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いま、最高の一本に出会える

『G線上のあなたと私』は傷を抱えた大人の群像劇 今後は“主婦”幸恵のナイスアシストに期待!?

リアルサウンド

19/11/5(火) 6:00

 人気漫画家・いくえみ綾のコミック原作の火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)。大人のバイオリン教室で出会った年齢も立場もバラバラな男女が紡ぐ恋と友情物語という、ここ最近の連続ドラマには珍しいテーマが描かれている。

 波瑠演じる主人公の小暮也映子・27歳は、寿退社直前に婚約破棄を言い渡され、仕事も結婚も白紙に。“リセット状態”のアラサー女性が主人公である点は『凪のお暇』(TBS系)に近いものを感じさせる。またその主人公が実家住まいで、仕事も恋も何も熱中できるものがない無気力状態であり、そんな中で年下男子との触れ合いで自分の本当にやりたいことを見つけていく姿は“はじこい”こと『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)を彷彿とさせる。

 ただ、本作が上述の作品含めこれまでの恋愛ドラマと一線を画しているのは、年齢も境遇も異なる、本来何の共通点も接点も持たぬはずの3人が主な登場人物である点、また彼らの出会いが「バイオリン」教室という趣味の場であった点だ。元恋人に裏切られて婚約破棄された也映子、兄の元婚約者でバイオリン教室の講師を務める眞於(桜井ユキ)に叶わぬ恋をしている大学生の理人(中川大志)、夫の浮気や姑の嫌味に日々耐える専業主婦の幸恵(松下由樹)という3人がたまたま同じバイオリン教室の体験レッスンの扉を叩くのである。

 大人になればなるほど交友関係も広がるようでいて実は固定されてしまうところが多く、近しいコミュニティにいる人としか出会いづらくなりがちだ。あるいは“仕事関係者”など、どこまでいっても多かれ少なかれ利害関係が生じる人間関係から逃れられることができなかったり。

 そんな中「趣味」という強制力を持たず、大枠の目指す方向は一緒ながらも目的も目標も各々で設定でき、取り組み方も自由である対象は、所属や肩書きなどとセットで“評価したりされたり”する関係性とは全く異なり、あくまで「個人」の自由意志で継続され更新される気楽さ、緩さを持つ。

 と同時に、強制力がなく個々の自由裁量に依るがゆえの脆さや一定の距離感を持ち合わせ、それが最初はそれぞれに悩みや問題を抱えた3人にはきっと心地良かったのだろう。ここではみな、「誰かの元婚約者」でも「誰かの妻で母」でも「誰かの元婚約者の弟」でもないのだ。

 「フィールドが違う」「よく知りもしない人」だからこそ、普段他の人には言えないことも気兼ねなく吐露してしまえる。いつまで続くかわからない関係であり、かつ続けなければならない拘束力を持たぬがゆえ、「好かれ続ける」必要も、期待に応え続ける必要もなく、失望されたって一向に構わないから。

 そんな3人の間に確かな絆が芽生え始めるのは、やはりみながみな、何かに傷ついているからだろう。その傷を癒すため、問題と向き合うため、行き詰まった現状からどうにか突破口を見出すために足掻いているという点では3人は「同志」であり、この出会いは必然とさえ思えてしまう。3人と言わず講師の眞於も癒えぬ傷を負った傷ついた大人だ。

 無気力だった也映子がバイオリンの発表会に向けて練習している時にだけ前進している感覚が得られると打ち明けたとき。自宅での練習に姑が乱入し「せっかくずっと楽しみにしていた練習だったのに、台無しにされて悔しい」と涙する幸恵を目の当たりにしたとき。眞於に告白するためにも発表会で無事演奏し切れるように猛特訓をする理人の切羽詰まるほどの一生懸命さや健気さに触れたとき。「自分のために」通い始めたはずのバイオリンが、「他のみんなのために」練習を頑張り、他の誰でもないこの3人で一緒に取り組むものに変わっていった瞬間だったのだろう。

 また彼らの人間関係に深みを持たせ、3人という一般的には難しいとされる端数の人間関係を成立させているキーパーソンとして幸恵の存在が挙げられる。「主婦」であり「母親」でもある、通常一旦恋愛の土俵からは降りており、色恋沙汰とは異なるところから物申せる貴重な役回りだ。幸恵がいなければこのバイオリン教室での関係は也映子と理人、眞於の三角関係に終わってしまいかねず、物語は全く異なる様相を呈していたことだろう。

 眞於に振られてしまった理人と也映子の関係性の変化や、とは言え理人の兄の存在を意識して気持ちに応えられなかったのであろう眞於の本心、「時間を無駄にします」という言葉に隠された真意も気になるところだ。

 またキーパーソンである幸恵の姑の介護問題が浮上、このままバイオリンを3人で続けられるのかなど今後も眞於を含む4人の関係性の変化と、それぞれが自分の傷口をどう克服していくのか、みんなの幸せを祈るような気持ちと、一方で恋の波乱の予感に期待する気持ちの双方を抱えながら見守りたい。(文=楳田 佳香)

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