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『俺の話は長い』生田斗真はスヌーピーに通じる? 2019年大活躍な姿に感じる不思議な“円熟味”

リアルサウンド

19/12/14(土) 8:00

 この秋から年末にかけて毎週土曜の、いや、一週間で一番の楽しみだったドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ系)が終わってしまう。主人公、岸辺満31歳は6年にわたりニートで実家暮らし。今時珍しいほどのほのぼのとした家族の日常を描く温かさと、1時間のドラマ枠のなかで毎回30分で1話ずつ進むという設定のテンポのよさ。そして主演の生田斗真とその姉役・小池栄子の、まるで小劇場での抜群の会話劇を観せてもらっているかのような、コントのようなウィットと屁理屈に富んだ台詞の魅力と、それを囲む安田顕、清原果耶、原田美枝子の存在感も、完全に実写現代版サザエさんといった様相だったが、毎回最後にはホロリと涙するような人間味が隠されている。姉や周囲に散々「働け」と言われながら、それに屁理屈で対抗しながらもじつは懸命に自分の人生を考える30代の満の姿と、そこに毎回最後に「なぁ友よ 人生って最高だろう?」という歌い始めが印象的な関ジャニ∞による主題歌「友よ」がしみいり、笑いと人情味のある幸せな1時間を数週にわたり堪能させてもらってきた。

【写真】肉を頬張る生田斗真

 サザエさんの磯野家の如くこの先何年でも観ていたくなる愛すべき岸辺家の人々。満の姉の再婚相手である、安田顕演じる光司が「満くんて一緒にいて心地いい、コタツみたいだ」とコタツに入りながら話す場面では、この作品自体のコタツのようなぬくもりと抜け出せなさを感じたし、なんとなく満は漫画「PEANUTS」におけるスヌーピーのような存在なのだな、とも感じた。みんなが彼のもとになんだかんだと話にやってきて、言い得て妙なような、でもただの屁理屈なような、人生哲学のようなものを交わし合うさまが、ドラマの醍醐味でもあった。『俺の話は長い』は、ずっと新聞の4コマ漫画のように続いていってほしい、終わるなんてあまりに寂しい存在感を醸し出している。

 グループに所属しない異例のジャニーズとも言われる生田斗真だが、長きに渡り役者業を中心に活躍してきた本領が今作では存分に発揮されている。2019年から2020年にかけて上演中の劇団新☆感線による『偽義経冥界歌』でも主演を務めており、今年は大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)での前半戦でも天狗倶楽部・三島弥彦役で強烈な印象を残した生田。また、6月には新国立劇場での上村聡史演出による日本初演の古典ギリシア悲劇『オレステイア』でなんと4時間半、舞台上にほぼ出ずっぱりという役どころを主演で務め話題を呼んだ。そしてこの一年を締めくくるかのような、これまた台詞量の半端ない『俺の話は長い』での日本テレビ系列ドラマでの初主演である。個人的には、かつての土曜夜9時枠で放送されていた、TOKIOの松岡昌宏主演『LOVE&PEACE』(日本テレビ系)に出演していたまだ10代の頃の生田斗真の存在感を思い出しながら感慨深くもなった。

 と、このように2019年は2つの主演舞台、大河ドラマのインパクトある役、そして民放の主演ドラマと大活躍の生田だが、そのどれもに無理がなく、むしろ肩の力を抜いて新しい状況を楽しんでいる様子が感じられ、観ているこちらに頼もしさすら感じさせる。“円熟味”などという言葉を当てはめるのは正直まだこれだけの若さをもった存在には妥当ではないかもしれないが、芸歴だけでいえば20年以上。また、“歌手デビュー”こそしていないものの、ジャニーズJr.として先輩グループのバックで長年踊り、もちろん歌のスキルも持ち合わせる生田には、まだまだこれから演じることを楽しみ、新しいことにいくらでも挑戦できてしまう伸びしろ・余白のようなものが感じられ、こちらも今後にますます期待をしてしまう。現在ではグループも相当な数に増え、東西ジャニーズJr.の人気も爆発的に高まっているジャニーズ勢だが、振り返ってみれば20年前の第1期“ジャニーズJr.黄金期”といわれる時代より自身のペースで演じることと真摯に向き合い、ジャニーズの中でも自ら新しい道を開拓し続けてきた生田の姿は、ひとつの大きな後輩へのロールモデルともなっていくのではないのだろうか。

 年明けには笑福亭鶴瓶が吉田茂を演じるテレビ東京系単発ドラマにて白洲次郎役を演じることが発表されている生田。2月には『偽義経冥界歌』の東京公演もいよいよスタートする。『俺の話は長い』の満とは180度以上、なんなら1周半回って540度くらい方向性の異なる、驚くほどにかっこいい殺陣と歌と面白さで客席を魅了する源九郎義経役の生田を堪能できる。愛すべき岸辺家とのしばしのお別れを惜しみつつ、生田の次の姿にも期待したい。

(鈴木絵美里)

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