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ようやく再開に向けて動き始めた映画興行 「平常化」の前に映画ファンができること

リアルサウンド

20/5/7(木) 19:00

 新型コロナウイルスの映画興行に及ぼす影響について、本コラムで最初に書いたのは2月27日付の記事(参考:春休み興行に影を落とすコロナウイルスへの懸念 注目される『映画ドラえもん』の成り行き)。以来、今回まで11週続けて毎週書き続けてきたことになる。各都道府県に先駆けて緊急事態宣言が出された北海道のシネコン・チェーンのほか、都内の一部の映画館が休業に入ったのはその週末の2月末から。つまり、映画興行はライブハウス、ホールなどでのコンサート興行と並んで、最も早くから最もダイレクトに新型コロナウイルスの影響を受けてきた業種ということになる。

参考:アカデミー賞のルールも変わった 「コロナ以降」の新作配信問題

 当初、非常事態宣言の期限とされていた5月6日(「ゴールデンウィーク」という言葉が日本の映画興行界から生まれた和製英語であることをふまえるとなんとも皮肉な話だが)を終えて、まったく先が見えなかった真っ暗なトンネルにも少しずつ光が見えてきた。ご存知のように、非常事態宣言自体は延長が決定したわけだが、政府は特定警戒都道府県以外の34県の知事に、映画館(及び劇場、博物館、百貨店など)に関して、マスク着用と十分な座席間隔、入退出時に十分な間隔、消毒・換気などを前提に、休業要請の緩和を検討するよう通知した。「自粛」というこれ以上ないほど曖昧なかたちで始まった映画館の休業は、一部地域での「要請」の「緩和」を「検討」という、同じくなんとも曖昧なかたちでようやく再開の方向に動き出したわけだ。ここまでで既に2ヶ月半。本コラムで再三述べてきたように、ここからさらに映画興行が平常化するまでには長い道のりとなる見込みだ。

 5月中、あるいは現時点での非常事態宣言の期限が明ける6月1日から営業する各映画館の上映スケジュールには、既に再開し始めている国外の映画館同様、多くの旧作が穴埋めとして組み込まれることになるだろう。これは、この時期に公開が予定されていた多くの新作が公開延期を決定したためで、国外ではクリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』(日本公開は9月18日)が公開される予定の7月中旬、日本では一度公開延期された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が公開される予定の8月7日が「平常化」の一つの目安となる。

 ただ、忘れてはならないのは、それまでにも小規模公開の新作は数多く公開されるであろうことだ。自分のメールボックスにも、2月の終わり頃から今日まで、「公開延期」「延期日程決定」「再度公開延期」「再度延期日程決定」「試写中止」「試写再開」「再度試写延期」「オンライン試写の案内」「サンプルDVD送付の連絡」などの配給会社、宣伝会社からのメールが、毎日ひっきりなしに送られてくる。その度に、対応に追われる関係者の苦労に胸を痛めてきたが、改めて思うのは、その直接的な原因は「この1~2週間が極めて重要」などと1~2週間おきに繰り返し発表してきた日本政府の場当たり的な対応にあったということだ。もちろん、今回のパンデミックによってどの国でも映画興行は大きな危機に瀕しているわけだが、緊急事態宣言下における「休業要請」はともかく、その前の「自粛」や現在進行中の「緩和の検討」などという言葉によって、どうしてここまで振り回されなくてはならないのか?

 映画ファンの一人としてできることは、ミニシアターのクラウドファンディングのような民間の相互扶助だけではない。大きな不安の中で5月や6月の公開日を掲げ続けてきた新作、そして未だ公開日を発表することもできない新作、それらの作品が公開された時に映画館に足を運ぶことこそが、映画館だけでなく、小さな配給会社や小さな宣伝会社、そして個人で映画の配給や宣伝の仕事をしている人たちへのサポートとなる。(宇野維正)

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