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藤原ヒロシが考察する音楽とファッションの関係史「パンクに匹敵する出来事は起こっていない」

リアルサウンド

13/10/7(月) 8:00

20131005-fujiwara-02.jpgファッションの世界でも活躍してきた藤原ヒロシ

 音楽、ファッションなど多分野で活躍してきたクリエイター藤原ヒロシが、10月16日発売のアルバム『manners』 について語るロングインタビュー後編。前編では、かつてプロデューサーやアレンジャーとしての活動が中心だった藤原ヒロシが、今作では全曲を自ら歌っている理由と、その創作上の方法論について話を訊いた。後編では、音楽とファッションの関係性と、新たな音楽が生まれない理由、そして今後、音楽に残された可能性についてまで語ってもらった。

前編:藤原ヒロシが語る、キュレーション的な“歌”の作り方「歌う内容は自分のことじゃなくていい」

――ファッションの仕事をする上でも、音楽は発想の源であり続けたのでしょうか。

藤原ヒロシ(以下、HF):常にあった気はしますね。それが具体的にどんな発想に繋がったかっていうとわからないんですけど、いつもそばにありました。ただ聴いているだけの時もあれば、DJをしている時もあったし、ギターを弾いている時もあった。少なくとも、他のことと切り離してはいなかったと思います。

――パンクやニューウェーブ、ハウスなど、音楽の世界では時代ごとに革命的な出来事が起きてきましたが、そうした動きには常に刺激を受けてきたと?

HF:もちろんあったと思います。ただ今は、パンクに匹敵するような出来事は起こっていないと思います。

 パンクの頃がピークだと思うんですけど、そのくらいの時期まではファッションと音楽に密接な関わりがあったんですよ。パンクを聴くなら。パンクの恰好をしなければいけない。パンクの恰好をしているのにパンクを聴いていなかったら恥ずかしい、という風潮があった。音楽にはそれくらい影響力があったと思うんですが、そういった傾向は90年代以降は薄れて、今は音楽とファッションが一緒に出てくるということが少なくなりましたね。

 音楽自体も新しいものがポンと出てくることはないですね。なぜかと言うと、古いものが消えなくなっちゃったので。常に情報としてどこかに残っている。以前であれば、あるスタイルは一回忘れられて、また流行って、そこで盛り上がったりした。けれど、今は盛り上がった状態の過去がずーっと残っている感じなので、昔とは違いますよね。

――今はアーカイブがたくさんあって、常に楽しめる反面、画期的なものが出てきにくくなったと。ポップ・ミュージックの革新性はパンクでピークに達した、という面もあるのでしょうか。

HF:それはあると思います。パンク、ヒップホップ以降は新しいものが出てきていない。ハウスも、ハウスって呼び方をしているだけで、手法はヒップホップに近いものがありますからね。あの辺で音楽の進化は止まっているんじゃないかな、と思います。もちろん、アレンジとかで変化は起きているけど、大きな意味ではパンク、ヒップホップ以来の革命みたいなことは起こっていないと思いますね。

fuziwara-tuika-02.jpg現在、藤原ヒロシは京都精華大学のポピュラーカルチャー学部で客員教授も務めている

――ポップミュージックで革命が起こらなくなったことで、ファッションなど他のカルチャーにはどんな影響があったのでしょうか。

HF:まず、ファッションがコスプレっぽくなりますよね。ある音楽を聴きに行くときはそれにふさわしいファッションをするけど、普段は違うという。本来、パンクとかだったらライフスタイルまで影響されるから、普段もボロボロのTシャツ着ちゃったりするじゃないですか。でも、そういうことがなくなってきた。

 この前、若い子とちょうどポップカルチャーの話になって、パンクの話とかをしたんです。その子にどういう音楽が好きなのって訊いたら、レディ・ガガとかが好きです、と。でも彼女、レディ・ガガの恰好はまったくしない普通の子なんですよね。で、なんで真似しないのって訊いたら「だって生肉ですよ」って(笑)。たしかに生肉のドレスは着れないなって思いました。あれは昔で言ったらKISSとか、今でいったら氣志團みたいな感じで、コスプレと同じ捉え方なんですよね。もう、カルチャーというか、生き方やファッションまで真似したくなるというようなムーブメントは生まれにくいんだと思います。

――音楽自体は残るけど、新たなムーブメントは起こらない。

HF:そうでしょうね。考えてみたら仕方ないかなと思います。モノが消えないから、どんどん薄まっていく。新譜が出たから買おうと思っても、その中の100人に一人は、ビートルズっていうのが良さそうだからそっちを買ってみようってなる。アーカイブが常にあるから、ひとつひとつがどんどん薄くなっていく。それはもう、ファッションでもなんでもそうかなと。あらゆるものが薄まっていく。

 音楽だって、若いうちは今のアーティストを「これカッコイイ」って好きになっても、“この人は昔ピストルズっていうのを聴いていたんだ”とか“ビートルズっていうのを聴いていたんだ”って知れば知るほど、どんどん薄まっていく。言い換えると、買わなきゃいけないものや、聴かなきゃいけないものが増えていくわけですから。

――なるほど。アーカイブ化が進む音楽という文化には、どんな可能性が残されていますか。

HF:やっぱりライブ感というものはなくならないのではないでしょうか。アナログ的な良さというか、空気感というか。それは残るのではと思います。

――一一方で、今回のアルバムはレコーディングならではの音作りになっていますよね。

HF:打ち込みで、ライブではできない音がいっぱい入っていますね。でも、初回生産限定盤に付いているdisc2の方は、リハーサル・セッションみたいになっているんですよ。これはこれで面白いんですよね、同じ曲でも全然違うので。今のところは打ち込みの曲をライブで表現しようとは思っていないんです。どこで線をひいていいのか自分でもよくわからない。

 人によっては、自分でしっかり歌ってギターも弾いているけど、コーラスはサンプリングって場合もあるじゃないですか。コーラスがサンプリングってことは、絶対リズムは揺れないわけだから、そこにライブ感は本当にあるのかなって思うんですよね。ミステイクも含めたライブ感というものも、醍醐味というか。その時しか味わえないものだから。音楽は聴くだけなら、もうiTunesとかでいくらでも聴ける。だから、その場の空気感がより重要になっていくんじゃないかと思います。

――今後もシンガーソングライター的な活動は続けていきますか。

HF:どうでしょうね。でも、レコーディングやライブは楽しいので、続けていきたいですね。こういう集大成的なアルバムになるかどうかはわかりませんけど、またやってみたいとは思います。
(写真=竹内洋平/取材=神谷弘一)

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