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ONE OK ROCK、コロナ禍に30万人YouTubeチャンネル登録者数増加 コンテンツを通して作り出した“ファンとの繋がり”

リアルサウンド

20/6/5(金) 12:00

 アーティストのライブ活動に制限がある中にも関わらず、SNSのフォロワー、そしてYouTubeのチャンネル登録者数を以前の数倍のペースで伸ばしているONE OK ROCK。

(関連:ワンオク、コンテンツで強化した“繋がり”

 YouTubeに関しては数字がより顕著で、これまでは平均で月に5万人ペースで増やしていたチャンネルが、新型コロナウイルスの影響が広がった4月に入ってから6月1日の朝まで、つまりこの2カ月間に30万人ものYouTubeチャンネル登録者を増やしました。

 これまでのペースの3倍の勢いで、一気にチャンネル登録者数を増やした彼ら。

「ONE OK ROCKが人気だから?」
「ライブ映像を公開していたから!?」

 そう思ったかもしれません。でも彼らにはそれだけでは終わらない明確な目的と手段があります。なぜ増え、なぜそうしたのか。見えてくる彼らの向かう未来を探りましょう。

 まずは概要としてInstagram、Facebook、Twitter、YouTubeチャンネル登録者、Spotifyアーティストページフォロワーの相関関係を見ていきましょう(Instagramは各メンバーのアカウントは集計に入れずアーティストオフィシャルのみ)。

 YouTubeのチャンネル登録者数とSpotifyのフォロワーが同一バランスに保たれるストリーミングに強いアーティストの特徴が出ています。Official髭男dismもKing GnuもMrs. GREEN APPLEもこのバランスです(松島調べ)。

 では今年に入ってからのInstagram、Twitter、YouTubeの増減です。

 こうやって見ていくと、明らかに伸び率が今年のある時期を境に変わり始めます。緊急事態宣言が発令された4月16日前後ですね。

 ここまで変わった大きな理由はワンオクファンの皆さんはご察しの通り、4月17日を皮切りに過去のライブ映像6作品をYouTubeでプレミア公開した結果が大きいでしょう。

 それでは、もう少し細かくYouTubeの登録者数を見ていきましょう。

 それぞれライブ映像6作品公開のタイミングを重ねるとこのようになります。公開の前後で確実に伸ばしていることが明確です(#04 5月14日の公開以降の伸びが中でも顕著なのは、16日の「完全在宅Dreamer」の公開もあると思われます)。

ではここまで一気に登録者数を増やすことに成功したのは何故でしょう。理由は下記2点と推測します。

・2カ月間に渡ってコンスタントに6作品を公開するという手段をとった
・アーカイブしないという方法をとりチャンネル内部&外部に誘導させた

 一気に「ライブ映像を全解禁!」という手段をとらなかったのが最大の勝因です。一過性の盛り上げ施策が継続的なデジタルプラットフォームでのプロモーションに向いていないことは明確です。ONE OK ROCKはストリーミングでの成功体験からエンゲージメントがいかに大切かを学び、2カ月間コンスタントに動画を公開し、視聴者を外部サイトに誘導し、ストリーミング向けにプレイリストを公開し、前後で盛り上げ、ファンやメディアで話題が継続することを選びました。

 実際に配信された動画でも右上には「Listen / Buy」カードが設定されており、クリックすると外部のスマートリンク(各種ストリーミング配信サービスへの集合リンク)、そしてアミューズ公式オンラインショップである「A!SMART」のツアーBlu-rayの物販サイトへ遷移する設定がされていました。アーカイブもされない配信だったので、見終わった感動の続きはチャンネル内の回遊と外部遷移に徹底されていました。

 また毎回生配信後、ストリーミングサービスで疑似体験できるセットリストプレイリストを公開。都度6公演分公開されています。ストリーミング数を増やす方法のエンゲージメントとしても成功しています。

 さてこれから何が見て取れるでしょうか。そう、「ライブ映像を見て自分たちとエンゲージメントしてほしい」ということだけが目的ではなかったのです。ライブ映像を見てもらうことはあくまで手段。継続的に公開することも同じく単なる手段です。

 自分たちと音楽の繋がりをもってもらう、ライブでのハッピーな気持ちを思い出してもらう。そしてYouTubeでMVを再度見てもらったり、YouTube Musicから楽曲を聴いてもらう。Blu-rayにも遷移し物販購入してもらう。またApple Music、Spotify、LINE MUSICをはじめとするストリーミングサービスでも楽曲を聴いてもらう。

 YouTubeはすでに各所で言われている通り、単なる動画配信プラットフォームではありません。特にアーティストにとってはソーシャルコミュニケーションチャンネルであり、収益元であり、外部誘導できるプラットフォームでもあります。

 YouTubeは多くのスマホを所持している人にとって毎日立ち上げるアプリであって、そこに届けられるファンが確実にいる状況。30万人増えて317万人になったYouTubeの登録者、この317万人に向けて今後のONE OK ROCKの新作を知ってもらう、その「繋がり」を作る。それこそが今回の最大の目的だったのではないでしょうか。未来にエンゲージする「繋がり」を確保したのです。

 今後しばらくは大きなライブ会場での公演は見通しが立っていません。そんな中でもアーティストは楽曲をリリースします。

 アーティストのリリースする新作を聴いた後、ファンは喜びで気持ちが高まります。でもそれだけではありません。何度も聴き、MVを見てまた高まる。そして、その先の実体験として、

・ライブで聴く
・フェスで聴きみんなで盛り上がる
・TVで見る・流れてくる
・TikTokで見る
・カラオケで歌う

 といった様々な実体験と結びついて、記憶にポジティブに定着し、再度聴くことで感動が深まる。そんな生活に動画と音楽ストリーミングが常に寄り添う。

 しかしどうでしょう。今は“実体験”で抜けてしまうピースがある。アーティストはそれをなんとしても埋める必要があるのです。

 新作を出したときに、ライブで、フェスで聴いているようなポジティブな気持ちをファンにどう持ってもらうか。過去のポジティブな記憶を通したファンとの「繋がり」、その気持ちを新作でも持ってもらえるような「繋がり」、新作を出すときに真っ先に知ってもらう「繋がり」、繰り返し聴いて愛してもらえるような「繋がり」。アーティストが今できることとして、そんな未来への「繋がり」に投資したのがONE OK ROCKです。

 ファンの皆さんは今後出る新作を聴いたときに、ポジティブな記憶と共に聴けますか?
皆さんの答えは明確ですよね。

 そう、であれば彼らの試みは成功なのです。(松島 功)

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