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LAMP IN TERREN、活躍の場を広げるボーカリスト・松本大の表現力 豊かな感情描写と歌心は『FRAGILE』でどう進化する?

リアルサウンド

20/10/7(水) 18:00

 LAMP IN TERRENのボーカル&ギター、松本 大。ここ最近、彼の名前を単独で見かける機会が増えてきた気がする。一番目にする機会が多いのは、「FM802弾き語り部」部長としての活動。「弾き語り部」はコロナ禍においても(オンライン含め)ライブを積極的に開催しているほか、以前「弾き語り部」で共演したビッケブランカの新曲「Little Summer」にも松本は参加している。それとは別に、東海オンエア・としみつの配信に出演していたのも記憶に新しい。としみつとの配信では弾き語りを披露していて、元々LAMP IN TERRENのことを知らなかった人の関心も集めていた。

ビッケブランカ / 『Little Summer』(Studio Live Video)

 このように、松本の歌がバンドの外側にも波及し始めている現状がある。松本の歌声はハスキーボイスにあたり、「ガラッとした」と形容できるようなノイズがわずかに混ざっている。声質に関しては天性のものとしか言いようのない部分もあるが、松本の場合、生まれ持った才を活かしながらも、自身の感情をボーカル表現に落とし込むことを大事にしているように見える。その突出した感情表現こそが、多くの人の心を掴む鍵となっているのではないだろうか。

 松本の歌に初めて触れる人にとって、最もインパクトに残るであろう要素は、地声による高音域の発声だろう。一番分かりやすいのは「innocence」(2016年)。サビで張り上げられた高音は獣の咆哮に近く、この声に胸を深く抉られた感触を覚えたリスナーも少なくないのでは。この発声は比較的多く見られるが、前出の「innocence」や「New Clothes」(2018年)のような自己を巡る葛藤が描かれた曲、および、ライブというシチュエーションとの相性が特に良い。

LAMP IN TERREN 劇場2部「亜人 -衝突-」主題歌「innocence」
LAMP IN TERREN「New Clothes」Music Video

 “声が良い”とか“歌唱力が高い”というのは、もちろんボーカリストにとって軽視できない要素だが、加えて、ロックバンドのフロントマンにとっては、“感情に訴えかけることができる”というのも非常に大事なポイントだ。だからこそ“歌い叫ぶ”みたいなスタイルに偏ってしまう恐れが出てくるものだが、松本の表現はそこに留まらず、多岐にわたっている。例えば、「花と詩人」(2018年)のAメロのように、ハスキーボイス特有の歪みをあえて抑え、声の空気成分を増やすことで、やわらかに聴こえさせている曲もある。また、「heartbeat」(2016年)のように、同じhiB♭でも地声で歌ったり裏声で歌ったりすることで、ニュアンスの違いを出している曲がある(サビを聴き比べてみてほしい)。「地球儀」(2017年)はダンサブルな曲調だが、メロディはぶつ切りにはなっておらず、サビの歌唱からは大きなフレージングを感じる。このバンドの真ん中には“歌心”があるのだと改めて実感させられた。

LAMP IN TERREN「花と詩人」Music Video
LAMP IN TERREN「heartbeat」Music Video
LAMP IN TERREN「地球儀」Music Video

 切迫感のあるアッパーチューンから穏やかなバラードまで。様々な色を持った曲それ自体に寄り添うように、松本の歌もまた、様々な表情を見せている。ここまで紹介した曲のリリース年も明記しているのは、その時々での課題と挑戦が各曲から見えるからだ。そして、積み重ねが実を結び始めたのが、おそらく2019年だったのだろう。この頃に発表された曲は特に覚醒ぶりが凄まじい。個人的にハッとさせられたのは、「ホワイトライクミー」のクライマックス、上昇するメロディに息が吹き込まれていく箇所(3:50~3:58)。それから「ほむらの果て」のAメロは、打ち震えているみたいに抑制を効かせた歌い方。ある種のゾーンに入り始めたような手応えも感じるし、だからこそ「まだまだ伸びしろがありそう」と思わされたりもする。

LAMP IN TERREN – ホワイトライクミー (Official Music Video)

 そんなタイミングでリリースされるのが、ニューアルバム『FRAGILE』。発売日はいよいよ1週間後だ。同作からはすでに2曲が先行配信されていて、その2曲からは、歌とバンドの結びつきがさらに固くなったことが窺える。まず、「Enchanté」は、1番サビに入るタイミングでDメジャーからBメジャーへーーつまり下に転調する珍しい構成。サビのボーカルの第一音はmid1D#と、LAMP IN TERRENの曲としては非常に低い音域であるため、下手を打てば埋もれてしまう恐れがある。しかし松本は低音もちゃんと鳴らせているし、ここで転調することによって、(Dメジャーのまま進む)ラスサビとの対比が鮮やかになっている。つまり、この采配は効果的に働いているということだ。インタビューによると、転調を提案したのは大屋真太郎(Gt)で、大屋自身にも「ただ、僕的にどうかな?って思ってたのが、LAMP IN TERRENには珍しくサビで歌メロが低いんですよ」という懸念があったとのこと(参照:SPICE)。それでも結果的に踏み切ることにしたのは、ボーカリストのことを信じられていたからなのかもしれない。

LAMP IN TERREN – Enchanté (Official Music Video)

 もう1曲の方、「EYE」には分厚いコーラスを重ねられているが、それにより、ボーカルの存在感がかえって際立っている(“影が濃いほど立体的に見える”に近い現象か?)。この曲で歌われている“自己の肯定”というテーマは、前アルバム『The Naked Blues』から表出しつつあったが、ゴスペル色の濃いアレンジにより、“人間賛歌”的な意味合いを含むようになっている。LAMP IN TERREN史上最も懐の大きな曲に仕上がっているのではないだろうか。また、「EYE」は先日MVが公開されたばかり。人を孤独にさせるのは人だが、人を孤独から救うのも人。そんなことを伝えてくれるような群像劇風の映像作品だ。ちなみに、MV内の重要人物・カメラを構える男を演じているのは、松本の友人で俳優の永嶋柊吾。

LAMP IN TERREN – EYE (Official Music Video)

 歌が確かだからこそ、バンドが自由になれる。バンドが確かだからこそ、歌が自由になれる。ここ最近のLAMP IN TERRENからは、そういったバンド内での相互作用・好循環が感じられる。なお、黄色が鮮やかな『FRAGILE』のアートワークは松本自らキャンバスに描いたもの。さらに、米津玄師の最新アルバム『STRAY SHEEP』収録曲「ひまわり」にギタリストとして参加していたり、舞台『世界が消えないように』で演劇に初挑戦する予定(6月上演予定だったが延期に)だったり……と、松本は活動範囲を“歌”に限らず、様々なフィールドに飛び出していっているところだ。その経験により、松本はいち表現者としてさらに成長していくことになるだろうし、その成長は、歌にも、そしてバンドにも良い影響を及ぼすはず。それを楽しみにしつつ、ひとまず今は目前に迫った『FRAGILE』の到着を待ちたい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

■リリース情報
 LAMP IN TERREN『FRAGILE』
2020年10月14日(水)
初回盤【CD+DVD】¥4,500(tax out)
通常盤【CD】¥3,000(tax out)

<収録曲>
1. 宇宙船六畳間号
2. Enchanté
3. ワーカホリック 
4. EYE
5. 風と船
6. チョコレート
7. ベランダ
8. いつものこと
9. ホワイトライクミー
10. Fragile

<初回盤DVD収録内容>
『Live × Movie at Star lounge』
1. メイ
2. Water Lily
3. いつものこと 
4. 緑閃光
5. Is Everything All Right
6. キャラバン
7. 凡人ダグ
8. Beautiful
9. BABY STEP
10. Enchanté

「EYE」先行配信中 ダウンロードはこちら

LAMP IN TERREN – FRAGILE (Album Trailer)
LAMP IN TERREN – FRAGILE “Live×Movie at Star lounge” trailer
LAMP IN TERREN – 緑閃光 (Live×Movie at Star Lounge from “FRAGILE”)

<CDショップ先着予約購入特典(店頭・オンライン)>
・タワーレコード:各メンバー描き下ろしアナザージャケット(全4種類のうちランダム1種)
・一般CDショップ:オリジナルステッカー

<タワーレコード予約購入者対象イベント>
LAMP IN TERREN『FRAGILE』発売記念 スペシャルオンラインライブ『TOWER REPORT』
2020年11月12日(木)21時00分スタート

▼イベント参加方法
タワーレコード全店・タワーレコードオンラインにて、対象商品を10月31までに購入すると先着で「シリアルNo.付応募券」が受け取れる。
※応募券配布期間
2020年10月13日(火)~10月31日(土)23時59分まで
※店舗は10月31日(土)閉店まで/詳細はこちら

■ツアー情報
LAMP IN TERREN ワンマンツアー2020 『Progress Report』
10月24日(土) 千葉LOOK
10月26日(月) 東京・渋谷Star lounge
10月29日(木) 京都磔磔
10月30日(金) 香川・高松DIME
11月1日(日) 広島CAVE-BE
11月2日(月) 福岡DRUM Be-1
11月3日(火・祝) 長崎DRUM Be-7
11月7日(土) 宮城・仙台enn2nd
11月14日(土) 長野・松本ALECX
11月15日(日) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
11月22日(日) 大阪BIGCAT
11月23日(月・祝) 静岡UMBER
11月26日(木) 東京・渋谷Star lounge
11月28日(土) 岩手・盛岡the five
11月29日(日) 福島・郡山PEAK ACTION
12月5日(土) 北海道・札幌BESSIE HALL
12月6日(日) 北海道・旭川CASINO DRIVE
12月10日(木) 岡山IMAGE
12月11日(金) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
12月13日(日) 東京・LIQUIDROOM ebisu

チケット料金:全自由・前売¥3,900+1D

■関連リンク
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