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北村匠海×小松菜奈「僕が本気で心配する唯一の相手が、弟です」

ぴあ

『さくら』北村匠海&小松菜奈 撮影:岩田えり

最近、チェキで家族写真を撮りました

映画『さくら』で兄妹を演じた北村匠海と小松菜奈。顔を合わせるなり飛び出す息の合った掛け合いは、まるで本物の兄妹のよう。

撮影中も、読者プレゼント用のチェキを見て、「なつかしい〜」と口にした小松に、「なつかしい? こういう取材のときよく撮ってもらわない?」と北村がすかさずツッコミ。照れたように「本当だ」と舌を出す小松から、末っ子感が溢れ出ている。

平凡な家族に降りかかった大きな悲しみ。心の傷を抱えながら、それでもゆっくりと前へ進み出す一家の姿を描いた本作では、「家族写真」が折々に挿し込まれている。ふたりは最近いつ「家族写真」を撮っただろうか。

「私、撮りました」(小松)

「撮ったんだ」(北村)

「チェキで撮った」(小松)

「やっぱりチェキ使ってるじゃん! なつかしいとかテキトーなこと言って(笑)」(北村)

「バレた?(笑) しかもわざわざ自分の家から引っ張り出して」(小松)

「マイチェキじゃん!」(北村)

「たまたま下のお兄ちゃんとふたりで実家に帰ったら、上のお兄ちゃんもちょうど家族で帰ってきて、みんなでハイキングしたりバトミントンしたりボウリングしたり」(小松)

「めっちゃ仲良いやん」(北村)

「そのときに久しぶりに写真撮ろうよって言って撮りました、チェキで(笑)」(小松)

「改めて家族で写真を撮るのがこっぱずかしいというのもあって、うちは家族写真が1枚もないんです。でも、自粛期間中に家族のことを思うことが多くて。やっぱりちゃんと残しておきたいなと思って、この間、今度家族写真を撮ろうよと提案しました」(北村)

「わかる。家族の時間って大事だよね。結婚したりとか家族ができたりとか、そうでなくても友達と遊びに行ったりとか、家族みんなで集まるのってなかなか難しくて。うちもみんな揃うのはお正月ぐらいだったから、こういう何でもないタイミングで集まれて良かったと思った」(小松)

「そうだね。僕が写真を撮るのが好きなのも父親譲りで。でも、親からすると息子に撮られるのは恥ずかしいものなんだろうなとわかる気持ちもあって、あんまり家族を撮ることがなかったんだけど。この映画を観ていても家族写真っていいなと思うし。そうやって写真に残しておくことって大切な気がする」(北村)

『さくら』(C)西加奈子/小学館 (C)2020 「さくら」製作委員会

うちはお正月はみんなでおとそをグイッとします

一言で家族といっても、それぞれの家にそれぞれの文化がある。たとえば、『さくら』に登場する長谷川家では、お正月に餃子を食べるのがならわし。北村家、小松家の正月の風景はどんなものか聞いてみた。

「うちは気合いが入っていて、毎年お母さんがおせちを重箱でつくってくれます。で、みんな朝早くに起こされて、ボサボサの頭のまま部屋から出てきて、顔を洗ったり髪を整えたら、全員揃って『あけましておめでとうございます』っておとそをグイッとやるのが恒例のイベントです」(小松)

「すげえ。うちは何もないなぁ」(北村)

「そうなの?」(小松)

「みんなで年越しそばを食べるときもあれば、風呂の中で年があけたこともあるし。めっちゃ適当かも」(北村)

「お正月に帰る決まりとかもない?」(小松)

「ないかなぁ。仕事の関係もあって、おじいちゃんのところに行くことも少なくなってきたし」(北村)

「そっか。あ、でもお雑煮はあるでしょ?」(小松)

「お雑煮…? お雑煮…?(と考え込む)」(北村)

「うちのお雑煮はこの味だなとか。塩味とか、醤油系だなとか、味噌とか」(小松)

「お雑煮がちゃんと出た記憶がないんだよね」(北村)

「そっか。確かに出ないところは出ないもんね」(小松)

「うちは結構自由というか。この世界に入るときも『嫌になったらいつ辞めてもいいし』という感じだったし。もちろん怒られることはたくさんあるけど。だから、あんまり決まった習慣みたいなのがなくて。あ、でも、お正月におしるこは出る!」(北村)

「おしるこなんだ! 本当、その家その家で全然違って面白いね」(小松)

泣きすぎて顔の感覚がなくなりました(笑)

弾むようにポンポンと言葉を交わし合うふたり。そんな微笑ましいやりとりからは想像もできないシーンが、映画にはある。それが、兄・一(吉沢亮)の恋人・矢嶋(水谷果穂)からの手紙を、小松演じる美貴が読み上げるシーンだ。北村演じる次男・薫が感情を爆発させる数少ないシーンでもある。

「普段お芝居をしているときって、どこかで芝居している自分を引いたところで見ている自分がいたりするんですけど、『さくら』に関してはその逆で、役に入り込んでいる瞬間がたくさんあった。美貴とのシーンもそのひとつです。あのシーンは本当に苦しかった」(北村)

「私も難しくて、めちゃくちゃ悩んだところです。薫の部屋に入ってくるのも、沈んで入ってくるのか普通に入ってくるのか、いろんな道があったし。手紙を読むのも、感情的に読むのかフラットに読むのか、便箋を持つのか持たないのか、細かい選択肢がいろいろありすぎて、撮影に入るまでいろいろ考えました。でも、ここは考えてやるシーンじゃないなと思って。その場で出てきたものに任せるしかないと思ってやってみたんですけど、そしたら最初のドライ(リハーサル)でめちゃくちゃ感情が溢れ出ちゃって」(小松)

「横で見ていても全開で泣いていて、大丈夫かなって思った。で、僕もそれを受けるから、ドライなのに全開で泣いてて、自分でも大丈夫かって思った(笑)」(北村)

「あはは。でも、なんか、出し切った感があった。台本上では薫が泣くシーンだったから、
途中でやばいなと思って、どうしようか葛藤もありつつ、もうどうにでもなれじゃないけど、とりあえずやってみようという感じで最後までやりきりました。今でもあれが正解かどうかはわからない。今までやってきた中でいちばん難しいシーンでした」(小松)

「薫という役は、気持ちを受け取る場面がすごく多くて。久々に受け芝居をがっつりやれた楽しさがありました。受け芝居って相手の芝居ですごく変わる。今回はみなさんのおかげで気持ちよく涙を流せた場面が何度もあって。クライマックスの車のシーンとかも、泣きすぎて顔の感覚がなくなりました(笑)。でもそれぐらいすごい感情にさせてもらえたことが、ありがたかったですね」(北村)

この映画を今年公開できた意味はあると思う

兄・一に特別な感情を寄せる美貴は、時に周囲が困惑するような行動に出る。決して受け入れやすいとは言いがたいキャラクターだ。

「私も3人兄妹で、お兄ちゃんがふたりいるので、100%わからないでもないところがあって。お兄ちゃんが家に彼女を連れてきたときとか、今まで見せたことのないお兄ちゃんの行動や表情に『あなた誰』みたいな気持ちになったこともあったし(笑)」(小松)

「あるんだ?」(北村)

「あるある。『へえ、そういう顔するんだ』ってすごく複雑な気持ちになるというか。ずっと今まで自分と遊んでくれていたのに、彼女ができた途端、その人とばっかり遊びに行って家に帰ってこないということもリアルにあったから、美貴の気持ちはわからなくはないんです」(小松)

そう共感を寄せた上で、小松は美貴についてこう話す。

「ただ、美貴はお兄ちゃんへの気持ちが溢れ出すぎている。美貴の持つ狂気的な愛は、たぶん見た人からすると『この子は何なんだろう?』ってなると思うんですね。でも私は得体の知れない子でいいやと捉えていて。そんな美貴にかき乱されることで、家族も改めて思うものがある。私自身も、やっていてよくわからないところもあれば、演じてみることで発見する部分もあって、とても面白い役でした」(小松)

そして、北村演じる薫は、ヒーローである兄に憧れとコンプレックスを抱いている繊細な役どころだ。

「薫は無個性な自分が嫌いで。一への憧れとちょっとした嫉妬と劣等感を糧に生きている少年。そういう意味では、演じる難しさはあまりなかったんですけど、すごくよく覚えているのが、一が『神様、ちょっと悪送球やって』と言うシーン。一が一気に感情を吐き出して、薫もそれに対して自分の気持ちをぶつけるんですけど、そこで一のことが見れないんですね。なんか見れなかったんです、一の顔が。それは薫の弱さでもあるんですけど」(北村)

自暴自棄になった兄。薫は、最後までそんな兄と向き合うことができなかった。

「本当だったらこの家族はもっと幸せな方向に進めたかもしれない。だけど、そうはいかなかった。一は、結局辛いことから逃げてしまった。一は一でどうしようもなかったんだろうなと思うけど、そんな一のことをズルいなと思う自分もいて。そういう人間の弱さもちゃんとこの作品には描かれている。特に今年1年は、みんないろんな困難にぶち当たって、嘘でしょと思うような出来事が多かったからこそ、この映画を今年公開できた意味はすごくあるんじゃないのかなと思っています」(北村)

長男・一、次男・薫、そして末っ子の美貴。3きょうだいとその両親を通じて描かれる家族の絆。北村は弟、そして小松にはふたりの兄がいる。親とも友達とも違う「きょうだい」。ふたりにとって「きょうだい」とはどんな存在なのだろうか。

「いとしくてたまらないですね。ちょうどこの間20歳になったんですけど、ふたりでお酒を飲んでて、例えば弟が飲みすぎると『今日から禁酒!』ってつい怒っちゃうんですよ。昔、親にこれをしなさいとかこれはしちゃダメとか怒られるのがすごい嫌だったのに、自分も同じことをしてるなと思うと、あのときの親の気持ちはこれだったんだとわかるというか。そんなふうに本気で心配する唯一の相手。それが、弟かもしれないです」(北村)

「私にとっては、なんだかんだ言って、いちばん私のことをわかってくれる存在です。昔は喧嘩しかしてなかったんですけど、年をとるたびに仲良くなって。まだ学生の頃はよく洋服の貸し借りもしていました。私はメンズの服もよく着るんですけど、ちょっとサイズが大きいなというものは今でもお兄ちゃんにあげたりするんですね。仕事のこともプライベートのことも普通に包み隠さず話すし、他愛のない相談もできる。一緒にいてすごく楽な存在です」(小松)

映画は、時に自分を映す鏡となる。きっと『さくら』は、それぞれにとっての家族を思い出す映画になるだろう。

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撮影/岩田えり、取材・文/横川良明

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