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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

ある怪談DVDをめぐり、怪奇現象が続く話・その③

毎週連載

第154回

前回からの続きです。ある怪談のDVDを観て、うちのマネージャーの洋介、そして、その友達のYくんがほとんど同じ怖い現象を体験したわけだけど、今回は3人目のSくんという友達の体験談です。

Sくんにもあえて何も教えずにDVDをYくんが送ったんだけど、観てもらった翌日にYくんがSくんに電話したら「いや、怖いっすね。あのDVD」と、これも似たような感想だったんだって。しかも、この後の流れもほとんど同じで、「ただ……ひとつ気になってるんですけど、あのDVDを観た後、人生で初めて金縛りにあったんですよ」とも。

Sくんの家は駅から少し離れた住宅街にあるアパートの1階らしく、DVDを観た後、部屋で寝ていたところで金縛りにあったらしい。そのアパートの1階の外にはベランダがあり、そのすぐ先には人がひとり歩けるくらいの細い道があるそうです。

金縛りにあった直後、その細い道を遠くから誰かがズッ、ズッと歩いてくる音が聞こえたらしいけど、歩くにしては妙にスピードが鈍いんだって。しかも、どういうわけかその歩く音だけがはっきり聞こえると。Sくんは金縛りにもあったし、「なんかイヤだな」と思ったらしいんだけど、その直後、ズッ、ズッと歩いてくる音がSくんのベランダの前でピタッと止まったんだって。しかも、そこで止まったのはどうやら女の人らしくて、何かを歌ってる。その歌はやっぱり……「せっせせーの、よいよいよい♪」。

怖過ぎない? この話。ちなみに、そのDVDは「所持している人にだけ何かが起こる」わけで、誰かに送った後は元の持ち主には何も起こらないらしい。

僕はこの話を聞いて「エンタメだ」と思った。絶対に面白い。連載ではだいぶ端折ってるけど、いつかきちんとまとめて僕自身の喋りで怪談としても発表したいと思ってる。たださ、それにしてはまだ実証件数も足りないし、データももう少し欲しいのも正直なところなんだ。

だから、確かに怖いかもしれないけど、洋介経由でSくんに「もし、同じようなことが起こったら、今度は動画か写真か、なんか撮ってくれないか」とお願いして。その物的証拠があれば、この話はもっと洗練されるからね。そしたらSくんは「わかりました。やってみます」と言ってくれたの。

Sくんも、DVDを受け取ってから数日似たような現象が起きたらしいけど、4日目くらいに、やっぱりまた細い路地をズッ、ズッと誰かが歩いてきたんだって。その日は金縛りはなかったらしくてSくんは「よし。絶対に撮ってやる!」と思ってズッ、ズッが家のベランダで止まったタイミングでスマホを握りしめて、一気にカーテンをバーっと開けた。

でも、目の前には誰もいないんだって。Sくんは「あれ? おかしいな」と思ったらしいけど、ベランダの向こうに細い道を挟んだ目の前に、一軒家が二軒あるらしくて、なんと、その家と家の間の暗闇に、髪が超長い若い女の人が立ってたという。Sくんは「うわっ!」と一瞬たじろいだらしいけど、その女の人、ヒューッと平行移動で奥に消えていったんだって。

結果、あまりの出来事にSくんはそれを写真や動画に収めることができなかったんだけど、「本当にヤバいことが起きた」ということで、その話を受けた洋介はSくんにもこれまでのあらましをやっぱり伝えて。

そこで、「さらにもうひとり、誰かにDVDを渡したほうが良い」って話になり、今度はまた別の友達・Wくんって奴にDVDを送ることにしたんだ。(次週に続く)

今年の夏はこの話で持ちきりでした。写真はトラックメーカーの荒井優作くんと

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


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