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YURiKA×大原ゆい子ジョイントライブレポ 物語と楽曲があいまった新しい音楽表現

リアルサウンド

19/7/4(木) 19:00

 アニソンシンガーのYURiKAとシンガーソングライターの大原ゆい子による、『YURiKA×大原ゆい子ジョイントライブ「LIVE THE MOVIE」』が、6月15日と16日に東京・浅草花やしき 花劇場で開催された。それぞれがホストを務め、撮り下ろしのショートムービーと共に楽曲を披露するというライブで、15日はYURiKAがホストを務めてドキュメンタリームービーを上映した。一転、大原がホストを務めた16日は、上白石萌歌が主演のオリジナル短編恋愛映画『月より綺麗だった』を上映。このために書き下ろした楽曲「月より綺麗だった」も披露される特別な内容になった。青春時代のほろ苦さがよみがえる物語と楽曲があいまった、新しい音楽表現でファンを魅了するステージになった。

大原が示した新たな音楽表現 

 映画『月より綺麗だった』は、人気の若手女優=上白石萌歌が主演、井上雄太が相手役を務めた。この1日限定の上映で、DVD化の予定もないとのこと。観ることができたファンは、実に貴重な経験をしたと言える。物語をざっくり話すと、こういった内容だった。

 上白石が演じる主人公が路上でギターを弾いていると、井上演じる青年から8ミリフィルムで撮らせてほしいと声をかけられる。最初は戸惑っていた主人公だったが次第に打ち解け、それぞれの夢を打ち明け合うような仲になる。主人公の夢はシンガーソングライターで、青年は映画監督だった。数年後、主人公はまだ路上でギターを弾いていた。そこにふと現れた青年は、スーツ姿だった。久しぶりの再会に最初は話が弾んだ二人だったが、夢を諦めた彼にどこか寂しさを感じる主人公だった。自分ももうあきらめようか。そんな風に考え始めた主人公の携帯に、青年から1本のムービーが届いた。それは数年前に撮った8ミリを動画に編集したもの。再生すると、そこには嬉しそうな表情でギターを弾きながら夢を語る、キラキラとした主人公の笑顔があった。そのムービーの中で主人公は一曲の歌を書き上げる。タイトルは「月より綺麗だった」。その歌は、過ぎ去った二人の日々を切なく歌い上げる曲だった。

 映画はシーンごとに分割され、映画、歌、映画、歌という風に順番に披露され、楽曲の歌詞が主人公の心情とシンクロしていくといった展開だ。二人の出会いのシーンには「時のミラージュ」があてられ、まるで暗闇だった世界に光が差し込んでいくような雰囲気になった。「言わないけどね。」では、主人公の淡い恋心が表現された。8ミリに収められた、主人公のくったくのない笑顔や素の表情が、楽曲の軽やかさといたずらっぽさにマッチしていた。ミディアムバラードの「ユビオリ」は、離れていってしまった彼を、今も愛おしく感じている様子が歌われた。しっとりとしたサウンドと、儚く響く大原の歌声が、物語の切なさをより引き立てていた。悲しみを乗り越えようとする主人公の心情は、「光の淵」で表現された。〈夢なら一雫 こぼれて 運命が変わるのにね〉という詩的なフレーズが、苦しい気持ちを代弁しているようで、それに反して決して暗くはないサウンドが、余計に気持ちを切なくさせた。そして物語の最後には、このために大原が書き下ろしたという「月より綺麗だった」が歌われた。バンドサウンドのミディアムバラードといった雰囲気の楽曲で、大原はアコギを奏でながら歌った。しんみりと、しかしどこか力強く清々しさもある曲だ。青春時代の美しい思い出を胸にしまい、また前を向いて歩いて行く……。誰もが上る大人への階段。そこには、一生のうちのほんのわずかな期間だからこその美しさがある。そんな風に思わせてくれる曲だった。音源化は未定とのことなので、もしまたどこかで聴く機会があれば、それは貴重な機会となるだろう。

初もの尽くしでドキドキのライブ 

 中盤は、ゲストのYURiKAがライブを行い、「ここからは私が盛り上げ番長として頑張ります!」と、アッパーなナンバー「Dive into the colors」や「AKATSUKI DEPARTURE」などを歌い、しっとりしたムードを吹き飛ばした。さっきまで椅子に座って、じっくりと鑑賞していた観客も、ここでは立ち上がってサイリウムを振り、かけ声をかけたりジャンプをしたりして盛り上がる。YURiKAのアグレッシブなパフォーマンスで、客席の温度もみるみる上昇していった。そこへ呼び込まれた大原。「超あたためておきました」と笑うYUiKAに、「熱々ですね!」と返す。二人のトークは実にリラックスした雰囲気だ。音楽性もキャラクターも異なる二人だが、むしろそれがいいのか、実に仲の良い様子がステージの二人の様子から感じ取れた。

 このジョイントライブでは前半の趣向を始めとして、初披露ものが実に多く、大原は緊張の連続だっただろう。15日にYURiKAが、大原の「言わないけどね。」をカバーしたことを受けて、大原はこの日YURiKAの「ふたりの羽根」をカバーした。歌い始める前は「ドキドキする〜」と、緊張感をあらわにしていた大原。しかし歌い始めると、不安はどこへやらで、勢いのあるバンドサウンドに乗せて爽快な歌声を響かせた。観客はそれに合わせて、ジャンプや手拍子で彼女の歌を盛り上げた。最後にはサインボールを客席にバットで打ち込むというパフォーマンスもあり、これには観客も嬉しそうにボールを追いかけていた。歌い終えるとホッとした様子で、「歌うのが、すごく難しかったです。YURiKAさんは、これを何で普通に歌えるんだろう? 私は男性キーに変えても難しくて……」と、カバーした感想をもらした。

 また7月17日にリリースする新曲の「ゼロセンチメートル」を披露するときも、大原はドキドキしている様子だった。と言うのも、フルサイズを生で披露するのは、この日が初めてだったとのこと。今年7月から放送されるアニメ『からかい上手の高木さん2』のオープニングテーマで、爽やかさと心地よい胸キュン感のあるポップなナンバー。歌詞の端々から、アニメの高木さんと西片くんの微妙な距離感が想像され、大原のピュアさのある歌声と相まって、聴いているこちら側がドキドキした。観客もリズムに乗せてゆっくりと身体を揺らし、でも耳に意識を集中して楽曲に聴き入っていた。歌い終え「新曲も無事お届けできて、すっきりしました〜(笑)」と、笑顔が戻った大原に大きな拍手が贈られた。

 大原の原案を元にしたショートムービーを観ながら、セリフやサウンドトラックの代わりに楽曲を聴く。しかも新曲まで。新しい手法で魅せた前半のステージ。アニメや映画の音楽制作の方法に、実際に映像を観ながらリアルタイムで音楽を付けていく「フィルムスコアリング」というものがあるが、どこかそうした生感と臨場感が感じられた。単に映像を観ながら歌を聴くだけでなく、セリフを想像するという楽しみもそこにはあったと思う。キャスティングと映像の雰囲気も大原の声や楽曲ともぴったりで、彼女の音楽の世界観が五感で感じられるものだった。

(文=榑林史章)

大原ゆい子 オフィシャルサイト
YURiKA オフィシャルサイト

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