ドイツのファイト・ヘルマー監督の作品は、いつも現実の世界を舞台にしながら、どこかファンタジーの世界へと連れて行ってくれる。本作もその点は変わらない。 まもなく定年を迎える鉄道運転士が、列車に引っかかっていたブラジャーを持ち主に返そうとする。なんのこっちゃと思われるかもしれないが、これがヘルマー監督の手にかかると、人間の誠意や良心を示唆した実に味わい深い大人のファンタジーワールドへ誘われる。 全編セリフなしという大胆な試みも注目。言葉では伝わらないことが、表情やしぐさで伝えられることの可能性が見えてくる