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朝ドラ『エール』で異彩を放つ野田洋次郎 作曲家・木枯役はまさに適役?

リアルサウンド

20/5/16(土) 6:00

 曲作りが上手くいかず、小山田(志村けん)と出会ったことでますますプレッシャーを募らせ身体を壊してしまう裕一(窪田正孝)。一方、音(二階堂ふみ)は音楽学校の記念公演「椿姫」の主役選考会に挑戦するなど、精力的に歌手への道を歩んでいた。『エール』(NHK総合)第7週は「夢の新婚生活」というタイトルながら、初めての夫婦喧嘩や作曲に苦悩する裕一の姿などシビアな様子が描かれる。

 今週はレコード会社のディレクター・廿日市(古田新太)や、裕一の同期にして良きライバルでもある木枯(野田洋次郎)の存在、久しぶりに再会する久志(山崎育三郎)、裕一を推薦した小山田との対面など、新たな登場人物にも注目が集まった。その中でも特に異彩を放つのは木枯を演じる野田洋次郎の存在だろう。

【写真】窪田正孝の相談に乗る、野田洋次郎

 野田はロックバンド・RADWIMPSのボーカル&ギターを担当、ミュージシャンとしてキャリアをスタートさせた。その類い稀なる音楽の才能と、作詞のセンスで瞬く間にファンを獲得。そして近年ではミュージシャンだけでなく役者としても活躍を見せている。野田は映画『トイレのピエタ』(2015年)で役者デビューにして映画初主演、『100万円の女たち』(テレビ東京系)ではテレビドラマ初出演かつ初主演を飾り、その後も映画『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年)などに出演した。

 『エール』の作中では大衆向けの流行歌を作る作曲家・木枯を演じるが、野田にとってはまさに適役と言っても過言ではないだろう。実際に作曲が得意でRADWIMPSでの楽曲作りを牽引する野田と、流行歌の作曲家として裕一よりも一足先にデビューする木枯には似ているところがある。さらに野田は、劇中で裕一に渡された歌詞を見てギターで即興でフレーズを作り「ちょいちょい ちょいちょい ちょいちょい愛してる」と弾き語りを披露するシーンもある。これは実際に野田が撮影中にコードをつけてその場で披露したもの(参考:『エール』野田洋次郎、「ちょいちょい愛してる」を披露 窪田正孝との共演に「頼もしい座長」)だと明かされており、野田の才能と木枯の才能がリンクした注目のシーンでもある。

 はじめこそ、裕一と同じように曲を採用されなかった木枯だが、作曲家としては先にレコード発売にこぎつけ、一歩先をゆくことに。西洋音楽が得意な裕一と対照的に、木枯は大衆向けの音楽作りが得意。さらに、自身の楽曲がA面でないことに不満を漏らすなど、自分の音楽を届けたいという熱意も人一倍強い様子を見せる。“流行歌を作る”ということに関して、なかなか照準を合わせることができず苦戦する裕一とは対照的な存在だ。さらに、裕一に対して「大衆が求める歌を作るには、まず大衆を知らなきゃ始まらない」と、裕一とは馴染みの薄いカフェーに誘う。木枯がどのようにして大衆に求められる音楽を作っているかのバックグラウンドが窺えるこのシーン。木枯役のモデルと言われている古賀政男作詞・作曲の昭和流行歌「影を慕いて」を披露し、野田の美声と共に作品を盛り上げた。

 実際に音楽分野の第一線で活躍する野田が、作曲家として駆け出しの裕一の良きライバル役を演じることでより臨場感のあるシーンを作り出している。人気ロックバンドのボーカルとして知られている野田が演じるからこそ、木枯の中に存在する “脅威”の部分と“リスペクト”の部分のバランスが保たれるだろう。こうした演出もあり、『エール』はより人の心に届く“音楽”を描く作品となっている。

(Nana Numoto)

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