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欅坂46 2期生 森田ひかる、センター抜擢の意義とは? パフォーマンスから見えた新たな道筋

リアルサウンド

20/1/8(水) 7:00

 2020年の動向にも注目が集まる欅坂46。『第70回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)での「不協和音」の興奮冷めやらぬなか、ほどなくして出演した『CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ 2019⇒2020』(TBS系)での「黒い羊」のパフォーマンスも大きな話題となった。センターに立ったのは2期生の森田ひかる。絶対的センターの平手友梨奈に代わり、森田はその大役を見事に務め上げたのだ。難解な楽曲の多い欅坂46のレパートリーの中でも「黒い羊」は特に表現の難しい一曲。そんな一筋縄ではいかない楽曲のセンターに彼女が抜擢された理由や意義について考えてみたい。

 森田がセンターに立つのには、まず視覚的な説得力がある。身長が149.8cmとグループで最も低く、高身長揃いの欅坂46の中だと逆に目立つ。だが、それによりフォーメーションを組んだ際のバランスが良いのだ。もちろん身長の高いメンバーがセンターでも見栄えは良いが、その場合、グループ全体をセンターが”率いる”ような力強いイメージを見る者に与える。対して森田がセンターに立つと、彼女と彼女を支えるメンバーたちの物語、あるいは「主人公」対「ひとりの力ではどうすることもできない大きな社会」といったような対立構図が生まれる。それが「黒い羊」の歌詞の世界観とマッチするのだ。たとえば、同曲には“いじめ”や“排除”といったキーワードを連想させるような、メンバーが主人公役を突き飛ばす振り付けが印象的に盛り込まれているが、彼女のような小柄なメンバーが主人公役を演じることで、その振りの“残酷さ”がより際立つ。突き飛ばす相手の方が常に背が高く、威圧的に映るからだ。

 つまり、「黒い羊」の歌詞における悪目立ちしてしまう主人公の孤独や、白い羊たちの残酷性を表現するためにも、身長の低い森田をセンターに据えるのは非常に的確な人選と言えるだろう。もともとのセンターである平手は決して体の小さなタイプではないが、普段媒体で見せる表情や集合写真への写り方などで作られたパブリックイメージを利用して説得力を生んでいる。森田の場合、そうしたイメージはまだ持たれていないが、誰が見ても分かる小柄な身体であることが強い。集団に転げ回される彼女を見れば、視聴者は否が応でも心を痛めるだろう。また、ソロパートにおける低い音程での陰鬱な雰囲気や、乱れた髪の奥から覗かせるくっきりとした瞳が訴える強い眼差しは特筆すべきものがあった。視覚的な説得力だけでなく、楽曲に合わせた表現力も兼ね揃えているのだ。

 森田がグループ加入前にリスペクトしていたのは元メンバーの今泉佑唯だという。かねてより今泉は「小さな身体でも活躍できる姿を見せたい」と発言していた。そういう意味では、森田はまさに”今泉イズム”を継承するメンバーでもある。先日放送された『坂道テレビ〜乃木と欅と日向〜』(NHK総合)で「身長あと5センチくらい伸びろ!」と叫んでいた森田だが、むしろそれを個性として捉え、表現へと結び付ける姿は多くの共感を呼ぶだろう。

 さて、今回の森田の抜擢が面白いのはその人選だけではない。それは、これまでの欅坂46が見せてきたいわゆる“代理センター”的な意味合いを感じさせない点だ。もちろん表面的な意味では”代理”で間違いないのだが、センター不在の窮地を乗り切る物語性というよりはむしろ「こういう表現の仕方もアリでは」という、グループの未来への建設的な提案として受け取れた。強烈なインパクトを残した「不協和音」の直後で、さらに年が明けてすぐの放送だったというのもあり、普段とは違った試験的な「黒い羊」が、楽曲の世界観を伝える手段としての新しい道筋を切り拓いたように思えたのだ。

 こうなると他のメンバーでも期待したくなるのが人というものだ。今回抜擢されたのは森田ひかるだが、メンバーの数だけ正解があっていい。特に昨年は加入したばかりの2期生が急成長を遂げ、グループを盛り上げてきた。個性も見え始め、表現力も増している。新戦力を迎えてひと回り大きくなった欅坂46。グループを取り巻く状況や環境に応じて演出を変化させられる彼女たちなだけに、「次はどう表現するのか」と常に期待を抱けるようなグループであり続けて欲しい。そうなったときこそ、今回彼女をセンターに抜擢した意義があったと言えるだろう。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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