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今期もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2021年冬の注目作ベスト5

リアルサウンド

21/2/4(木) 6:00

 2021年最初のクールとして現在放送されている冬ドラマ。撮影現場は新型コロナウイルスの影響を受けながらも、各局力を入れた様々なジャンルの豊作が揃った印象を受けるが、今期観るべきなのはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、冬ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

1.『夢中さ、きみに。』(MBS)

 本作は2019年に話題となった和山やまの同名漫画短編集の映像化。1話の中で、林美良(大西流星)と二階堂明(高橋文哉)、二人の男子高校生を中心にした物語が並行して描かれるのだが、登場する高校生の描き方がとにかくユニークで、既存のパターンから抜け出しているのが素晴らしい。

 メイン脚本家は喜安浩平。映画『桐島、部活やめるってよ』や『幕が上がる』で知られる学園モノの青春群像劇を得意とする脚本家なだけに、短編集のエピソードを再構成して一つの世界として打ち出している。チーフ演出は『中学聖日記』(TBS系)や『MIU404』(TBS系)で知られる塚本あゆ子。プライムタイムの連続ドラマでは、万人がわかるように考慮しながら、独自の映像表現を小出しに見せるというスタンスだったが、本作では振り切っており、映像表現として見応え抜群だ。BL(ボーイズラブ)の構造を用いて、異性の性的視線に晒されることで傷ついた男の子が同性の友情に救われる物語や、恋愛とは違う男女の関係を、推し(アイドル)とファンの関係に重ねて描く作品が近年増えているのだが『夢中さ、きみに。』もその流れにある作品だろう。「尊い」という言葉が心に響く、新しい時代の青春ドラマである。

2.『俺の家の話』(TBS系)

 長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本、磯山晶プロデュースという『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、『うぬぼれ刑事』(TBS系)のチームが再結集。物語は、42歳のプロレスラー・観山寿一(長瀬智也)が能楽の大家で人間国宝の父を介護するために実家に戻る所からはじまるホームドラマ。介護、能楽、プロレスというバラバラの題材をうまく繋いで、一つの物語へと仕上げる手腕は「流石」の一言だ。

 長瀬はプロレスラーとしての身体作りはもちろんのこと、認知症気味の父親を演じる西田敏行との軽妙なやりとりも見事にハマっている。根底にあるテーマは「男らしさの軟着陸」で、加齢と共に肉体が衰えた時に、今まで強者として振る舞ってきた男がどう自分の弱さをうけいれるべきかを、「男の中の男」というキャラクターを、コミカルかつ猛々しく演じてきた長瀬が演じるのだから目が離せない。「コロナ禍」の描き方も秀逸で、家の中で家族がやりとりをする場面以外ではマスクを着用ということが徹底されている。

 ドラマにおけるコロナ禍の描写は、まだ試行錯誤だが、本作のマスクの見せ方はとても自然で、物語のノイズにならない。一つのモデルケースを提示したと言って間違えないだろう。

3.『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)

 40歳の独身女性・笛吹新(池脇千鶴)が“40歳以上募集”と書かれたバーでホステスとして働き、そこでジルバを習うことで生きる活力を取り戻していく物語。有間しのぶの同名漫画が原作だが、漫画にくらべると実写映像ならではの生々しさが増しており、特に池脇が演じる新の佇まいは、ドラマとは思えない生々しさだった。そんな新の表情や仕草が、ジルバを習うことで変わっていくのが本作の面白さである。東海テレビは、『牡丹と薔薇』などのドロドロの昼ドラの印象が強かったが、本作は同じ東海テレビでも、近年話題となっているドキュメンタリーのテイストに近いのではないかと思う。

 また、舞台は2019年だが、物語冒頭は2020年で、新もマスクを着けていた。バーが舞台だと考えると、何らかの形でコロナ禍の影響が物語に絡んでくるのかもしれない。

4.『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)

 ドラマ執筆が続いている岡田惠和脚本の医療ドラマ。多発性筋炎を患っている紅野真空(高畑充希)が、虹ノ村の診療所で住み込みの医師として働く物語だ。虹ノ村の住民はみんな善良で優しく『ちゅらさん』(NHK総合)や『ひよっこ』(NHK総合)といった作品で岡田が描いてきたユートピア的な世界なのだが、終始不穏な空気が漂っているのは、医師の真空が病気を抱えており、心と身体がいつか破綻してしまうのではないかという緊張感があるからだろう。

 岡田作品には楽しくて優しい世界を描く一方、あえて見せない奥行きがあり、その余白をどう読み込むかで、俳優の演技や監督の演出は大きく変わる。本作に関しては、高畑がその余白を過剰なまでに読み込んでいるため、真空の不安にこちらも同調して観てしまう。怖くて観ていられないという人も少なくないと思うが、この視聴体験は、他では味わえない独自のものだ。

5.『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)

 日本のドラマでは珍しいゾンビアクションホラーで、コロナ禍のパンデミックをゾンビと重ねている。序盤はゾンビドラマの定形を丁寧になぞっているという印象で、今後、どれだけ独自色を出せるかが鍵だろう。映像は豪華で見応えあり。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ特区『夢中さ、きみに。』
MBSにて、 毎週木曜24:59~
テレビ神奈川にて、毎週木曜23:00~
チバテレにて、毎週金曜24:00~
テレ玉にて、毎週水曜24:00~
とちテレにて、毎週木曜22:30~
群馬テレビにて、毎週木曜23:30~
見逃し配信:TVer、MBS 動画イズム、GYAO
見放題独占配信:TELASA、au スマートパスプレミアム、J:COM オンデマンド、milplus
出演:大西流星(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、高橋文哉、福本莉子、坂東龍汰、楽駆、前田旺志郎、望月歩、河合優実、伊藤万理華、横田真悠ほか
原作:和山やま『夢中さ、きみに。』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:塚原あゆ子、高野英治、宮崎萌加
脚本:喜安浩平、濱田真和
主題歌:なにわ男子(関西ジャニーズ Jr.)「夜這星」
オープニングテーマ:Broken my toybox「Hello Halo -ReLight-」(Universal Connect)
チーフプロデューサー:丸山博雄
プロデューサー:尹楊会、松本桂子、塩村香里
制作:TBS スパークル
製作:「夢中さ、きみに。」製作委員会・MBS
(c)「夢中さ、きみに。」製作委員会・MBS
公式サイト:https://.mbs.jp/muchusa_kimini/
公式Twitter:@MuchusaKimini
公式Instagram:muchusakimini

金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:長瀬智也、戸田恵梨香、永山絢斗、江口のりこ、井之脇海、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、羽村仁成(ジャニーズJr.)、荒川良々、三宅弘城、平岩紙、秋山竜次、桐谷健太、西田敏行
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:勝野逸未、佐藤敦司
編成:松本友香、高市廉
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

『その女、 ジルバ』
フジテレビ系にて、毎週土曜23:40~24:35放送【全10回(予定)】
出演:池脇千鶴、江口のりこ、真飛聖、山崎樹範、中尾ミエ、久本雅美、草村礼子、中田喜子、品川徹、草笛光子
企画:市野直親(東海テレビ)
原作:『その女、 ジルバ』(有間しのぶ、 小学館『ビッグコミックス』刊)
脚本:吉田紀子
音楽:吉川慶、HAL
監督:村上牧人、根本和政、室井岳人
プロデューサー:遠山圭介(東海テレビ)、松本圭右 (東海テレビ)、雫石瑞穂(テレパック)、 黒沢淳(テレパック)
制作:東海テレビ、テレパック
(c)東海テレビ
公式サイト:https://www.tokai-tv.com/jitterbug/

『にじいろカルテ』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00〜21:54放送
出演:高畑充希、井浦新、北村匠海、安達祐実、眞島秀和、光石研、西田尚美、泉谷しげる、水野美紀、モト冬樹、半海一晃、池田良、水野久美
脚本:岡田惠和
演出:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサ:貴島彩理(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作:テレビ朝日、アズバーズ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/nijiiro/

『君と世界が終わる日に』
Season1(全10話):日本テレビ系にて毎週日曜22:30〜放送
Season2(全6話):Huluにて、3月配信開始
出演:竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、大谷亮平、笹野高史、マキタスポーツ、安藤玉恵、横溝菜帆、鈴之助、キム・ジェヒョン、滝藤賢一
脚本:池田奈津子
音楽:Slavomir Kowalewski A-bee
主題歌:菅田将暉「星を仰ぐ」(Sony Music Labels Inc.)
制作:福士睦、長澤一史
チーフプロデューサー:加藤正俊、茶ノ前香
プロデューサー:鈴木亜希乃、鬼頭直孝、伊藤裕史
協力プロデューサー:白石香織
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ、HJ Holdings,Inc.
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kimiseka/
公式Twitter:@kimiseka_ntv
公式Instagram:@kimiseka_ntv

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