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BTS、『MAP OF THE SOUL : 7』で辿り着いたグローバルポップスターとしての境地 キーワードは“多彩”と“進化”

リアルサウンド

20/3/5(木) 6:00

 BTSの最新アルバム『MAP OF THE SOUL : 7』は、デビューから7年を振り返り、世界に“見せたい自分”と今まで隠してきた内面の影、“目を背けたい自分”をすべて受け入れ、“完全な自分”を見つけた彼らの率直な気持ちを伝えるある種の内省的なリリックが印象的だ。しかし、その一方でサウンド面では、むしろ、自分たちのテリトリーの外に向けた音楽性を打ち出していることから、彼らのK-POPの枠を超えていこうとする姿勢を感じた。

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 そのための布石になっているのが、現行のポップス職人的ソングライターたちの複数起用であることがクレジットから見て取れる。

 『MAP OF THE SOUL : 7』では、エド・シーラン、トロイ・シヴァンといった世界的に知られる人気アーティストであり、非凡なソングライターだけでなく、現行ポップスシーンのヒット曲にかかわってきた多くのソングライターたちが楽曲制作に参加している。

 例えば、収録曲の「Moon」と「We are Bulletproof: the Eternal」にソングライターとしてクレジットされているDJ Swivelことジョーダン・ヤングは、エンジニアとしてカニエ・ウェスト、Jay-Z、Beyoncé作品にも参加する名手でありThe Chainsmokers「Closer」の共同プロデューサーとして活躍するなどポップスに精通したトップソングライターの1人だ。

 そのほかにもポップスターのホールジーを客演に迎えた「Boy With Luv」にクレジットされたエミリー・ウェイスバンドは、カミラ・カベロの楽曲制作を手がけたたソングライターであるなど、参加ソングライターの多くが世界に広がる起点となる欧米の現行ポップスシーンの制作現場と深いつながりを持っている。そのため収録曲も典型的なK-POPサウンドというよりは、近年のポップスのトレンドを全部のせしたかのような多彩なポップスの要素が見て取れる。

 その証拠に「Make It Right」がポップバラード、カリプソを取り入れた「Filter」がラテンポップス、「Inner Child」がシンセポップ、「We are Bulletproof: the Eternal」がポストEDM的なエレクトロディスコというように実にバラエティに富んでいる。K-POPスターとしてグローバルなポップスシーンの頂点を極めたBTSからすると、挑戦的な内容にも思えるが、むしろ典型的なK-POPの枠から飛び出すことによって、音楽的には既存のファン以外にリーチさせるためのタッチポイントが増えたことは間違いないはずだ。

 そのため端的にいえば、K-POPというよりは、”カッコいい洋楽”化したかのようなBTSの音楽性だが、これは決して没個性ではなく、むしろ現在のBTSの立ち位置に合わせた戦略的なサウンドの方向転換であり、彼らの“グローバルポップスター”としての進化を促した部分になった印象を受ける。

 また『MAP OF THE SOUL : 7』では先述の“多彩”、“進化”というキーワードが、彼らのシグネチャーサウンドのヒップホップ系楽曲にも反映されていることに注目したい。まず多彩という面では、一口にヒップホップといっても、Beastie Boys風のギターリフが鳴り響く90’sヒップホップスタイルの「Intro: Persona」、アンセミックなフェスティバルトラップの「ON」、『BTS WORLD OST』でコラボしたJuice WRLDらにも通じるエモトラップの「Black Swan」が収録されるなどその幅も広く、実にバラエティに富んでいる。

 一方、進化という面で筆者が特に注目したのは、ラッパーメンバーのユニット曲「UGH!」だ。同曲はシカゴ発祥のアンダーグラウンドなヒップホップのサブジャンルである“ドリル”風の楽曲になっているのだが、K-POP界隈で、“ドリル”が取り入れられることは非常に珍しい。グループ結成前からすでに韓国のアンダーグラウンドヒップホップシーンで知られた存在で、ヒップホップIQも高いラッパーメンバーのRMやSUGAがかかわる曲であるのでこのアプローチにも納得がいくが、これはK-POPシーンにおいても先鋭的な試みである。サウンドの可能性を広げるという意味でこのスタイルを取り入れたのは、BTS、K-POPの進化の扉を開いたに違いない。

 さらにバイリンガルリリックというベーシックな部分は保ちつつ、あくまでサウンドの可能性を拡張してみたこともBTSの進化を感じる部分であり、彼らが現在、ポップスの新らたな境地に辿り着いたことを示す証拠になるはずだ。(Jun Fukunaga)

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