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wacci「別の人の彼女になったよ」人気が「THE FIRST TAKE」で再燃 SNS時代の理想形ともいえるヒットの構図

リアルサウンド

20/6/30(火) 18:00

 2018年8月にリリースして以来、驚異のロングヒットとなっているwacciの「別の人の彼女になったよ」の新録版「別の人の彼女になったよ -From THE FIRST TAKE」の配信がスタートした。本作は高画質・高音質の一発撮りで収録したアーティストの演奏を楽しめるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」のコンテンツを音源化したもの。ボーカルの橋口洋平がアコースティックギター1本で弾き語りしたパフォーマンスを、生演奏ならではの緊張感もそのままにパッケージした作品となっている。今年1月の動画公開時には「やっぱり本家の歌がすごい」「胸がキュッとなる……」などと歌唱そのものへの絶賛が相次いだだけに、新バージョンも楽曲のさらなる広がりに一役買いそうだ。

wacci・橋口洋平(from THE FIRST TAKE)

 現在までにYouTubeで公開中のMVの再生回数は4000万回以上。サブスクリプションサービスでの総再生数も9000万回を突破するという大ヒットを記録しているwacciの「別の人の彼女になったよ」(通称“ベツカノ”)。配信限定シングル、さらにはノンタイアップながらじわじわと支持を広げ、まもなくリリースから2年を迎えようとする現在も、楽曲の勢いは増し続けている。その理由のひとつは何と言ってもSNSでの反響の大きさだろう。MVに寄せられたコメント数は1万5千件に迫っており、リスナーが相次いで自分自身の過去の恋愛エピソードを投稿。中でも、とある女子高生によるコメントがTwitterで「泣ける!」と話題を呼び、2万8千件ものRTが付くほど爆発的に拡散された。また、カバー動画も続々とアップされ、その数なんと全440本以上。お笑い芸人NON STYLEの井上裕介やYouTuberの粉ミルクら幅広い方面でカバーされ、大きな話題に。さらには俳優の工藤阿須賀や指原莉乃らがTV番組で紹介するたびに各種チャート上位に食い込む動きを見せている。ゲスの極み乙女の川谷絵音は、同曲を「“昔の男が忘れられない女”というよくあるテーマなのに、言葉選びが秀逸で、かつ分かりやすくつづっているため、若者に響く」と分析。若い世代の共感を呼ぶ楽曲であること、かつ彼らと親和性の高いSNSがその思いを表現する場として機能したことなどが決め手となったと思われる。

wacci 『別の人の彼女になったよ』Full Ver.

 「THE FIRST TAKE」で披露したバージョンではアコギの音色がヒリつくような切実さを醸し出し、歌詞の世界観を一層鮮やかにしていたこともあってか、楽曲の注目度も再燃。 いまだに1日あたり15〜20万再生が続いている状態で、カバー曲をアップするユーザーもふたたび増加中。また同曲は、7月29日に発売されるジェジュンのカバーアルバム『Love Covers II』にも収録されるという。「ベツカノ」フィーバーはまだまだ終わりそうにない。

wacci(橋口洋平) – 別の人の彼女になったよ / THE FIRST TAKE

 SNSをきっかけにヒットする楽曲は近年増加傾向にあるが、ここまで幅広い層に届き、しかも何度も繰り返しバズを生むとなると他になかなか例が浮かばない。聴き手の熱量をキープし続けられた要因のひとつが、各所でなされるさまざまな分析だろう。シンプルで心にしみるメロディに共感度の高い歌詞、さらには動画配信サイトの普及により誰もが気軽にカバーできる土壌など、本作を取り巻くヒットの構図はすでにいくつも言及されているとおりだ。それらは聴き手だけでなく、伝える側にとってもこの楽曲がいかに語り尽くせない魅力にあふれているかの証でもある。作詞作曲を手掛けた橋口自身も「別の人の彼女になったよ」について“誰かに教えたくなる曲”と語っているが、聴き手と伝え手が双方向に共有できる世界観があるというのは大きな強みなのではないだろうか。まさにこの時代だからこそヒットした楽曲と言える。

 そして、wacciは6月30日に音楽番組『PLAYLIST』(TBS系・毎月最終火曜 深夜1時58分)に出演して「別の人の彼女になったよ」を歌唱予定。再びSNSを賑わせることは間違いない。また、7月からは『wacci Streaming Live Tour 2020』と題して全6公演の配信ライブツアーも開催し、コロナ禍の新たなライブの形にもいち早く取り組むという。“アコースティック”や“ラブソング”など毎回テーマを変えて選曲するコンセプチュアルなライブとなるようだが、おそらく「別の人の彼女になったよ」もなんらかのかたちで披露されることとなるだろう。SNS時代に多くの人の心をつかんだ名曲は、こうしたさまざまな発信のかたちにフィットしながら、今後も広く長く聴き継がれていくはずだ。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

■配信情報
弾き語り音源
「別の人の彼女になったよ – From THE FIRST TAKE」
「足りない – From THE FIRST TAKE」

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