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ヒゲダン「HELLO」「Laughter」……止まらぬ快進撃 Official髭男dismが名曲を生み出し続けるシンプルな答え

リアルサウンド

20/7/24(金) 15:00

 Official髭男dismが新作EP『HELLO EP』を8月5日にリリースする。

(関連:ヒゲダンのサウンドを日常のBGMに Official髭男dism『Traveler』インスト版の楽しみ方と新たな発見

 今作は、4月より『めざましテレビ』(フジテレビ系)テーマソングとしてオンエア中の「HELLO」に加え、映画『コンフィデンスマンJP ブリンセス編』主題歌の「Laughter」、そして今年の「カルピスウォーター」CMソングの「パラボラ」といったタイアップ3曲を含む計4曲が収録される。どの曲も彼ららしくメロディの美しさに溢れ、前向きな力強い歌詞と、エネルギッシュなサウンドが存分に堪能できる作品だ。

 表題曲の「HELLO」は、パワフルかつ軽快なリズムの上で鳴るシンセのアルペジエーターの音色が印象的な一曲。ボーカル藤原聡の活き活きとした歌声が心地よく、高音を気持ち良く歌い上げる伸びやかな地声と、要所で繰り出されるファルセットなど、声色の使い分けも見事。そんな中、〈思わず忘れたよ 無傷で生きるバリアを張ってたってことも〉といったような“今”を生きるための言葉が歌詞の端々に散りばめられている。こうした世の中だからこそ勇気付けられるリスナーも多いはず。この「HELLO」は、彼らが出演する7月24日放送の『ミュージックステーション 3時間半SP』(テレビ朝日系)にて「115万キロのフィルム」とともに披露される。生の歌声と演奏からパワーを十分に感じられるパフォーマンスになることを期待したい。

 一方で、今作の中で特に注目したいのが「Laughter」だ。藤原はこの曲についてラジオで以下のように語っている。

「この曲の元になってるのって山陰から上京するんだという時の心の声、音楽をやりたいんだという思いが自分の心の『Laughter』という鳥、つまり自分の心の底から笑える人生への選択肢を選びたいんだという思いでこの歌詞は生まれているんだけど」(TOKYO FM)

 確かにこの曲には、大きな決断をするときの思い切りの良さのようなものを感じ取れる。夢を追って生まれ育った土地を離れる選択をした彼らの決意。それは、故郷というある種の重力から解放されるための、高く飛び立つ跳躍力のようなものである。失ったものへ思いを馳せるBメロでのボーカルは胸を締め付けるほど切ないが、それを振り払うようなサビでの歌唱は、まさにその一大決心を象徴するかのように輝いている。重厚感のあるギターサウンドに対して、彼ら(と同じように生きる仲間)を祝福するような終盤の大合唱。そして最後の〈自分自身に勝利を告げるための歌〉という言葉が、なんともドラマチックで感動的だ。

「4人で四六時中音楽やってたわけじゃん?どう考えてもこっちの人生が幸せで、それって成功できるかどうかの目算で飛び出したというよりも4人で音楽をやっている時間が人生の中で1番幸せだって思ったから飛び出したわけで。このバンドをずっとやってたいって言う気持ちが『Laughter』っていう鳥なんだよね」(TOKYO FM)

 筆者はこの曲をはじめて聴いたとき、Mr.Childrenの「終わりなき旅」が脳裏によぎった。「これからライブでずっとやっていくと思う」と本人たちも言っているが、この曲は単に“ヒゲダン流の上京ソング”なだけでなく、今も貫かれているバンドにとっての“芯”なのだと思う。今後の活動にも効いてくる重要な一曲となるに違いない。

 それにしてもこの曲は、実体験を元にしたことで同じ境遇に悩む人びとの背中を押す歌として聴くことはもちろん、笑える人生を選択したいという“鳥”を歌詞の中心に据えたことで、よりいっそう多くの人びとに刺さるような、単なる応援歌以上の幅広い受け取り手に解釈の余地を残したものになっている。

 「Pretender」のスマッシュヒットにより押しも押されもせぬバンドへと成長した感のある彼ら。1曲がヒットしただけでなく、続くようにして「宿命」や「ノーダウト」「I LOVE…」といった他の曲もチャートを席巻しているのを見るにつけ、単なる偶然のヒットではなく、彼らの秀でた曲作りの才能が徐々に証明されている最中なのだと感じる。

 一言一句丁寧に発音し、言葉の意味を膨らませるように表情を変化させるボーカルは、一度聴いただけでもフレーズが耳に残るほど明快で、情報過剰になりすぎた現代の楽曲への反動のようにも思えるし、昨今のバンドには珍しく特定の時代感をまとっていない作風も、幅広い世代に支持される理由のひとつとなっているように思う。

 「今は90年代風のサウンドが来てる」とか「イントロは短い方がいい」など、様々な言説が囁かれる業界だが、そんな中で常に“歌”と“言葉”を大切にする彼らの姿勢を見ていると、普遍的な部分こそ最も大事なのだと改めて感じさせられる。彼らの快進撃を分析すればするほど、曲作りに必要なものとは何か、シンプルな答えに行き着くような気がするのだ。(荻原 梓)

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