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『TENET』、ノーラン史上最高の出足で初登場1位 『ブラック・ウィドウ』は来年までお預け

リアルサウンド

20/9/24(木) 20:00

 先週末の動員ランキングは、クリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』が土日2日間で動員20万人、興収3億2700万円をあげて初登場1位を獲得した。初日の9月18日(金)から22日(火・祝)までの5日間の累計では動員46万8229人、興収7億5299万6550円。シルバーウィーク効果も大いに寄与しているので単純な比較はできないが、最終興収35億円の2010年公開『インセプション』の公開初週の記録(3日間の先行上映期間を含む6日間の累計で興収7億8000円)の勢いを超える、ノーラン作品史上最高のスタートダッシュとなった。

 『TENET テネット』の興行は、今後もIMAX上映館では盛況が続き、課題は通常上映のスクリーンとのギャップとなっていくだろう。しかし、本作に関しては、多少足を伸ばしてでもやはりIMAX上映館での鑑賞を推奨したい。幸か不幸か、多くのハリウッド大作が本国の判断で公開延期となったこともあって、11月20日公開の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』までの約2ヶ月間、どうしてもIMAXで観るべき、つまりは撮影でIMAXフィルムが使用された新作の公開スケジュールが空くことになる。『TENET テネット』のIMAX興行の好調が続く限り、それまではIMAXのスクリーンで観ることができるわけだ。

 「たかが映画を観るためにわざわざ遠くまで行けないよ」という人も、未だ劇場の営業再開の許可が下りていないロサンゼルスやニューヨークの観客に比べれば恵まれているかもしれない。現状、国内での移動制限はされていないため、同地区の観客の中には車で何百キロも離れた隣の州まで『TENET テネット』を観に行く観客も少なくないという。

 本コラムでは度々アメリカの映画を取り巻く状況についても触れているが、その理由は、ダイレクトに日本の興行界にも影響を与えているからだ。以前から噂となっていたが、本日(アメリカ時間の9月23日)、11月公開予定だったディズニー配給の『ブラック・ウィドウ』の公開が正式に2021年5日7日(北米)に再延期されることが発表された。当初は2020年5月公開予定だったので丸1年の公開延期、マーベル・シネマティック・ユニバース作品としては昨年7月(北米)公開の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』から実に1年10ヶ月もの空白が「映画では」生じることとなった。「映画では」というのは、その前日にディズニープラスで『ワンダヴィジョン』が年内に配信されることが発表されたから。マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ4は、映画館ではなく、自宅のテレビで幕を開けることとなった。

 ハリウッド大作の穴を自国の作品がある程度埋めている日本とは比べものにならないほど、アメリカの映画界の状況は深刻だ。『ワンダーウーマン1984』の公開再延期に続く今回の『ブラック・ウィドク』の公開再延期で、アメリカでも11月20日公開の『007/ノータイム・トゥ・ダイ』、そして同日公開の『ソウルフル・ワールド』(日本公開は12月11日予定)までブロックバスター作品がなくなった。現在、北米の映画館の興行収入は週に約1500万ドル。11月20日までの8週間で、仮にその間にロサンゼルスやニューヨークの映画館の営業が再開されたとしても、起爆剤となる新作がないため、多くて2億4000万ドルの興行収入しか見込めないという(参考:Black Widow Delayed as Disney Mostly Backs Out of 2020 | IndieWire)。これは、昨年の同時期の興行収入、15億ドルの6分の1以下の数字だ。

 映画ファンにとって一つだけ朗報と言えるのは、今のところディズニーが来年5月公開の『ブラック・ウィドウ』はもちろんのこと、ファミリー向けのアニメーション作品『ソウルフル・ワールド』もディズニープラスでの配信ではなく、映画館での公開を予定していることだ。『ムーラン』の結果次第では業態の軸足をディズニープラスに大きく移す可能性も報じられていただけに、まずは一安心といったところだろうか。それでも、今後数週間で何が起こるのか誰にもわからないのが「2020年」なわけだが。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『TENET テネット』
全国公開中
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス
製作総指揮:トーマス・ハイスリップ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
公式サイト:http://tenet-movie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/TENETJP

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