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シム・ウンギョン“最初の日本映画”が公開に。「さまざまな女性像を表現したい」

ぴあ

21/4/9(金) 12:00

シム・ウンギョン 撮影:源賀津己

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昨年の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた『新聞記者』、個性豊かな女優陣の活躍が話題を呼んだドラマ『七人の秘書』、そして香取慎吾演じる主人公の“元相棒”を演じ、最終回まで多くの視聴者を熱狂させた『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』など、話題作への出演が続くシム・ウンギョン。そんな彼女が日本で最初に撮影に挑んだ映画『椿の庭』が公開を迎える。数多くの広告写真を手がけてきた上田義彦の初監督作品であり、富司純子と共演を果たした本作での忘れ難い経験について、シムが語ってくれた。

上田監督のオリジナル脚本で葉山の海を見下ろす古い日本家屋に暮らす老女・絹子とその孫娘の姿を描く本作。シムは絹子の亡くなった娘の忘れ形見であり、絹子と一緒に暮らす孫の渚を演じている。

「最初にお話をいただいたときは、“上田さんは私のことをどうやって知ったんだろう?”って思いました(笑)」

クランクインは2018年の4月で、『新聞記者』や2019年公開の『ブルーアワーにぶっ飛ばす』よりも前のこと。当初、上田監督は渚を14歳としていたそうが、シムを見て年齢設定を変えたという。映画の中で、渚の母が既に亡くなっていること、渚が日本語を勉強中であることなどが示されるが、その生い立ちや絹子と暮らすことになった経緯について詳しく説明されることはなく、観る者の想像に委ねられている。

実際、現場でも上田監督から詳しく渚について説明されることもなく、シム自身も作りこみ過ぎることなく、まっさらな状態で現場に赴いたという。

「準備の段階でも撮影現場でも、上田さんは“渚はとてもピュアな存在。ウンギョンさんは渚と似たものを持っているから、そのままカメラの前に立って自由に演技してくれれば、それがどんなものであっても、僕がフォローしてカメラに収めます”とおっしゃってくださいました。普段はどの作品でもきっちりと役作りをした上で現場に入るのですが、この作品に関しては自然な感じ、自由さを見せたかったんです。お芝居なのか? 素なのか? という不思議さが見せられたらいいなと思っていました」

シムはこの作品を「自然とそれに合わせて暮らす人たちの人生――人生の“儚さ”について語っている映画」と語る。そこにあるのは決してネガティブな思いばかりではない。

「映画では、絹子さんがずっと住み続けてきた大切なおうちをどうするのか?ということが描かれていますが、どんなものでも、そして人間も、生まれて、そしていつかは消えていくわけですよね。その儚さと切なさがある一方で、映画では渚という“これから”を象徴する存在がいて、彼女がこれから自分の人生を歩んでいくというメッセージも伝わってきます。そうやって人生が回っていくということ、めぐり合わせが描かれているなと思います」

映画を観ると、ワンシーン、ワンシーン、本当に丁寧に大切に撮影したことがひしひしと伝わってくる。シム自身、現場で上田監督の撮影に驚かされることが多々あったという。

「私の出ているシーンではないんですが、鈴木京香さん演じる陶子さん(渚の叔母)が窓を閉めたおうちのリビングに座っているシーンで、すごく暗い空間に雨戸の隙間から繊細な光が差し込んでいるんですけど、監督は何度も何度もそのシーンを撮り直されていたんです。最初、私は“何が違うんだろう?”と思って見ていたんですが、本当に目を凝らして見ないと分からない映像の繊細さが、近くで見せていただいてやっと見えてきて――そこで見えてくる鈴木さんの切ない表情であったり、風景はすごく印象的でした」

劇中の絹子と渚の関係そのままに、現場では富司純子から学ぶことも多かった。

「渚は、絹子さんがいなければ演じられなかった役柄だと思います。実際にご一緒させていただいて、富司さんの演技への熱量、この作品への思いというのは本当にすごかったですし、現場での富司さんの佇まい、そして絹子さんとしてのお姿も本当に美しくて……。渚がピュアな“鏡”のような存在になれたのは、富司さんのおかげです」

本作に参加後も、『ブルーアワーにぶっ飛ばす』、『新聞記者』、さらに舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』、そしてドラマ『七人の秘書』、『アノニマス』と日本を拠点に精力的に活動してきた。以前から日本の社会や文化に親しみを抱いていたが、実際に日本で暮らし、創作に参加する中であらためて日本の社会、そして自分自身に対しても新たな“発見”があったと振り返る。

「よく日本の社会について“本音と建て前”ということが言われるじゃないですか。以前は私もどこかでそういうものがあるんだろうという偏見を持っていたかもしれません。でも実際に日本の方々と接してみると、みなさん本当に素直でピュアな方が多かったんですね。あらためて“日本だから”とかそういう(属性による)ものじゃなくて、人それぞれ、ひとりひとり違うんだという当たり前のことに気づかされました」

「女優としてという部分では、私にとって日本語は外国語ですから、その勉強のためにも台本を読むということを何度も繰り返していたんですが、そうしているうちに“あぁ、お芝居ってやっぱり台本なんだ”ということにあらためて気づかされました。作品で一番大事なのは台本であって、台本に全てが書かれている――何度も繰り返し読む中で、新たなアイデアが沸いてきたり、キャラクターを深く理解することができるようになって、逆に以前の自分は読み込みや努力が足りなかったなと反省しました(苦笑)。今もそうやって何度も台本を読むことは習慣になっていて、台本は役者にとって宝物なんだと実感しています」

本作を含め、これまでに公開、放送されてきた彼女の出演作を見ると、女性の描き方を大事にしている作品、物語の中で女性が重要な存在となっている作品が多いように思えるが、それは出演作を決める時点での彼女自身の意向なのだろうか?

「そうですね。意識的な部分は確かにあります。私は女性であり、この世界を女性として生きているひとりとして、もっと多様な物語の女性像を見たいなと思っていますし、だからこそ自分が演じる上で、さまざまな角度から考えて、個性や人間性を表現できたらと思っています。この先もいろいろな作品に挑戦し、個性豊かな女性の人生を演じることができたらと願っています」

取材・文:黒豆直樹 撮影:源賀津己

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『椿の庭』
4月9日(金)より公開
(C)2020 “The garden of Camellia” Film Partners

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