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『エール』2週目で味わう、関内三姉妹の関係性 松井玲奈、二階堂ふみ、森七菜の絶妙なバランス

リアルサウンド

20/7/8(水) 6:00

 連続テレビ小説『エール』(NHK総合)の再放送が、7月4日より第2週に入っている。

参考:森七菜、『エール』でさらなるブレイク? 吉岡里帆、松本穂香の「朝ドラ」丸メガネ枠を継ぐ

 第1週、裕一(石田星空)の子供時代に続き、第2週で描かれる音(清水香帆)の幼少期を改めて観ていて気付くのは、関内家・三姉妹の関係性がこの時点ですでに確立されているということだ。初登場シーンはその人物の印象を形づけるもの。第1話にて登場した三郎(唐沢寿明)が家を飛び出し、「うおー! 生まれだべー!」と近所を走り回って裕一の誕生を喜ぶ様子は、彼のその人柄を一発で表している。

 三姉妹が初めて揃うのは、第7話でのこと。長女・吟(本間叶愛)が買った、まだ読んでもいない雑誌を、次女・音が「いいじゃん! 減るもんじゃないんだし!」「同じもんが2冊あったってしょうがないじゃん」という言い分で先に読もうという喧嘩のシーンから始まる。それを遠巻きから「そりゃそうだ」「たしかに」と客観的な目線でものを言うのが、三女・梅(新津ちせ)。陽気で明るい吟が買ってきたのは、おしゃれに関する雑誌で、音は姉に物怖じせず意見をぶつけ、冷静な梅は姉たちのことが気になりながらも一人小説(芥川龍之介の短編小説『鼻』)を読むという、それぞれの関係性と個性がわずか20秒足らずで説明されている。

 馬のように優しい安隆(光石研)の教え「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいい」を胸に、愛情深き母・光子(薬師丸ひろ子)のもとで育った三姉妹は、自立心を持った女性へと育っていく。三姉妹の関係性を一言で言えば、じゃんけんのような三すくみだ。

 婿を取って家を守ることが長女としての責任と考える吟は、素敵な男性と出会って幸せな家庭を築くため、音とともに見合いに出向く。見合いのメインは音。吟は見合いの相手の兄との恋愛結婚を狙うため、わざと音に見合いをさせるのだ。姉としてのマウント。なんともやり方が回りくどい(結局、音が見合い相手に気に入られるという吟がオチになるのも少し抜けている彼女のユニークな点である)。

 音は音で作家を夢見る梅の才能を見込んで、演奏会で披露する父に捧げる詩「晩秋の頃」を強引に書かせる。そんな2人の姉たちに一歩引いた目線からズバッと意見を言うのが梅。文通だけで裕一に夢中になっている音に現実的な考えをぶつけたのは梅だった。

 だが、単純な三すくみではないのも、この三姉妹を見ていて飽きさせないポイント。幼少期から大人へと成長し、より強く表に出てきたのが、それぞれの夢に向かう姉、妹たちを気遣う思いだ。ドラマの性質上、物語の中心は音となるが、音楽学校に通学する音の妊娠を聞き、すぐさま顔を見せたのは吟であったし、梅は文通の相手である裕一と2人きりで話すことで「しっかりしとるね。安心した」と姉たちの前では見せない表情を浮かべていた。

 そもそも、少し見方を変えれば、梅は音に詩を頼まれたことで、初めて作品を最後まで書ききることができ、称賛の拍手を送られることの喜びを味わえた。音は吟に見合いに誘われたことで裕一の専属先となるコロンブスレコードの伝手を見つけるきっかけとなった。ピンチをチャンスに。そんな逞しく、進歩的な生き方のバックボーンには光子と亡き安隆の影が見えてくる。

 いまだ本放送の再開時期は未定であるが、第14週以降の予告動画では、梅がメインに登場している。「これからはまっすぐに生きてみる」。あの世から帰ってきた安隆にそう誓っていた梅が選ぶ生き方とは。(渡辺彰浩)

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