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『時をかける少女』4DX版はドラマへの没入感を高める タイムリープの浮遊空間を体験!

リアルサウンド

21/3/27(土) 8:00

 細田守監督のアニメ映画『時をかける少女』の4DX版が、4月2日から公開される。

 筒井康隆の同名小説を原作とする本作は、かつて大林宣彦監督によって実写映画化され、一世を風靡した作品だが、細田監督は新たな時代の物語として再構築。原作の約20年後を舞台とし、原作小説の主人公、芳山和子の姪である紺野真琴を主人公として新たな青春ストーリーを紡ぎあげた。

 2006年の公開時、封切り時はわずか6館のみの小規模公開だったが、口コミで人気が拡大しロングランヒットを記録。国内外で高い評価を獲得し、細田守監督のキャリアの転機となった。

 今回、公開から15周年、細田監督が設立したスタジオ地図10周年を記念して4DX版が公開されることとなった。色褪せない魅力を持つこの青春映画が、どのように生まれ変わったのか、一足早く体験させてもらったのでレポートをお届けする。

4DX演出が主人公のキャラクターを効果的に伝える

 4DXは座席の振動や傾斜、水の噴射や風の吹きつけなどによって五感に体感させる演出であるため、アトラクション性の強いアクション映画と相性が良いとイメージしている人が多いだろう。『時をかける少女』は青春ラブストーリーなので、ミスマッチではないかと思うかもしれない。

 だが、実際には4DXの演出は、映画のドラマ性を効果的に高めることもできると、本作を体感してもらえばわかるはずだ。

 冒頭、赤い水平ラインに向かっていくカットで座席は傾斜していく。徐々にクローズアップになっていくと、赤い線はデジタル数字の羅列であることがわかるが、その数字にダイブしてどこか知らない世界に連れ出してくれる感覚を、座席の傾斜によって味合わせてくれる。映画本編の始まりの高揚感を劇的に高める効果を発揮しているのだ。

 作品を通して最も激しく座席を動かしているのは、真琴がタイムリープする際に突入する異空間のシーンだ。現実から乖離した浮遊空間であることを体感させるために、4DXの座席の揺れ演出を用いて、初めて迷い込んだ空間での真琴の不安な真理を巧みに表現している。

 日常的なシーンでも、真琴の細かい動作に合わせて座席を動かすことで彼女の心情に寄り添う演出をしている。足踏みしたり、寝坊して飛び起きたり、ジャンプしたりと、活発な女の子である真琴の躍動感あるキャラクターを強化するうえで4DX演出が大きく寄与している。彼女のやや落ち着きのない性格を物理的に伝えることに成功しており、4DXがキャラクター描写にも用いることができることを証明していると言える。

 そして、本作の重要なシーンの一つである、自転車で商店街の下り坂を疾走するシーンでは、やはり座席の傾きでそのスリルを倍増させている。ブレーキの故障した自転車の恐怖をより強く表現して、ドラマへの没入感を高めており、映像だけでは味わえないスリルを提供してくれる。

動かせるからこそ動かさないことも演出になる

 これらの4DXの演出によって、肝心のドラマに集中できないのではと思う人もいるかもしれない。しかし、その心配はいらない。今回の演出は、作品のドラマ展開をきちんと踏まえた上で演出プランが練られており、物語やキャラクターの感情描写を妨げるようなことは決してない。

 例えば、終盤の重要なシーンとして登場する、時の静止した街で真琴と千昭が真相を語るシーンでは、気づきにくい程度に座席をゆっくりと動かす。ゆったりとした心地よさと、微妙なゆれでの僅かな不安定な感覚が、安定した現実とは異なる異空間であることを表現し、ドラマを盛り上げることに一役買っている。

 また、動かすばかりが4DXの演出ではない。動かすという選択肢があるからこそ、動かさないこともまた演出になり得る。緊張感あるクライマックスのシーンでは、むしろ座席を動かさずに、じっくりと映像に集中させようとする。この辺りの演出は、音響演出の考えと似ているかもしれない。数多くのトラックに音をとにかく入れれば、必ず効果的な演出ができるわけではなく、時には音を全て抜いて無音状態を作り出すことで、強烈な印象を与えるのも音の演出の醍醐味だ。4DX演出にも同じことが言える。動かすシーンがあるからこそ、動かさないシーンが映えるのだ。

 総じて、15年経っても色褪せない本作の魅力を、4DX演出陣はとても大切にしており、より深い魅力を引き出すことに成功している。何度も鑑賞している観客も新たな発見があるだろうし、まだ観たことのない人にとっては、スクリーンでこの名作を体験できるまたとないチャンスなので、是非とも劇場で体感してほしい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
『時をかける少女 4DX』
4月2日(金)より、全国4DXシアターにて期間限定公開
※一部劇場を除く
監督:細田守
原作:筒井康隆
脚本:奥寺佐渡子
キャラクターデザイン:貞本義行
美術:山本二三
作画監督:青山浩行、久保田誓、石浜真史
主題歌:奥華子「ガーネット」(ポニーキャニオン)
音楽:吉田潔
アニメーション制作:マッドハウス
配給:スタジオ地図LLP、ユナイテッド・シネマ
公式サイト:https://tokikake-4dx.com

<上映劇場>
北海道ユナイテッド・シネマ札幌
北海道シネプレックス旭川
宮城県イオンシネマ名取
宮城県109シネマズ富谷
東京都グランドシネマサンシャイン
東京都ユナイテッド・シネマアクアシティお台場
東京都ユナイテッド・シネマ豊洲
東京都シネマサンシャイン平和島
東京都ユナイテッド・シネマとしまえん
東京都イオンシネマシアタス調布
東京都109シネマズグランベリーパーク
神奈川県イオンシネマみなとみらい
神奈川県小田原コロナシネマワールド
千葉県ユナイテッド・シネマ テラスモール松戸
千葉県USシネマ木更津
千葉県USシネマちはら台
千葉県USシネマ千葉NT
埼玉県ユナイテッド・シネマわかば
埼玉県ユナイテッド・シネマ入間
埼玉県ユナイテッド・シネマ新座
埼玉県109シネマズ菖蒲
埼玉県イオンシネマ越谷レイクタウン
埼玉県ユナイテッド・シネマ春日部
茨城県ユナイテッド・シネマ水戸
茨城県USシネマつくば
茨城県USシネマパルナ稲敷
栃木県109シネマズ佐野
栃木県フォーラム那須塩原
群馬県ユナイテッド・シネマ前橋
新潟県ユナイテッド・シネマ新潟
静岡県シネマサンシャイン沼津
静岡県シネマサンシャインららぽーと沼津
愛知県小牧コロナシネマワールド
愛知県中川コロナシネマワールド
愛知県安城コロナシネマワールド
愛知県ユナイテッド・シネマ豊橋18
愛知県豊川コロナシネマワールド
三重県109シネマズ四日市
石川県金沢コロナシネマワールド
岐阜県大垣コロナシネマワールド
大阪府ユナイテッド・シネマ枚方
大阪府イオンシネマ四条畷
大阪府109シネマズ大阪エキスポシティ
京都府イオンシネマ京都桂川
兵庫県109シネマズHAT神戸
滋賀県ユナイテッド・シネマ大津
奈良県シネマサンシャイン大和郡山
奈良県ユナイテッド・シネマ橿原
愛媛県シネマサンシャインエミフルMASAKI
徳島県シネマサンシャイン北島
広島県福山コロナシネマワールド
広島県109シネマズ広島
鹿児島県シネマサンシャイン姶良
福岡県ユナイテッド・シネマキャナルシティ13
福岡県イオンシネマ筑紫野
福岡県小倉コロナシネマワールド
福岡県ユナイテッド・シネマ福岡ももち
佐賀県109シネマズ佐賀
長崎県ユナイテッド・シネマ長崎
熊本県ユナイテッド・シネマ熊本
沖縄県ユナイテッド・シネマPARCOCITY浦添

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