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【おとな向け映画ガイド】

捨てられた犬猫の命を救う『犬部!』と、ユダヤ人がナチスにリベンジ『復讐者たち』をご紹介。

ぴあ編集部 坂口英明
21/7/18(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(7/22〜24)に公開される映画は13本。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品は『犬部!』『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』の2本。中規模公開、ミニシアター系の作品が11本です。今回はその中から、『犬部!』と『復讐者たち』をご紹介します。

大学のサークルから始まった
『犬部!』



杉並にある動物病院、愛犬の名前・花子を病院名にした「ハナ動物病院」の獣医師太田快作さんを描く『花子と先生の18年 ~人生を変えた犬~』というテレビドキュメンタリーがありました。太田さんは、行き場のない犬や猫を預かり新しい飼い主を見つける、被災地に出かけボランティアで動物治療にあたる、動物の赤ひげ先生のような獣医さん。彼の日常を追った記録です。18年連れ添った花子の最期を先生が看取ります。人間なら100歳に近い大往生ですが、人間とワンちゃんの心の通い合いは、人間同士よりも強いところがあると感じ入りました。

「犬部」とはその太田さんが学生時代に立ち上げた、捨て犬や捨て猫を保護する大学のサークルのこと。映画の前半は若き日の太田さんと仲間たちをモデルにした青春ドラマ、花子との出会いや、人間の勝手で犬猫の生命を奪ってはいけない、そう考えるにいたった彼の行動の源泉が描かれます。そして後半は卒業後の苦闘の日々。動物愛護といいながら、引き取り手のない動物は殺処分をせざるをえない公共施設とか、獣医が先頭に立って動物を保護すべきだ、とはいってもなかなか世の中きれいごとではいかない現実が浮き彫りにされます。

片野ゆかのノンフィクション『北里大学獣医学部 犬部!』を原案とし、太田さんの評伝『犬は愛情を食べて生きている』の山田あかねが執筆した脚本を、『影踏み』などの篠原哲雄監督が映画化しています。太田さんがモデルの主人公・颯太役を演じているのは林遣都。大学の同級生で、卒業してから動物愛護センターに務め、その直面する現実に悩む親友柴崎に中川大志、犬部の仲間役で大原櫻子も出演。ドラマの後半、重要な役割を演じる大学生役に今後の活躍が期待される田辺桃子。

林遣都、ちえ(花子)、田辺桃子

花子は、捨て犬を管理するセンターで最後に残った子を、と颯太が希望し引き取った犬。その花子役の「ちえ」ちゃんも、今ではZOO動物プロのスターですが、仔犬の時に土に埋められているところを保護されたそうです。

【ぴあ水先案内から】

中川右介さん(作家、編集者)
「……かわいそうなイヌは出てくるが、悲劇的にはならない。何より、これは青春ドラマ、人間のドラマだ。……」
https://bit.ly/3z1Ko3Z

(C)2021「犬部!」製作委員会



ドイツ人600万人暗殺計画
『復讐者たち』



第二次世界大戦中、ナチスが強制収容所で600万人におよぶユダヤ人を大量虐殺した、いわゆるホロコーストの惨劇は知っています。けれども、この映画で描かれた、被害者のユダヤ人に、その復讐でドイツ人を大量殺戮する計画があった、ということは知りませんでした。「プランA」と名付けられたこの計画を、真正面からテーマにし、映画化したのは初めてです。戦後80年近くになるというのに、まだ「驚きの実話」が映画で登場するとは…。

強制収容所から解放された主人公マックスは、難民キャンプで、離れ離れになった妻と息子を捜します。ふたりが虐殺されたことを知り、ナチスへの復讐を誓います。彼はパレスチナのユダヤ人によって編成された過激派「ユダヤ旅団」に接触し、さらに“ドイツ人を600万人殺す”計画をもつ「復讐(ナカム)」の活動にも加わっていきます。

映画は、秘密組織にマックスが加わっていく過程と、着々と進められる恐怖の復讐計画、彼らを阻止しようとするユダヤ人軍事組織「ハガナー」の動きなどが、サスペンスフルに同時進行していきます。監督と脚本はイスラエル出身のドロン・パズ、ヨアヴ・パズ兄弟。スリラー、ホラー作品の経験はありますが、ここまでの大作は初めて。マックス役は、昨年公開された『名もなき生涯』で、ナチスへの忠誠を拒み続ける農夫の役を演じたドイツの名優、アウグスト・ディールです。ナカムの女性メンバー役に、『蜘蛛の巣を払う女』のシルヴィア・フークスも出演しています。

この映画制作のきっかけとなったのは、監督の友人からきいた祖父の実話だそうです。「祖父が収容所からなんとか解放され、我が家にもどったところ、隣人が我が物顔に住んでいた。その隣人こそ、祖父一家が隠れていた場所をナチス兵に密告した本人だった。家族が惨殺されひとり残った祖父はその隣人を復讐のため殺した。この秘密を、祖父は亡くなる数年前まで家族に話さなかった。」このエピソードは映画にも描かれています。

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……妻子をナチスに殺され、復讐を誓いながらも両者の間にあって揺れ動く男の目から戦後ドイツの知られざるユダヤ人たちの姿を描きます。……」
https://bit.ly/3epSVWr

佐々木俊尚さん(フリー・ジャーナリスト)
「……ある登場人物が「いい人生を送ることこそが復讐だ」というセリフを吐く。この言葉が、わたしにはいちばん刺さった。……」
https://bit.ly/3rfusIw

植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……“憎しみの連鎖は断てるのか”という人類の永遠のテーマに挑んだ……」
https://bit.ly/3z3qPbz

(C)2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cineplus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE

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