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2021年、絶対に押さえておくべきアートなTOPICS10

ぴあ

21/1/2(土) 12:00

『国宝 鳥獣戯画のすべて』 国宝 鳥獣戯画 甲巻(部分) 平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵

激動の年だった2020年も終わり、2021年のアート界には求められていることは大きい。癒し、刺激、学びの詰まった2021年の展覧会やアートイベントなど、チェックしておきたいトピックを紹介します。

※新型コロナウイルスの影響により、各展覧会の会期等が変更になる可能性があります。詳細は各展覧会の公式HPなどでご確認下さい。

【TOPIC1】
みんな大好き「鳥獣戯画」はやっぱり見逃せない!

国宝 鳥獣戯画 乙巻(部分) 平安時代・12世紀 京都・高山寺蔵 

昨年開催予定だったものの、やむなく延期になってしまっていた特別展『国宝 鳥獣戯画のすべて』(4/13~5/30)が東京国立博物館でついに開催される。鳥獣戯画は正式名称を《紙本墨画鳥獣人物戯画》といい、京都の古刹・高山寺に伝わる絵巻物だ。平安時代から鎌倉時代にかけて描かれたと推測されており、現存する四大絵巻のひとつとして知られている。そのなかでもカエルやウサギ、サルなどの動物たちが相撲を撮ったり、お経を読んだり、生き生きとした姿で描かれている「甲巻」は特に人気が高い。

この展覧会はその《鳥獣戯画》の全4巻(甲・乙・丙・丁)を全場面一挙に公開するという史上初の大盤振る舞い! また、展覧会場では密を避けるために、展示室内に動く歩道が設置され、順を追って鑑賞するスタイルを取るのとのこと。誰もが知るユーモラスな絵巻物、しっかりと目に焼き付けておこう。

【TOPIC2】
2021年は聖徳太子&最澄のメモリアルイヤー

『聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」』ポスタービジュアル

聖徳太子の1400年遠忌、そして最澄(伝教大師)の1200年大遠忌が重なる記念すべき2021年、もちろん2人にまつわる展覧会も開催される。

日本に伝来した仏教に帰依し、仏教を中心とした国造りを行った聖徳太子。東京国立博物館で開催される『聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」』(7/13~9/5)では、彼によって創建されたと伝えられている法隆寺の寺宝を中心に、太子その人と太子信仰の世界に迫っていくもの。とくに、7世紀、飛鳥時代に制作された国宝《薬師如来坐像》を博物館で見られる機会はめったにないので必ず見ておきたい。また、サントリー美術館の『聖徳太子―日出ずる処の天子』(11/17~22年1/10)は、聖徳太子信仰の中核を担ってきた大阪の四天王寺など、各地に伝わる聖徳太子ゆかりの品々が展示される。

天台宗を開き、比叡山延暦寺を開山した最澄。『伝教大師一二〇〇年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」』(10/12~11/21、東京国立博物館/22年2/8~3/21、九州国立博物館/22年4/12~5/22、京都国立博物館)では、205年ぶりの出開帳となる深大寺「慈恵大師坐像」(東京展のみ展示)など秘仏数体の公開や比叡山や天台宗の寺院に伝わる宝物のほか、比叡山延暦寺の中心に位置する根本中堂の再現展示も予定されている。

『伝教大師一二〇〇年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」』 国宝《『聖徳太子及び天台高僧像』十幅のうち 最澄》 平安時代・11世紀 兵庫 一乗寺蔵 ※東京・京都展のみ展示/展示期間未定

聖徳太子も最澄も、私たちの暮らしに今も身近な仏教を広めた立役者。その足跡をしっかりとたどっておきたい。

【TOPIC3】
2大ストリートアートティストの展覧会が東京で

『バンクシーって誰?展』ポスタービジュアル

街の壁がカンヴァスとなり、さまざまなスタイルで突然描かれるストリートアート。公共の場にゲリラ的に絵を描く行為に賛否両論はあるものの、キース・ヘリングやジャン・ミシェル=バスキアをはじめ、このストリートアートをきっかけに、世界へ羽ばたいていくアーティストも増えている。2021年、このストリートアートの2大スターの展覧会が日本で開催される。

寺田倉庫G1ビルで開催される『バンクシーって誰?展』(8/21~12/5、21年12月以降名古屋、大阪、郡山に巡回予定)は、いまではちょっとした動向でもニュースになってしまう覆面アーティスト、バンクシーの展覧会。そのユーモアを交えたメッセージ性の強い作品が強い支持をあつめている。この展覧会ではバンクシーの足跡を、プライベート・コレクター秘蔵のオリジナル作品とバンクシー作品が描かれた街並みを再現した体感型コンテンツでたどっていく。

そのいっぽう、様々な企業やファッションブランドと積極的にコラボレーションを行うKAWSは、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト。森アーツセンターギャラリーで開催される、『KAWS TOKYO FIRST』(7/16~10/11)では、絵画や彫像、プロダクトを展示。グラフィックだけでなく、立体作品なども制作し、その活動の幅は大きく広げているKAWSの魅力に迫る展覧会だ。

【TOPIC4】
現役女性アーティストのパワーがすごい

『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』 ミリアム・カーン《美しいブルー》2017年 油彩、キャンバス 200×195 cm Courtesy: WAKO WORKS OF ART 撮影:Daniel Martinek

2021年は女性アーティストの個展やグループ展の開催も活発だ。かつて、女性アーティストの展覧会は「女性ならではの感性」や、「女性の持つしなやかな〜」など、アーティストの個性が「女性」という言葉に収斂され、既存の枠組みのなかに押し込まれてしまうこともしばしばあった。ジェンダーのみならず、様々な側面からアイデンティティの尊重が図られている2021年、女性アーティストの展覧会もまた、私たちにあたらしい発見をもたらしてくれるだろう。

『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』 三島喜美代 《作品 19-C5》2019年 シルクスクリーン印刷した陶に手彩色、鉄 サイズ可変 Courtesy: Taka Ishii Gallery

森美術館の『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』(4/22~9/26)は、あいちトリエンナーレ2019にも参加したミリアム・カーンや様々な工業素材を素材にする三島喜美代をはじめ、71歳から105歳まで70代以上の女性アーティスト16名の展覧会。作品とともに人生の軌跡も振り返り、キャリア50年を超える彼女たちのエネルギーがどこから来たものかを検証していく。

また、水戸芸術館で開催される『ピピロッティ・リスト―あなたの眼はわたしの島―』(8/7~10/17)や、千葉市美術館の『福田美蘭展(仮称)』(10/2~12/9)にも注目。ピピロッティ・リストは、軽やかな映像インスタレーションで国際的に評価の高いアーティスト。今回の展覧会は、約30年間の活動の全体像を振り返る回顧展となる。福田美蘭は、新人洋画家の登竜門とされている安井賞を史上最年少で受賞したアーティスト。名画を下敷きに見る人の常識や認識を揺さぶる作品で知られている。本展でも、千葉市美術館の収蔵品をベースにした作品が新作として発表される予定だ。

【TOPICS5】
なにげにエジプトが熱い!

『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』(江戸東京博物館)展示風景

2021年、2つの大型エジプト展が日本を巡回する。この2つの展覧会は、従来のようなエジプト王朝の至宝や宝飾品を中心に紹介するものではなく、新しい見方を提案してくれる刺激的な展覧会だ。

江戸東京博物館で開催中の『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』(~4/4)は、古代エジプト人の信仰や死生観をテーマにした展覧会。オシリス神やイシス神、猫のすがたをしたバステト神などエジプトの様々な神々が登場する展覧会は、神秘的であり、ときにユーモラスだ。また、Bunkamura ザ・ミュージアムなどで開催予定の『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』(4/16~6/27、東京展ほか)では、発掘調査時の調査記録やミイラのCTスキャン解析データを公開するなど科学的アプローチを図るほか、10点以上のミイラ棺の身と蓋を立てた状態で展示するなど意欲的な試みも行う。

『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』 《ホルの外棺》後期王朝時代 (蓋)長さ199cm、幅72cm、高さ38cm ライデン国立古代博物館 Image©Rijksmuseum van Oudheden (Leiden, the Netherlands)

これまであまり知られてこなかった古代エジプトについて学びを深められる貴重な機会だ。

「TOPIC6~TOPIC10」

【TOPIC6】
風景へのさまざまなアプローチを比較!

『テート美術館所蔵 コンスタブル展』 ジョン・コンスタブル《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816 -17年、油彩/カンヴァス、101.6×127.0cm、テート美術館蔵 ©Tate

ずっと家にいる日々が長引くと、人はどうしても外に出て広大な風景を見たくなってくる。けれども遠出はむずかしい……。そんな時期は、風景画を見るのもおすすめだ。

三菱一号館美術館の『テート美術館所蔵 コンスタブル展』(2/20~5/30)は、19世紀初頭に活躍したイギリスの風景画家・コンスタブルの大回顧展。歴史画の背景と見なされた時代の風景画において、コンスタブルははありのままの自然を描き、自国の風景画を刷新し、その評価を引き上げた。

また、コンスタブルと同時期、フランスでも風景画に新しい動きが発生。SOMPO美術館『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』(6/25~9/12)では、戸外で描くことを覚えた画家たちにより、風景画の表現が大きく変わっていったことを丹念に追っていく。

そして、自然の中の外光の美しさに魅了され、その探求と表現方法を追求した印象派の画家、モネの風景画に焦点を絞った展覧会が、アーティゾン美術館『クロード・モネー風景への問いかけ』(5/29~9/10)だ。モネは、それまでの風景を描いた作品のあり方を根底から覆し、新しい時代の世界観とその詩情を伝達する手段としての風景を描いた。この展覧会では、世界最高峰のモネ・コレクションを有するオルセー美術館の作品を中心に国内の作品と合わせて構成され、風景画家としてのモネに迫る。

同じ風景画というジャンルでも、画家や時代によって描き方、描くものは大きく変わってくる。3つの展覧会をめぐり、風景画の魅力を堪能してみよう。

【TOPIC7】
現代美術の多様な表現に注目!

『Chim↑Pom展(仮題)』 Chim↑Pomポートレート 撮影:山口聖巴

2021年も現代美術の展覧会もラインナップが豊富。2021年はそのなかでも、若手や中堅アーティストの展覧会に注目が集まっている。森美術館で開催される『Chim↑Pom展(仮題)』(10/21~22年1/30)は、強いメッセージ性とユーモアと皮肉を絡めた作品で知られるアーティスト集団、Chim↑Pomの初期から近年までの代表作を一堂に集める展覧会。オリンピック開催後のタイミングで開催される展覧会に発表される新作にも期待したい。

『ライゾマティクス_マルティプレックス』 Daito Manabe + Yusuke Tomoto + 2bit《chains》2016年 Exhibition view: "GLOBALE: New Sensorium - Exiting from Failures of Modernization" Courtesy of ZKM | Karlsruhe  Photo by Tobias Wootton and Jonas Zilius [参考図版]

人とテクノロジーの関係を探求し続けているrhizomatiks(ライゾマティクス)は2021年で結成15周年。広告や建築、デザインなどのジャンルを軽々と超えた表現活動を行っている彼らは、Perfumeやビョークとのコラボレーションなどで世界的に注目を集めている。この記念すべき年に東京都現代美術館で開催される『ライゾマティクス_マルティプレックス』(3/20~6/20)は、美術館における初の大規模個展となる。

『マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在』 マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》2017-19年 Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp, Tanya Bonakdar Gallery, New York and Gallery Koyanagi, Tokyo Photo: Maris Hutchinson

そして、同期間に東京都現代美術館で開催されるマーク・マンダースの個展『マーク・マンダース —マーク・マンダースの不在』(3/20~6/20)も見逃せない。マーク・マンダースは彫像に言葉、家具を組み合わせたインスタレーションで知られる作家。作品が置かれた展示空間の張り詰めた雰囲気はこの作家にしか作り出せないものだ。ちなみにマーク・マンダースは、現在金沢21世紀美術館で、ミヒャエル・ボレマンスとの2人展『ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブルサイエンス』も開催中だ(~2/28)。

【TOPIC8】
建築&デザインだって刺激的!

『佐藤可士和展』 グローバル旗艦店「ユニクロ ソーホー ニューヨーク店」 屋外広告(工事中店舗の仮囲い)、2006年

建築家やクリエイティブ・ディレクターの回顧展が多いのも2021年の特徴。東京国立近代美術館で開催予定の『隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則』(6/19~9/26)では、新国立競技場をはじめ、様々な名建築を手掛けた隅の真髄に迫る。また、国立新美術館の『佐藤可士和展』(2/3~5/10)は、ユニクロや楽天など誰もが知っている企業ロゴやブランディングを手掛けているクリエイティブ・ディレクター・佐藤可士和の仕事を振り返るもの。会場内の特設「UT STORE」で販売されるTシャツのデザインも気になるところだ。

『イサム・ノグチ 発見の道』チラシビジュアル ©2020 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/JASPAR, Tokyo E3713 Photo©二川幸夫

また、東京都美術館で開催される『イサム・ノグチ 発見の道』(4/24~8/29)は、光の彫刻「あかり」など約90件の作品が集結する展覧会。インテリア好きの人も楽しめる展覧会になりそうだ。

【TOPIC9】
やっぱり巨匠たちの絵画が見たい!

海外の巨匠のたちの名画は2021年も続々と来日予定。『マティス 自由なフォルム』(9/15~12/13、国立新美術館)は、マティスが晩年になり積極的に取り組んだ、色が塗られた紙をはさみで切り取り、それを紙に貼り付ける「切り紙絵」に焦点を当てるもの。マティスの自由で伸びやかな形がどのように生まれたのかを切り紙絵をはじめ、数々の作品とともにたどっていく。また、マティスが最晩年に取り組んだヴァンスのロザリオ礼拝堂の室内装飾や祭服、習作のステンドグラスなども展示される。

このほか、東京都美術館では『ゴッホ展(仮)』(9/18~12/12)、三菱一号館美術館では『イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜―モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン(仮)』(10/15~22年1/16)などが開催される予定。忙しい芸術の秋になりそうだ。

【TOPIC10】
芸術祭もますますパワーアップ!

「東京ビエンナーレ」ロゴ

2020年は、新型コロナウイルス対策のため、開催が延期されてしまった芸術祭が続出。そのため、2021年はいつも以上に芸術祭が多く開催される年となる。まず、昨年開催予定だった、「東京ビエンナーレ」「いちはらアートミックス」「奥能登国際芸術祭」「北アルプス国際芸術祭」がそれぞれ開催。1年寝かせたおかげで、より充実した内容が期待できそうだ。さらに、「越後妻有トリエンナーレ2021」、「中之条ビエンナーレ」」も通常通り開催予定だ。そして、2021年初登場の「北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs」は、日本初のSDGsをテーマにした展覧会で、落合陽一や片山真理らの参加が予定されている。

とにもかくにも、今年は無事に開催できることを祈る!

まだまだ予断を許さない状況であるものの、2021年も心ときめく展覧会が目白押し。事前予約制をとる美術館が増えているが、人数制限が行われるためより安全に、快適に鑑賞が可能となっているともいえる。事前にHP等で会期や予約の要不要などを確認し、マスク着用など感染症対策もしっかりとしてから出かけよう。

文:浦島茂世

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