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『昭和元禄落語心中』失敗や悲しみが芸の肥やしに 2人の死が岡田将生に遺したもの

リアルサウンド

18/11/17(土) 6:00

 NHKドラマ10『昭和元禄落語心中』の第6話では、みよ吉(大政絢)と助六(山崎育三郎)の死の真相が明らかになった。

 菊比古(岡田将生)は、破門された助六を連れ戻すため、彼と娘である小夏のもとを訪れた。そして、助六の借金を返すために、3人での共同生活を始める。菊比古は、助六の落語界への復帰、そして八雲襲名のために「二人会」を開くことに。助六は、再び客の前で噺をすることとなった。

【写真】助六(山崎育三郎)の話す横顔

 大一番で助六の選んだ根多は「芝浜」。大金の入った財布を拾ったろくでなしの男に「あれは夢だよ」と嘘をつき、更生させる妻の人情話であるが、このような根多は本来、助六が得意とする噺ではない。子供が生まれてもなお、菊比古のことが忘れられないみよ吉を愛し、小夏と苦しい生活を続けてきた助六の噺は、実感と説得力が込められ、名演となった。

 一方、菊比古が来ていることを知ったみよ吉は再び、彼の懐へ擦り寄る。菊比古は、みよ吉と助六の人生を歪めてしまったことに責任感を覚えており、彼女の言葉に抗うことができなかった。「一緒に死んじゃおうか」と囁くみよ吉に対し、菊比古が何も言葉を返せずにいると、助六が現れた。

 「落語はやめて真っ当に働く。お前と小夏は俺の宝だ」。みよ吉を失うかもしれないという思いが、助六にとって一番大切なものを気づかせた。しかし現実は残酷で、窓辺にいたみよ吉と、助けようとした助六が転落してしまう。

 助六に落語をやってもらいたかった菊比古、みよ吉と幸せな家庭を作りたかった助六、菊比古と一緒にいたかったみよ吉。落語を中心に三者の思いが絡み合った結果、助六とみよ吉の死を招いてしまった。

 本作では、人生の失敗や暗い部分と同時に、それが芸の肥やしとなることも描かれている。先述の助六の「芝浜」然り、菊比古も家族に捨てられたことから落語の門を叩き、自分の居場所を探し続けてきた。その結果、“孤独な落語”という自分だけの落語を手に入れることができたのだ。この光と闇のコントラストを丁寧に描くことで、彼らの落語がより魅力的に映し出される。

 しかし、落語家としての目標であり親友でもあった助六を失うことは、菊比古にとって埋めきれない穴となった。菊比古は、助六にまで捨てられたと感じ、天涯孤独を決意する。そして、落語とともに心中することを誓った。ゆえに菊比古から八代目八雲となり、唯一無二の芸が完成されたのだ。

 次週から与太郎(竜星涼)編へと戻る本作。八雲は、助六の影を感じたからこそ与太郎を弟子にとった。心中を決めていた八雲だが、与太郎となら助六との果たせなかった約束をやり直せるのではないかと。八雲が与太郎との生活の中で、助六がいつも言っていた「客がいねえと落語はできねえ」という信念を思い出したとき、助六の死が“芸の肥やし”となっていくのだろう。

(馬場翔大)

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