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いま、最高の一本に出会える

左から藤田俊太郎、尾上右近。この日2人は、藤田が持参した「ラヴ・レターズ」の台本を手に撮影に応じた。

「ラヴ・レターズ」藤田俊太郎が尾上右近に信頼「俳優が“丸裸”になる」

19/10/9(水) 17:02

「『ラヴ・レターズ』LOVE LETTERS 2019 Autumn Special」演出の藤田俊太郎と出演者の尾上右近への取材会が10月上旬に行われた。

「ラヴ・レターズ」は、2017年に死去した青井陽治の翻訳・演出により、1990年から上演されてきた朗読劇。互いを意識しながらも別々の道を選んだ幼なじみの男女がやがて再会を果たし、激しく惹かれ合うさまが描かれる。

2017年12月の「『ラヴ・レターズ』~青井陽治追悼公演~」に松井玲奈と共に出演した右近は、当時の苦労を「とても高いハードルで、飛び越えたと言うよりくぐった感じ(笑)」と明かし、「短い時間でしたが、ドラマ1クール分くらいの密度を(松井と)一緒に過ごし、すべてを分かち合えた感覚でした。関わりの密度は、時間の長さと比例しないんだなと」と実感を口にする。上演に向けては「前回は作品の厚みを知らない怖さでしたが、今回はそれを知っている怖さがある」「今の自分を藤田さんにぶつけるつもりでやらせていただきたいです」と意気込んだ。

本作は2人の男女が手にした台本を読み上げるというシンプルな形式で進行。藤田は右近の苦労に触れながら、作品の難しさについて「2人しか出演しませんが、手紙の中に出てくる人々を含めれば、実際は1人50役くらいでは」「手紙の向こうの膨大な世界を知っている必要があるので、大変」と述べる。演出の際は「まずキャストに青井さんの演出ノートを全部伝える」と言い、「この作品では俳優やその人生が“丸裸”になる。僕の仕事は、最もシンプルな状態で舞台上に居られるように導くこと。余計なアドバイスもしますが(笑)、最終的に助言も俳優の中からなくなり、言葉だけが残る演出を心がけています」と語った。

また、英語の原本と青井の翻訳を比較分析したと言う藤田は、作品のポイントを「大事なのは、誰かに何かを伝えること」だと述べ、「特定の時代、場所、人種の話ですが、2人の手紙には思いやりがあります。“自分が1番”という考え方になりがちな現代でも、他者に思いを伝えることを大事に作られたこの戯曲は価値がある」と言葉に力を込めた。

右近は演出家としての藤田を「狙いや思い、情熱を笑顔で包み、ある意味で隠している(笑)」「笑顔で褒め、演出を伝えて導くことを完全にやり遂げる方」と分析。前回の上演を通して「演出家がいない歌舞伎という舞台がどう演劇として成り立つのかと、歌舞伎の力を逆に実感した」と言い、「藤田さんとの『ラヴ・レターズ』の経験が、僕の中で改めて歌舞伎を観る基準になりました」と藤田に視線を送る。一方の藤田は、歌舞伎俳優の右近が浄瑠璃方として清元栄寿太夫の名を持ち、現代劇の経験もあることに触れながら「1カ所にとどまらず、魅力をアウェイに持ち出したり、ホームに持ち帰ったりして自分の表現を求めている。貴重な輝きを持つ方です」と厚い信頼を寄せた。

手紙にまつわるエピソードを尋ねられると、松本白鸚に喜寿の誕生日を祝う手紙を送ったと言う右近は「『ラ・マンチャの男』にちなみ、『おじさんのいつまでも若々しい背中を追いかけるのが、自分なりの“見果てぬ夢”です』と書いたら、おじさんがそれを気に入ってお手紙をくださいました」とエピソードを披露。藤田は「いい話ですねえ」と目を細めながら、ロンドンでミュージカル「VIOLET」を演出した際の出来事を紹介する。現地では公演初日にカンパニー内でカードを贈り合う習慣があったと言い、「どこまで書けばいいかわからず、ボックスオフィスの方にも書きました。周囲には『そこまでしなくていい』と言われましたが(笑)、受付の彼は『僕にまでありがとう』と返事をくれた。言葉の壁はありましたが、手紙のおかげで彼とはきっと演劇人として再会できるだろうなと」と笑顔を見せた。

取材会では藤田が右近に「清元栄寿太夫さん、で合っていますか……?」と名前を確認し、右近がたっぷりと間をとってから「合ってます(笑)」と藤田の耳元でささやいて、記者たちを笑わせる一幕も。最後に藤田が「老若男女問わず観ていただきたい。あらゆる人間の営みが詰まっています」とメッセージを送り、取材は終了した。

「『ラヴ・レターズ』LOVE LETTERS 2019 Autumn Special」の公演は10月31日から11月4日まで、東京・新国立劇場 小劇場にて。公演には右近と剛力彩芽ペア、平方元基と昆夏美ペア、三浦貴大と大島優子ペア、岡山天音と黒島結菜ペア、松本利夫(EXILE)と樹里咲穂ペアが日替わりで登場する。

「『ラヴ・レターズ』LOVE LETTERS 2019 Autumn Special」

2019年10月31日(木)~11月4日(月・振休)
東京都 新国立劇場 小劇場

作:A.R.ガーニー
訳:青井陽治
演出:藤田俊太郎

出演

10月31日(木):尾上右近、剛力彩芽
11月1日(金):平方元基、昆夏美
11月2日(土):三浦貴大、大島優子
11月3日(日・祝):岡山天音、黒島結菜
11月4日(月・振休):松本利夫(EXILE)、樹里咲穂

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