Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

DEAN FUJIOKAの一貫した“ミニマリズム”が出色 2019年チャートで印象的なビート&アレンジを振り返る

リアルサウンド

19/12/23(月) 7:00

 昨年から担当しはじめた連載「チャート一刀両断!」では、毎月一回のペースでオリコン週間アルバムランキングをもとにさまざまなトピックを扱ってきた。ざっと2019年の執筆分をふりかえってみると、K-POPとJ-POPを問わず男性アイドルやパフォーマンスグループを多く取り上げてきたようだ。

(関連:DEAN FUJIOKA「Shelly」MV

 具体的に挙げると、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE、COLOR CREATION、King & Prince(以下、キンプリ)、Kis-My-Ft2、THE BOYZ、SuperM、ATEEZなど。ロックバンドやシンガーもちょくちょく取り上げていて、DEAN FUJIOKA、SEKAI NO OWARI、Suchmos、ユニコーン、ENDRECHERI、米津玄師、Mrs. GREEN APPLE、Official髭男dismがいる。ヒプノシスマイクの1stアルバム『Enter the Hypnosis Microphone』について書いたのもこの枠。

 以上のなかで印象深いのはDEAN FUJIOKAだ。アルバム『History In The Making』はサウンドのクオリティも、日英中とトライリンガルな歌詞に見られる多言語的なアプローチも、そしてアーティストとしての華も光る一枚。日本でリリースされたポップス、とりわけエレクトロニックなサウンドを取り入れたもののなかではメジャーインディ問わず出色だった。最新EP『Shelly』も期待を裏切らない素晴らしい出来で、年間ベストと言ってもいい。とまとめると、自分の2019年は「DEAN FUJIOKAにはじまりDEAN FUJIOKAに終わった」と言っても過言ではない気がしてくる(多分過言です)。

 DEAN FUJIOKAを評価したくなる理由の最たるものは、ビートのミニマリズムが冴え渡っていることだ。最新シングル『Shelly』の表題曲は、コード感も歌メロも親しみやすいものの、それをこれみよがしのキーボードやベースラインで説明してしまうことは決してしない。遅めのテンポで、ビートを刻みすぎることもなく、しかし着実に楽曲のドラマを展開させていくさまはとても心強いものがある。このミニマルさあってこそ、クライマックスの派手な展開も際立つというものだ。

 EDMに代表されるダンスミュージックの影響を受けた構成やトラップ的なフロウなどは(おそらく部分的にはK-POP経由で取り入れたのだろうが)それなりに耳にすることが増えた。シングル曲やアルバムリード曲ではラグジュアリーなサウンドのポップスを聞かせるキンプリも、アルバムではワイルドな側面を見せる楽曲に事欠かない。

 しかし、ビートのスタイルや譜割り、フロウが変化し徐々に浸透してきたとしても、たとえばDEAN FUJIOKAのようなミニマリズムを貫けているアーティストやグループというのはそう多くない。とりわけヒットチャートに登場するような楽曲ではそうだ。アレンジの段階で展開が多く、メインの歌メロ以外にもギターやストリングスでメロディを補ってしまう傾向は未だ大きい。いきおい、音像もちょっともったりとしがちだ。この傾向が思った以上に根深いことを痛感したのは、ATEEZの日本デビュー盤『TREASURE EP.EXTRA:Shift The Map』。同じ楽曲でも日本リリースを前提にリアレンジすると、説明的なメロディが顔をのぞかせてしまう。

 これを一概に欠点と言い募るつもりもないが、もうちょっと抑えたほうがエレガントなのではないかとひとこと言いたくなる。

 その点、米津玄師が坂東祐大(Ensemble FOVE)とタッグを組んで次々に送り出した一連の楽曲(「海の幽霊」、「パプリカ」セルフカバー、「馬と鹿」)は、J-POPと管弦楽の関係性をクリシェ抜きに再構築した趣があり、興味深かった。

 最後に、アルバムを扱うこの連載ではついぞ取り上げるタイミングがなかったものの、三浦大知が年末に配信リリースした新曲「COLORLESS」は改めてその攻めっぷりに脱帽する一曲だった。16ビートの平歌から三連をベースにしたサビへと移行するシンプルながら意表を突く構成にはまったく無駄がない。音数も極端に絞られ、ビートが提示するリズムと太いベースライン、そして三浦の歌唱だけで一曲が成立している。

 こうした楽曲が飛び出した、というだけでも、2019年の収穫といっていいかもしれない。まだチェックしていない方はDEAN FUJIOKA「Shelly」とあわせて三浦大知「COLORLESS」だけでも聴いてみてほしい。(imdkm)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む