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『レコ大』審査員は利権まみれ! 日本の音楽評論家が信用できないワケ

リアルサウンド

13/7/26(金) 8:00

 ソニーがJ-POPを殺した――そんな過激な見出しで、音楽業界のタブーに切り込んで話題を呼んだ『誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰期』(朝日新聞出版)の著者・麻生香太郎氏が、音楽業界の抱える問題点を語る集中連載第2回
【第1回目】「大手マスコミと芸能界を結ぶ「太い利権」が、ジャーナリズムを殺した」

前回、マスコミの利権に縛られることで、まともな音楽ジャーナリズムが成立しないというお話がありました。このことは音楽評論家でも指摘できないのでしょうか?

 音楽評論家も、利権に絡めとられているケースがありますからね。ボクは最近になって、「特に歌謡曲畑の音楽評論家は信じちゃだめだ」ということに気がつきました。なぜかと言うと、信頼を寄せていた評論家が、よーく調べるとレコード大賞(以下、レコ大)の審査員だったりするからです。

レコ大.jpgIllustration:やべねこ

 『誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰期』では、70年代後半のテレビは接待漬けだったという主旨のことを書きましたが、あの頃はまだやり方が”ベタ”で分かりやすかった。今は巧妙で、外からは分からなくなっている。尊敬していた音楽評論家さんが、実は何年から何年までレコ大の審査員をやっていた――なんて記録を見ると、唖然としますね。

 ボク自身も週刊誌時代の『日経エンタテインメント』の編集をしていた頃、月1でレコード会社に呼ばれている時期がありました。仲を深めたいのだろうと思い、誠意を持って対応していたら、あるとき「レコ大の審査員に興味はない?」と誘われて。そのときは単純に関心がなかったので「けっこうです」と答えたんですけど、苦虫を噛み潰したような顔をしていましたね(笑)。

 そのとき、分かったんです。「ああ、こうやって一人ひとり抱えていくんだな」と。お金に惹かれてしまう気持ちは分かるけど、信頼している人が引っかかっていると悲しいものです。音楽業界に楯突けなくなってしまうでしょう。そんな状態で、音楽評論が成り立つわけがない。

審査員になると、どれほどの報酬がもらえるのでしょう?

 自分が実際に審査員になったわけではないから、具体的な金額は分からない。けれど、はした金であるわけがないですよね。また、先ほども申し上げたように、各レコード会社、プロダクションからの接待は、70年代から続いている。車をもらったり、お中元の箱を開けると、品物の下にお金があって……なんてパターンがあるかもしれないですね(笑)。

 これら情報があまり知られていないのは、スポーツ紙や週刊誌の芸能関係のデスククラスが、レコ大の審査員を経験している――つまり、”報じない、報じられない”からなんです。そうした意味で、マスコミにも大きな問題があると言えます。

 現状、まとも音楽ジャーナリズムは日本にはないですね。ボクは『日経エンタ』において、芸能誌には頼らないメディアを作ろうと張り切っていましたが、レコード会社やプロダクションは、どうもついてきてくれませんでした。ある程度、賛成はしてくれるのですが、やはり「大きい人には逆らいたくない」という気持ちがあるようでした。日本で音楽ジャーナリズムを成立させるには、ゼロからやり直さないと無理でしょうね。連続性ではなく、非連続の形で、新たに作る必要があると思います。

 しかし現在、どんどん雑誌がなくなり、音楽ページが削られ、音楽ライターとして食っていくのが厳しくなっている。ベテランの方々がまだ現役でいらっしゃいますから、若い人は順番待ちの状態ですよね(笑)。音楽ジャーナリズムを新しく作ると言っても、いったい誰がやるのか――スポンサーが撤退して制作費削減で、若い人材が育ちにくい環境も気がかりですね。
【第3回目に続く】「嵐やAKBの歌は、なぜユニゾンばかり? ハーモニーを忘れたJ-POPに必要なモノ」

■麻生香太郎
大阪市生まれ。評論家、作詞家。『日経エンタテインメント!』スーパーバイザー。東大文学部在学中から、森進一や小林ルミ子、野口五郎、小林幸子、TM NETWORKなどに作品を提供。『日経エンタテインメント!』創刊メンバーとなり、以降はエンタテインメントジャーナリストに転身し、音楽・映画・演劇・テレビを横断的にウオッチしている。著書に『誰がJ-POPを救えるか マスコミが語れない業界盛衰期』(朝日新聞出版)など。Twitter

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