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赤い闇 スターリンの冷たい大地で

20/8/11(火)

デビット・リーン監督の名作『ドクトル・ジバゴ』の原作者ボリス・パステルナークと愛人オルガの共産主義との闘いと迫害をテーマにしたラーラ・プレスコットの『あの本は読まれているか』は、近現代史の暗部にメスを入れた優れた歴史ミステリー小説。エンタテインメントとしても超一級品で、一気呵成に読了した。 なぜ映画とは関係ない個人的な読書体験から書き始めたかといえば、本作『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』と『あの本は読まれているか』に多くの共通点があるからだ。 小説の背景は1950年代、映画のそれは1930年代と時代は異なるが、ともにスターリンの独裁政治の犠牲になった酷寒のウクライナが主要舞台として登場する。そして“冷戦”の始まりと終わりが詳しく描かれている点がその共通点だ。 1933年、ヒトラーに取材した経験を持つ若き英国人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、世界恐慌の嵐が吹き荒れるなかなぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのかという疑問を抱く。その謎を解くために単身モスクワを訪れたジョーンズは、当局の目をかいくぐって凍てつくウクライナの地を踏む。そこで彼が目の当たりにしたのは、想像を絶する悪夢のような光景だった……。 本作は実在したジャーナリスト、ガレス・ジョーンズが、ウクライナで起こっていた大飢饉を突き止め、世界中にソビエト連邦の現状を伝えるまでの過程を描いた告発映画だ。 不朽のディストピア文学『1984』で名高いジョージ・オーウェルが、1945年に発表した傑作寓話『動物農場』の誕生秘話の描写も、オーウェル・ファンには見逃せない。 監督は『太陽と月に背いて』『ソハの地下水道』のアグニェシュカ・ホランド。 米中の経済戦争、中東の混迷など今日を考える上でも参考になる実録ドラマとしてもおススメしたい。

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