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豆柴の大群は、気づけば段々と癖になる“異端の中の異端”な存在? WACK所属グループの特色を分析

リアルサウンド

20/8/22(土) 10:00

 豆柴の大群(以下、豆柴)が10月7日リリースのAAAシングル『サマバリ』にて、エイベックスからメジャーデビューを果たす。昨年12月のデビューから約10カ月という異例のスピード。彼女たちの人気は当時から破竹の勢いであったが、今後さらに加速度を増してより多くの層に認知されていくこととなるだろう。

 豆柴がどんなグループであるかは、「『水曜日のダウンタウン』(TBS、以下『水曜日』)内のアイドルオーディション企画「MONSTER IDOL」から生まれたアイカ・ザ・スパイ、ナオ・オブ・ナオ、ミユキエンジェル、ハナエモンスター、カエデフェニックスの5人組アイドルグループ」「安田大サーカス・クロちゃんのプロデュースによってシングル『りスタート』でデビュー」が最も簡潔で適切だ。

 けれど、筆者は豆柴が“異端の中の異端”なグループだとも思っている。それは所属する株式会社WACKの中でも彼女たちが特異な存在であるからだ。BiSH、GO TO THE BEDS、PARADISES、BiS、EMPiRE、CARRY LOOSE、WAggと多くのアイドルを擁するWACKは、決して王道のアイドル路線を進むことなく、言わばそのカウンターとしてオルタナティブなライブ活動と音楽、プロモーションで現在の地位を確立してきた。その中でも突然変異的に誕生したのが豆柴。クロちゃんが命名したWACK唯一の漢字表記もそうだが、既存のバラエティ番組の中のアイドルオーディションから生まれたことは、異例中の異例。『ASAYAN』(テレビ東京)からモーニング娘。が生まれたのともまた違う、なかなかに前例のないパターンだ。

【豆柴の大群】 クロちゃん vs WACK YouTube対決結果発表

 結果的に、「クロちゃん×WACK(代表の渡辺淳之介)」の組み合わせは大成功した。グループ名発表とともに公開されたデビュー曲「りスタート」のMVは爆発的な再生回数となり、現在までに1300万回を記録している。作詞・作曲はクロちゃん、編曲はWACKの楽曲を手がけるサウンドプロデューサー・松隈ケンタ(SCRAMBLES)。当初、クロちゃんの歌詞にはダウンタウンの2人を始め、多くの視聴者が拒否反応を起こしていたが、『水曜日』ゲストに出演していた川谷絵音は早くからクロちゃんの歌詞を絶賛していた。そのグループ名然り、〈スキップしながら唾かけて〉(「りスタート」)など常人では綴ることの出来ない意味不明な歌詞は、一見敬遠してしまいそうになるが、気づけば段々と癖になっていく。それはまるで、多くのアンチを抱えるクロちゃんが裏を返せば誰もが認める絶大な人気者であることにも似ているのだ。

豆柴の大群「りスタート」MUSiC ViDEO

 さらに言えば、悪意の込められた演出や破天荒な企画で度々トラブルを巻き起こしてきた『水曜日』のディレクターで、古くからの渡辺の知り合いでもある藤井健太郎との相性も良かった。以前、彼にインタビューで豆柴が成功した要素を聞いた時に、企画「MONSTER IDOL」の物語の面白さというドキュメンタリー性に加え、「やっていること自体は僕らもWACKも“真ん中”っぽいことではない」と答えてくれた。つまりは異端。それはもちろん、芸人という中でのクロちゃんにも当てはまる。

 クロちゃんとWACK要素の塩梅も絶妙だ。6月にリリースされた1stアルバム『スタート』を例にすれば、「りスタート」「ドンクサハッピー」「ろけっとすたーと」のクロちゃんの作詞、作曲ソングがアルバムの最も盛り上がる3曲〜5曲目と立て続けに収録されている一方で、1曲目にはBiSHのライブチューン「BiSH~星が瞬く夜に~」を彷彿とさせる「豆柴の大群-お送りするのは人生劇場-」、2曲目にはスキャンダラスな話題を転じてネタにしてみせた「FLASH」、ラストには豆柴にとって初のWACKプロデュース曲「大丈夫サンライズ」が並ぶ。初心を忘れないようにと「大丈夫サンライズ」には「りスタート」の振り付けが取り入れられており、アルバム衣装には黒のWACK要素とダンスで腕を上げた際にメンバーのお腹が見えるというクロちゃんを笑顔にするポイントが隠されている。

豆柴の大群「大丈夫サンライズ」MUSiC ViDEO

 メジャーデビュー曲「サマバリ」もその大きな期待に応える強度を持った楽曲だ。1stアルバム『スタート』をドミノに見立てた「本物の豆柴が放たれた状態でドミノ倒しを完成させる」という番組企画の中で、メンバーも視聴者と同時に知ることとなったメジャーデビュー。話題性が先行している楽曲ながら、アラブの民族音楽を軸にサマーチューンとWACK要素をブレンドした曲調、〈エンドレスサマーバリケーション〉というクロちゃん本人もよく分かっていない(定まっていない)サビの歌詞を筆頭に、出だしから〈工事現場の カラーコーンを/ひっくりかえして/ソフトクリームのせてやるんだ/食らわせてやりたいから〉とクロちゃん節が炸裂している。ワールドワイドな衣装を着飾ったメンバーに、ランプの魔人となった真っ青なクロちゃん、贅沢にCGを使ったMVは、エイベックスのアーティストとして恥じない文句なしの仕上がりである。

豆柴の大群「サマバリ」MUSiC ViDEO

 また、豆柴はWACKで唯一、毎週体を張った企画に挑戦するYouTubeチャンネルに動画をアップしているグループでもある。「アイカに◯◯言われたら電流ビリビリ対決」「クロちゃんの口臭作ってみた」「落とし穴を自力で作ってクロちゃんを落とそう」と、まるで『水曜日』というバラエティ番組から誕生した宿命とも取れるが、先日公開されたメジャーデビューサプライズの様子など彼女たちの成長を追ったドキュメンタリー要素も多分にある。

 豆柴のことを思ってあえて厳しいことを言えば、彼女たちの課題はWACKの売りでもあるライブという経験がほかのグループに比べ圧倒的に乏しいことだろう。それは、もちろんこのコロナ禍に直面してしまったのが原因だ。

 そんな彼女達は今、TikTok主催の音楽フェスイベント「TikTok夏フェス2020」、所属レーベルエイベックス主催の大型配信イベント「a-nation online 2020」への出演をするなど、順調にライブイベントを重ねており、5月に行う予定だったマイナビ赤坂BLITZでの初のワンマンライブ『豆柴の大群のスタート』の中止を経て、10月24日には昭和女子大学人見記念講堂で1stホールワンマンライブ『豆柴の大群のりりスタート』でのライブが決まっている。「水曜日のダウンタウン」「クロちゃん」という肩書きが忘れられるほどの、名実ともに認められるアイドルグループになるため。豆柴の本当のスタートはこれからだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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