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『24 JAPAN』は2020年の並行世界? 単なるリメイクで終わらないポテンシャル

リアルサウンド

20/10/10(土) 13:00

 予想以上だった。正確に言えば、単なるリメイクで終わらないポテンシャルを感じさせる内容だった。『24 JAPAN』(テレビ朝日系)第1話は、総選挙当日の23時18分から始まる。通話相手から「彼女は亡くなった」と聞かされ、崩れ落ちる獅堂現馬(唐沢寿明)。その直後、獅堂の二丁拳銃が火を噴く。

 開局60周年を記念して、テレビ朝日が20世紀FOX社とタッグを組んで送る『24 JAPAN』。オリジナルは世界的大ヒットドラマの『24 -TWENTY FOUR-』で、インド版に続いてのリメイクとなる。

 最初に本稿の立場を明らかにしたい。本家『24 -TWENTY FOUR-』は日本でも根強い人気を誇っており、ストーリーやキャラクターも広く浸透している。そのため、『24 JAPAN』に対する評価も、オリジナル版を知っているかどうかで変わってくる。オリジナル版を未見の視聴者には、展開を知らずに観る楽しみ方もあり、知っていてもあくまで別物として接するという態度もある。

 しかし、リメイク作としては、どうしても本家との比較は避けられない。また、オリジナル版との違いはリメイクの醍醐味でもあり、視聴者に作品を楽しむ新たな視点を与えてくれる。

 そこで、本稿では以下のルールを設定する。1.オリジナル版のプロットや登場人物を参照しつつ、『24 JAPAN』独自のアイデアや2020年現在の知見を踏まえた考察を行う。2.レビュー記事という性質上、物語への言及は避けられないが、次回以降のネタバレは極力控える。以上をベースに進めたい。

 第1話では『24 JAPAN』のメインキャストが顔を揃えた。注目は獅堂が所属するCTU(テロ対策ユニット)。CTU東京本部のセットは雰囲気満点で、チームメンバーが着任した瞬間、本作はまぎれもなく『24』だと直感した。獅堂の肩書は第1支部A班の班長。同班には、チーフの水石伊月(栗山千明)、係長の南条巧(池内博之)、暗号解析係の明智菫(朝倉あき)がいる。

 笑顔を見せない伊月や自然体の菫は、すっかりチームの一員として溶け込んでいる。出色だったのは南条。クセ毛に髭を蓄え、目を剥いて挑みかかるように話す南条は、オリジナル版のトニー・アルメイダ(カルロス・バーナード)が画面から抜け出したようで、思わず膝を打った。

 獅堂は、本部長の郷中兵輔(村上弘明)からCTU内の裏切り者を探るよう極秘命令を受け、上司の鬼束元司(佐野史郎)に麻酔銃を撃つ。オープニングを除いてほぼオリジナル通りの展開に面食らいつつ、要所に日本版ならではの改変も施されていた。

 初の黒人大統領は初の女性総理候補・朝倉麗(仲間由紀恵)に変わり、CIA内の機関だったCTUは、警察庁や内調(内閣情報調査室)と並び立つ機関に位置づけられた。鬼束が麗に言及する「緊縮財政、管理・監視社会に反対だ。あの女は我々の組織を嫌っている」という箇所はオリジナル版にないもので、2020年現在の危機感が反映されている。

 細かい点で、携帯電話からスマートフォン、PCからタブレットへの機器の変遷や、高精細でダークな色調はオリジナル版からアップグレードされた部分だ。獅堂の娘・美有(桜田ひより)のクラウドのパスワードが「LOVE PAPA」で、オリジナル版は「クソったれ(LIFESUCKS)」だったのも示唆的。『24 JAPAN』は、「『24 -TWENTY FOUR-』が2020年の日本で起きたら?」という並行世界のifを形にしたものと言える。

 『24 JAPAN』は『24 -TWENTY FOUR-』ではなく、獅堂現馬はジャック・バウアーではない。そのことを承知した上で気になった点を挙げると、オリジナルの世界観を尊重するあまり、全体として遠慮がちになっているのではないか。設定は設定として、役者同士の掛け合いや振り切った演技をもっと見てみたい。

 当初13話の予定だったオリジナル版は、最終的に24話に拡大されたこともあり、整合性を欠いた部分も指摘されている。予定調和ではなく、冗長なシーンは思い切って取り払い、視聴者に「考察」を仕掛けるなど、『24 JAPAN』にはオリジナル版を超える進化を期待したい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『24 JAPAN』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送
※一部地域を除く(全24話)
出演:唐沢寿明、仲間由紀恵、木村多江、桜田ひより、筒井道隆、今井悠貴、森マリア、栗山千明、池内博之、朝倉あき、村上弘明、片瀬那奈、高橋和也、前川泰之、上杉柊平、犬飼貴丈、柳美稀、神尾佑、でんでん、水野久美、櫻井淳子、内村遥、天野慶久、時任勇気、佐野史郎
日本語版脚本:長坂秀佳
日本語版脚本協力:山浦雅大
音楽:奈良悠樹
チーフプロデューサー: 五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:船津浩一(テレビ朝日)、神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、下山潤(トータルメディアコミュニケーション)
協力プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日)
監督:鈴木浩介、木内健人、日暮謙、大塚徹
原作:Based on the U.S. Series “24” Created by JOEL SURNOW & ROBERT COCHRAN (c)2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
制作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日

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