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『35歳の少女』最終回は噛み締めたい金言の数々が King Gnu「三文小説」が染み込むラストに

リアルサウンド

20/12/13(日) 11:50

 柴咲コウが主演を務めるドラマ『35歳の少女』(日本テレビ系)が12月12日放送の第10話で最終話を迎えた。

 最終話では今までの波瀾万丈の物語がまるで嘘かのように、望美(柴咲コウ)たち登場人物それぞれのハッピーエンドが描かれる。そこにあったのは、25年間、望美が目覚めるのを待ち続けた多恵(鈴木保奈美)のように、諦めることをやめなかった一人ひとりが胸を張って生きる未来だ。

 望美は夢だったアナウンサーに、愛美(橋本愛)はグラフィックデザイナーへと就職し、進次(田中哲司)は1級建築士を目指し始めていた。結人(坂口健太郎)は教師としての立場は変わらないが、過去の自分と決別し、勇気を振り絞って行動を起こしていく。

 いじめを受ける生徒が退学届けを出すという状況は、過去に結人が教師を辞めた時と同じだった。結人は辞めるのを覚悟で教師の立場からではなく、自分自身の言葉で生徒たちに話しかける。クラスにいじめがあること、それを見て見ぬ振りをすることは同じように罪であること、人の話を聞いてあげられる人間になってほしいということ。それは同時に過去の結人が起こせなかった行動であり、望美に教えられた生き方でもあった。結人の思いは生徒たちへと伝わり、いじめを受けていた生徒も登校してくる。自分を曲げずに教師の道を続けた結果だ。

 第7話のカセットテープが途中で途切れ、答えが出ずにいた家族が仲直りする方法も、望美の口から言葉となった。その答えは、必要ない。「そんなものなくても仲直りできるのが家族なんだから」というのが望美の見解だ。少々遅くはなったが、時岡家もようやく仲を取り戻している。

 この望美の言葉を始め、最終回は金言だらけの物語だったように思う。第8話で望美が言った「私たちはさよならを言うために出会ったの」のアンサーとして、結人が返す「俺たちは死ぬまで一緒にいるために出会ったんだ」。アナウンサーとして北海道のローカルテレビに就くことに迷う望美に結人がかける「正しいかどうかじゃなくて、自分の選んだ道を正しくするか」という言葉。

 さらに結人が生徒たちに紹介する「世界中の人間の中で俺という人間は1人しかいない。だからこの世の中で大切な存在なんだ」という児童書『モモ』の一節。望美のナレーションによる「私たちは英雄なんかじゃない。普通の人間だ。でも、人を愛することはできる。幸せを願うことはできる」という提言。そして、アナウンサーとして夢の一歩を歩み始めた望美が確信する「これがあたしだ」という言葉はこのドラマを象徴するセリフである。

 ラストには笑顔の望美の顔に映し出される「36歳の少女」という文字。1年間という短い月日の中で描かれていた物語だったことを伝えながら、主題歌となったKing Gnu「三文小説」〈怯えなくていいんだよ そのままの君で良いんだよ 増えた皺の数を隣で数えながら〉のフレーズが強烈に頭に浮かんだ。遊川和彦作品として、『過保護のカホコ』(日本テレビ系/2017年)の星野源「Family Song」、『同期のサクラ』(日本テレビ系/2019年)の森山直太朗「さくら(二〇一九)」に続く、ワンクールを通して物語と共に大きな意味を持った1曲だった。

 途方のない絶望の物語から始まった『35歳の少女』は、夢を叶え幸せを願いながら生きる望美たちの姿で幕を閉じた。望美が口にしていたのは、私たちは英雄なんかではなく普通の人間であるということ。望美のようなドラマティックな人生を描くことは難しいかもしれないが、結人のように過去の自分から脱却するチャンスは誰にでもある。自分を信じ、諦めないこと。そうすれば、とんぼは必ず飛んできてくれる。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『35歳の少女』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:柴咲コウ、坂口健太郎、橋本愛、田中哲司、富田靖子、竜星涼、鈴木保奈美、細田善彦、大友花恋
脚本:遊川和彦
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:大平太、諸田景子
演出:猪股隆一ほか
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shojo35/
公式Twitter:@shojo35

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