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『転スラ』『オーバーロード』『掟上今日子』……人気続くシリーズの共通項は? 文芸書週間ランキング考察

リアルサウンド

20/4/17(金) 12:00

週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(4月7日トーハン調べ)
1位 『転生したらスライムだった件(16)』伏瀬 マイクロマガジン社
2位 『クスノキの番人』東野圭吾 実業之日本社
3位 『オーバーロード(14)滅国の魔女』丸山くがね KADOKAWA
4位 『チンギス紀(7) 虎落』北方謙三 集英社
5位 『暴虎の牙』柚月裕子 KADOKAWA
6位 『流人道中記(上・下)』浅田次郎 中央公論新社
7位 『熱源』川越宗一 文藝春秋
8位 『ライオンのおやつ』小川糸 ポプラ社
9位 『リアデイルの大地にて(4)』Ceez KADOKAWA
10位 『掟上今日子の設計図』西尾維新 講談社

関連:【画像】『オーバーロード』『掟上今日子』などランクイン書籍

 4月の文芸書トーハンランキング、第1位はライトノベルのジャンルから『転生したらスライムだった件(16)』。WEBサイト「小説家になろう」から生まれた作品で、ゼネコン勤めの37歳・男性主人公が、通り魔に刺されて異世界のスライムとして転生する物語だ。スライムといえば水色のぷよぷよした物体として知られる、どちらかというと弱い生き物。だが、人間に擬態する能力を手に入れ、冒険を重ねるうちに強くなっていく……という物語。改稿されているとはいえ、WEBで完結したものが無料で読めるにもかかわらず、1位を獲得するというのは、魅了されているファンの多さを物語っている。

 4位『オーバーロード』も同サイト出身で、こちらも主人公は冴えないサラリーマン。やりこんでいたゲームに似た異世界にアバターのまま飛ばされてしまい、ヒーローになる……のではなく、見た目は骸骨の大魔法使いとして世界征服をもくろむ物語。累計800万部突破の人気シリーズ、2年ぶりの新刊だけあって堂々のランクインとなった。

 『転生したら~』の刊行開始は2014年、『オーバーロード』は2012年。それほど長いあいだ、情熱を絶やすことなく読者が新刊を待ち続けるだけの魅力が、両作にはあるということである。

 待つ、というのは体力が要る。だが、待っているあいだに繰り返し既刊を読み返し、登場人物への考察を深め、いまだ“語られていない”事象に思いを馳せて、先を想像するのは幸福な時間でもある。だから、共感するにせよ反発するにせよ、愛着をもたせられる人物造形と、適度に謎をちりばめた物語運びが、愛されるシリーズものには不可欠だ。

 10位にランクインした『掟上今日子の設計図』も、そんな愛されるシリーズの12作目。総白髪で眼鏡をかけた美しき掟上今日子は、冴えわたる推理力をもちながら1日で記憶を失ってしまうという忘却探偵。毎回、彼女が1日というタイムリミットで事件を解決できるか、その頭脳戦を描いていくのだが、彼女の寝室の天井に何者かがペンキで書いた「お前は今日から、掟上今日子。探偵として生きていく。」という文字の謎も大枠の物語として存在している。ちなみに、今作で爆破予告に挑む今日子に課せられた猶予は、たった9時間。史上最短で事件解決となるか?

 巻数の多いシリーズものはなかなか手を出しづらいが、自粛生活を余儀なくされる今は、チャレンジしてみる絶好の機会かもしれない。しかしいきなり10作以上あるものを読み始めるのは躊躇われる、という人には5位の『暴虎の牙』が最適だろう。日本推理作家協会賞を受賞し、役所広司や松坂桃李が出演し話題を呼んだ映画『孤狼の血』からはじまる三部作の完結編。広島に生きる刑事とヤクザの抗争を描いた警察小説だ。『孤狼の血』の舞台は昭和63年だったが、『暴虎の牙』では暴力団対策法が成立した平成16年に時代を移し、広島県警最凶の敵との対決と、男たちの生き様を描き出す。今回紹介した作品はすべて、アニメ化・ドラマ化などメディアミックスをしているので、原作と違いを比べながら世界観にどっぷり浸かってみるのもいいだろう。

 なお、4月第一週の文芸書トーハンランキングは、本屋大賞と同日の発表となったため、大賞を受賞した凪良ゆう『流浪の月』はランク外となった(2月のランキングには名を連ねていた)。が、今後、順位をあげてくることは確実なので、こちらも余談として紹介しておく。

(文=立花もも)

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