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和田彩花の「アートに夢中!」

ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道

毎月連載

第18回

今回紹介するのは、国立新美術館で開催中の『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』(8月5日まで)。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ウィーンで独自に花開いた「世紀末芸術」と呼ばれる絵画や建築、デザイン。この時代に画家グスタフ・クリムト(1862-1918)やエゴン・シーレ(1890-1918)、建築家オットー・ヴァーグナー(1841-1918)、アドルフ・ロース(1870-1933)など各界を代表する芸術家たちが登場し、ウィーンの文化は黄金時代を迎えた。このウィーンの豊穣な文化が生まれるまでを、「近代化(モダニズム)への過程」という視点から辿る決定版的な展覧会。和田さんはどのように捉えたのだろうか。

ウィーン世紀末の全貌に迫る
大展覧会

今回の展覧会は、その作品展示数にまず圧倒されました。クリムトたちが活躍した、いわゆる世紀末芸術だけを見られるのかと思ったら、18世紀のマリア・テレジアの時代から展示が始まって、そして19世紀末のクリムトたちの芸術運動につながるという構成。ウィーンの文化がどのように変遷していったかを知るには、とても勉強になる展覧会です。

私はもともとウィーン・モダンが大好きだったんです。ウィーン・モダンを知ったのは、高校生の時。テレビでウィーン・モダンの特集を見た時から、ずっと興味を持っていたんです。だから今回の展覧会もとても楽しみにしていました。

昼ドラ的作品?
エゴン・シーレ

私が今回の展覧会で最も好きだったのが、エゴン・シーレ。

私はシーレに対して、ちょっとグロテスクで、昼ドラを見てるような感覚を持っていました(笑)。 一見シンプルなように見えるけど、ゴテゴテとした絵具の使われ方、色の多さ、そして色の混ざり具合なんかがそう思わせるんですよね。気持ちをざわつかせるというか。実はそもそもそんなに好きではなかったんです(笑)。色の混ざり合いや塗り方がちょっと汚いなって思っていて、正直受け付けないところがありました。

でも今回、じっくりとその筆づかいや色のバランス、そして油彩だけでなくポスターやデッサンを見ていくうちに、ちょっとずつシーレに対するマイナスイメージが消えていき、好きになっていたんです。

その中でも特に好きになった作品が、《ひまわり》です。 もう最高です。最高にオシャレでかっこいい!

ゴッホに影響を受けたであろうと言われているシーレですが、ゴッホのような咲き誇るひまわりではなく、枯れゆく姿を描いているのも面白いところです。

さらに面白いのは、ひまわりは枯れているのに、画面下には華やかな花が咲いているところ。でもこの花たち、いったいどこからやってきて、どう咲き続けていくのかはわからない。ひまわりから生み出されているようにも見えるし、養分を吸い取っているようにも見えるし、摩訶不思議な構成なんです。

ひまわり自体も不思議ですよね。何もない場所に一本だけ咲いていたんでしょうか。ひまわりが咲く場所も想像できないとは思いませんか?それに無理に画面の中に収まろうとしている窮屈さも感じます。ギュッと押し込まれているようにも見えるし、うなだれているようにも見える。

だからといって、私はこの絵を悲しいとは思いませんでした。だってこのひまわりから生命を感じないから。生命を感じたら悲しいけど、生命を感じないから悲しくない。それに絵画よりもデザインに見えるから、受け入れてしまうんですよね。

でもシーレは、「植物に喜びや苦しみの表情に似たものがあるのです」って語っているそうなんですが、私にはこの絵からその生きているからこその感情というものを感じることができませんでした。確かに苦しそうではあるけど、人間らしさはあまり……。

そう考えると、見る人によってどんなイメージを持つんだろうって、ますます面白さを感じました。私は生命を感じませんでしたが、人間の姿を投影して、このひまわりに共感する人もいるかもしれない。知識を得ることも大事ですが、自由に見て感じるということを、これからも大事にしていきたいと思いました。

あとこの空間構成とか、輪郭線とかを見ていると、浮世絵を思い出しましたね。 影響を受けているとも言われているので、ちょっと納得です。

シーレの作品って、どこか水分が少なくて乾燥してる雰囲気があると思ってるんです。例えば同じく今回出品されている《自画像》を見ても、水分量が足りないというか、ちょっとミイラっぽいというか……(笑)。そこはクリムトの一見乾燥しているように見えながらも、水分を多分に含んでいるように見える画面構成とは真反対だと思います。

でも、シーレ本人の生涯は決して乾いたものではない、というのがまた面白いんですが(笑)。

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