサウンド

20/4/25(土) 12:00

 緑黄色社会――ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードという構成の4人組のバンド。ポップスとロックの境目を行き来するサウンドの自由度と、長屋晴子(Vo/Gt)の圧倒的なボーカル力が魅力だ。彼らがメジャー初となるフルアルバム『SINGALONG』をリリースした(ちなみに愛称は“リョクシャカ”)。

 2017年1月にリリースされた1stミニアルバム『Nice To Meet You??』以降、次々と作品を世に送り出してきたリョクシャカ。約3年の間に、ミニアルバム3作、アルバム1作、EP1作、シングル3作(デジタル配信シングルを含む)と、かなりハイペースである。しかも、作品を追うごとに、楽曲のクオリティがアップしている。2013年に『閃光ライオット』で準優勝を獲得して以降、曲作りとライブを通して、しっかりバンドや自分たちの音楽と向き合って来たことが、この3年で結実し、本作『SINGALONG』で、一気に芽吹いた印象だ。その様は、例えるなら、ジャックと豆の木の如く。ぐんぐん真っ直ぐ伸びて、あっという間に雲を突き抜けていくような勢いがある。

 さて、おさらいはこれくらいにして。最新アルバム『SINGALONG』について触れていこう。

 フェードインする無機質なブレイクビーツの響きから、水面に落ちた水滴の様に、繊細なコーラスワークが広がっていく。包容力あるキャッチーなフレーズを〈ナナナ~〉で繰り返す。ライブでの“シンガロング”に直結するようなフレーズだが、クワイアを思わせるメロディとアレンジが面白い。リョクシャカの思う“シンガロング”が、他のバンドとは少しニュアンスの違う“シンガロング”であることが、明確に伝わってくる部分だろう。そして最後は、混沌とした渦を思わせるサウンドで終わるーーこれが、本作のオープニングを飾るオーバーチュア「SINGALONG」だ。

「SINGALONG」

 1分20秒の短い時間の中で、じつにドラマチックなストーリーを描き出している。この最初の1曲からもわかるように、サウンド面、ルーツ面だけに注目すると、リョクシャカの曲は、1曲の中でも音楽的な情報量がとても多い。ここから、メンバーのルーツや個性が異なることが推測できる。

 さらに彼らは、メンバー4人全員が作曲を手掛けている。ゆえに、曲調のバリエーションも多彩。だが、特筆すべきは他にある。各作曲者が同じ方向を向いているということだ。メロディのわかりやすさ、サビの開放感、さらにメランコリックになってもマイナーにならない絶妙なコード進行などに、徹底したこだわりが伺えるのが、その証拠と言えるだろう。前述した情報量の多さを感じさせないサウンドメイクも、おそらく同様。メンバー同士がお互いを信頼し合い、バンドの方向性について、しっかりと共有しているからこそ成り立っている楽曲ばかりなのだと思う。

 そして、この多彩な楽曲群をがっちりまとめているのが、長屋晴子のボーカリストとしての存在感である。1曲1曲、じつに、生き生きとした歌声を響かせている。クリアな声質を持っていながら、高音でもキンキンしないのが最大の魅力だ。キーンと抜けるようなハイトーンを苦手とする音楽リスナーは、いつでも一定数、存在する。そこが無い長屋の歌は、声質そのものがマジョリティに刺さるものであり、このバンドの普遍性とスケール感を担っている。

 ……と、長屋の歌について持論を展開してみたが、エビデンスも必要ですよね。というわけで、本作の中から見えて来る長屋というボーカリストのすごさを具体的に書き出してみたい。

 ストレートな8ビートとシンプルな譜割りが特徴のポップチューン「Shout Baby」での伸びやかなロングトーン。ホーンセクションを取り入れたゴージャスなアレンジが楽しい「Mela!」では、滑舌の良さで楽曲の跳ねるようなリズムに華を添えている。後半、中低音で一瞬倍音になるところも、たまらない。「Brand New World」は、ギターの音色やリズムのアプローチ、さらにケルティックな匂いがするアレンジに“ちょっとU2みたい(ニヤリ)”と思わせる1曲だが、Aメロの母音のニュアンスや、ファルセットの使い方に表現力を感じる。ブラックミュージックやAORのムードが漂うミディアムバラード「一歩」で聴かせるのは、音域の広さとピッチの安定感。と、安心して聴いていたら、後半、発声を変えてちょっと違う声質で聴かせてみたりと、ボーカリストとしての挑戦も見せている。

緑黄色社会 『Shout Baby』Music Video(TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』4期「文化祭編」EDテーマ / MY HERO ACADEMIA ENDING)
緑黄色社会 『Mela!』Music Video / Ryokuoushoku Shakai – Mela!
「Brand New World」
「一歩」

 アコギ1本と歌から始まるバラード「冬の朝」では、マジョリティを秘めた声質の本領発揮。丁寧に紡ぐ中高音から高音の心地良さ(ファルセット含む)が素晴らしい。声量を上げながらも、声を張る一歩手前の状態でスッと引くようなテクニックで、この曲の繊細さや優しさ、力強さを表現している。個人的には、アップチューンのバンドアンサンブルに音楽の楽しさを見出しがちなのだが、このバラードは繰り返し聴いてしまった。長屋の歌声がそうさせたのだろう。シンプルに聴いていて心地良い、気持ちがジワッと上向きになる歌声だった。

「冬の朝」

 この“繰り返し聴こうと思わせる”ところが、緑黄色社会の強さだ。曲のバリエーション、それを表現出来るスキルなど、個々の匠技も、飽きさせない理由のひとつではあると思うが、それ以上に、楽曲そのものから放たれるエネルギーに引っ張られてしまった……というのが正直なところである。

 言うなれば、アルバム『SINGALONG』は、緑黄色社会というエネルギーそのもの、である。

■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム

■リリース情報
アルバム『SINGALONG』
2020年4月22日 (水)配信/DL発売
※CDリリースは延期
特設サイト
iTuensプリオーダー(3月29日0時~)
【初回生産限定盤】 [CD+Blu-ray]
¥4,091+税
リョクシャカ詰め合わせBOX仕様
<CD収録曲>
01. SINGALONG
02. sabotage
03. Mela!
04. 想い人
05. inori
06. Shout Baby
07. スカーレット
08. 一歩
09. 愛のかたち
10. 幸せ
11. Brand New World
12. あのころ見た光
13. 冬の朝

<Blu-ray収録内容>
「奏でた音の行方 vol.2 – 2019.11.10 -」
またね
逆転
sabotage
Alice
真夜中ドライブ
想い人
「Music Video」
あのころ見た光
幸せ
想い人
sabotage
Shout Baby

[付属物]
収録曲歌詞グラフィックカード
メンバーによる楽曲解説インタビュー付Photobook

【通常盤】 [CD]
¥3,000+税
<CD収録曲>
01. SINGALONG
02. sabotage
03. Mela!
04. 想い人
05. inori
06. Shout Baby
07. スカーレット
08. 一歩
09. 愛のかたち
10. 幸せ
11. Brand New World
12. あのころ見た光
13. 冬の朝

[付属物] *初回仕様のみ
小林壱誓画伯によるメンバーイラストステッカー

■関連リンク
緑黄色社会 オフィシャルホームページ
緑黄色社会 公式Twitterアカウント
緑黄色社会 公式Instagramアカウント
緑黄色社会 公式LINEアカウント:@ryokushaka

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