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全米1位を獲得した最新作『マダムX』から紐解く、マドンナの“闘い続ける姿勢”

リアルサウンド

19/6/28(金) 19:00

 マドンナが4月にリリースした「Medellín (Madonna + Maluma)」は、コロンビアのレゲトンシンガー、マルーマとデュエットした官能的なラテンポップ曲。歌詞の序盤に〈あの頃は世間知らずでもよかった〉と17歳の頃を振り返るフレーズがあった故、もしかするとアルバムも自身の人生を回想するトーンになるかと思いきや、そこはマドンナ、そんなことはなかった。やはりマドンナは今を生きている。過去の何かにしがみついているところがまるでなく、自分がやったことのない音楽に挑戦し続けていて、新境地に思える曲が次々に出てくる。人々の求める“マドンナらしさ”に応えて得意なパターンの曲で“当てに”きても文句は出ないだろうし、むしろそっちを喜ぶ人も少なくないだろうが、60歳にしてそうした保守性が皆無だ。

Madonna, Maluma – Medellín (Official Music Video)

音楽の折衷によって醸し出される独特の趣と郷愁 

 4年ぶり、14枚目のオリジナルアルバム『Madame X』。サッカーの才能を発揮する息子デビッドのため2017年にポルトガルの首都リスボンに移住したマドンナが、ポルトガルの音楽とそこで日常的に聴いている音楽(サンバからレゲトンまで)の影響を受けてじっくり作り上げた力作である。プロデューサーは『MUSIC』(2000年)で大抜擢して以来付き合いの長いミルウェイズをメインとし、ほかにディプロ(メジャー・レイザーほか)、マイク・ディーン(トラヴィス・スコット、カニエ・ウェストほか)、ビルボード(ケシャ、アリアナ・グランデほか)ら。レコーディングはポルトガル、ロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスで行なわれ、ポルトガルではアフリカ系ポルトガル人シンガーのディノ・デ・サンティアゴがその地のミュージシャンを多数紹介するなど尽力したそうだ。

 2曲目「Dark Ballet」はホラーに合いそうなダークな前半からチャイコフスキーの「くるみ割り人形」をサンプリングした後半へと大胆に展開が変わる曲。次の「God Control」は「Like a Prayer」(1989年)を思い起こさせるゴスペル風の前半からハウスへと展開する曲。このように組曲的な作りの曲が明るいだの暗いだのポップだのアートだのといった評価基準を無効にしていて聴き応えあり。そしてアフリカンビートとマーチングバンド的な音とが混ざった上で女性たちが合唱する「Batuka」以降の曲では、カーボベルデの音楽だったりポルトガルのファドであったりがいろんな形で折衷され、哀愁や郷愁がいい塩梅に立ちのぼる。上述の大胆なる組曲的構成の面白さ、それと多文化の音楽の折衷によって醸し出される独特の趣と郷愁。それはこれまでのマドンナ作品になかったもので、まさしく新境地と言っていい。

Madonna – Dark Ballet (Official Music Video)

 マドンナの“闘い続ける姿勢”を明確に打ち出している歌詞

 歌詞はもう完全にマドンナが“今、言っておくべきこと”を歌っている。生き方や考え方を歌に込めるのは彼女が一貫してやってきたことだが、今作はこれまでで最も強く鮮烈なほどストレートに人種問題や銃社会に対しての自身の言葉を放っている。「Killers Who Are Partying」で、〈イスラム教徒が嫌悪されるなら、私はイスラム教徒になる。イスラエル人が去勢されるなら、私はイスラエル人になる〉と歌う。「God Control」では、〈無実の人の血がいたるところに広がる。私たちには愛が必要だと言っている〉と歌い、〈目覚めよ〉と繰り返す(先頃公開されたこの曲のMVは一人の襲撃者に多くの人が惨殺される様が描かれている)。「I Rise」は米フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件を題材にしたもので、銃規制運動を先導した同校の生徒エマ・ゴンザレスのスピーチから曲が始まる。社会と女性の地位の向上をハッキリと意識し、マドンナは闘い続ける姿勢を明確に打ち出している。自分が今も音楽を続けるのはそのためなのだと、そういう想いが伝わってくる。

Madonna – God Control (Official Music Video)

 20代のアリアナ・グランデや10代のビリー・アイリッシュともある意味競い合わなくてはならないのが“ポップミュージックの世界”と考えると、それは中々大変なことであるのは間違いないが、マドンナにはミュージシャンとして、女性としての“経験”がある。また、彼女はその使命感とプライドをはっきり持っていることが、この作品からわかる。だから衝動的に作るのではなく、マドンナはこの作品をとても丁寧に練り上げて完成させた。制作に要した期間は18カ月以上だったそうだ。よって、アルバムとしてのトータリティが圧倒的。曲順も練られ、壮大な物語を味わった感覚になる。

 なお、本作は全米アルバムチャートで堂々1位を獲得。マドンナにとって通算9枚目の全米1位で、それはバーブラ・ストライサンドの11枚に次いで女性アーティスト史上2位となる獲得数なのだそうだ。「Music」や「Hung Up」(2005年)のようなキャッチーな曲はないかもしれないが、それでこの記録を出してしまう。取っつきにくいなどと思わないで、どうか集中して何度か聴き返してほしい。そうすればマドンナのここ数作の中でも本作が抜きんでた傑作であることがわかるはず。経験を活かし、とにかく1曲1曲丁寧に作り上げたことの勝利であろう。

(文=内本順一)

■リリース情報
『MADAME X』
<通常盤>
価格:¥2,500(税抜)

<2CDデラックス盤>
価格:¥3,500(税抜)(初回生産限定/輸入国内仕様/日本盤のみSHM-CD/ハードカバー・ブック型パッケージ)

<アルバム収録曲>
※日本盤ボーナス・トラック
**日本&一部海外デラックス盤ボーナス・トラック

<CD通常盤>
1. Medellín (Madonna + Maluma)<シングル>
2. Dark Ballet
3. God Control
4. Future (Madonna + Quavo) 
5. Batuka 
6. Killers Who Are Partying 
7. Crave(Madonna + Swae Lee)
8. Crazy
9. Come Alive
10. Extreme Occident  
11. Faz Gostoso ft. Anitta 
12. Bitch I’m Loca ft. Maluma 
13. I Don’t Search I Find  
**14. Looking for Mercy  
15. I Rise  
※16. Medellín (Madonna + Maluma)(Offer Nissim Madame X in the Sphinx)

マドンナ ユニバーサル ミュージック ジャパン公式サイト

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