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みうらじゅんの映画チラシ放談

『続・荒野の用心棒』 『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

月2回連載

第34回

── 今回まず選ばれたのは、『続・荒野の用心棒』ですね。

みうら 僕も随分この映画は観たし、VHSの時代からレーザーディスク、DVDまで買ってるんですが。今回は4K版とかそういうのですか?

── チラシを見る限り、デジタル・リマスター版、としか分かりませんね。

みうら まあ仕方ありませんね。このチラシがいいですもん。普通は棺桶を引きづってるジャンゴの写真にすると思うんですけど、チラシでもうガトリング銃をブッ放すことをバラしてありますもんね(笑)。

── ほぼオチがチラシになってるわけですよね。

みうら アメリカの西部劇のパチモンとして誕生したマカロニウエスタンがクラシックになったってことですからね。別にカットされていた部分が復活した、とかじゃないんですよね?

── そういう情報は書いてないですけど、新しい表現が書いてあります。“元祖パンク&アンチクライスト映画の決定版”だそうですよ。

みうら え? “マカロニウエスタン”とはもう謳ってないんですね。本来は“スパゲッティウエスタン”だったものを、淀川長治さんが日本ではマカロニに変えたって噂は聞いてますが。でも、それはどうなんですか? マカロニも確かにイタリアですけど、今回は何だかその解釈はよりグラタン色が強くなってますね。

── 確かに。当時はマカロニといえばマカロニグラタンのことでしたよね。

みうら 僕らの頃はグラタンでしたね。あとはマズイ給食のサラダでたまに入っていたくらいでしたよ。しかし、そのマカロニウエスタンという言葉も、もはや過去のものであるということですね。

── あと“元祖パンク&アンチクライスト映画”というのはどうなんでしょう?

みうら そもそも“アンチクライスト”ってどういう状態を指すんでしょうか? アンチってことは、正道のクライストがあるわけですよね。アンチが神様にツバを吐くこととすれば、神様にツバを吐かない映画ってことですかね。“パンクスピリッツ全開”とも書いてありますけど、この映画が公開された1966年って、まだパンクスピリッツなんて言葉もないですからね(笑)。

“ジャンゴ、お前が愛した女はもういない”とも書いてありますね。もうチラシでほぼストーリーを言ってる。全部言ったつもりだけど、ただひとつ謎として残るのは“続”の部分ですよね。昔からおかしいと思ってたんですけどね、この映画、クリント・イーストウッド主演の『荒野の用心棒』とはまったく関係ない映画ですから(笑)。当時、『荒野の用心棒』がバカ当りしたもんで、ちゃっかり“続”を邦題にしただけでね。

── 今回、新しさを打ち出したいなら、原題の『ジャンゴ』で再公開することもできた気もしますね。

みうら ですよね。かつての『ウエスタン』だって、タランティーノの映画(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)があったから原題の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウエスト』に戻してリバイバル上映してましたよね。もう今の人には、これが何の“続”かも分からないでしょうね。さらにチラシには“記念すべき第一作”って書いてますから、サッパリわけが分かりませんよね! 

だいたい、“1作目”とか言い出したら、そもそも黒澤明の『用心棒』が“1”になりますからね。『荒野の用心棒』は“2”で、こっちは“3”というより、“新”に値しますよね。『シン・荒野の用心棒』。

── 本来は『荒野の用心棒』が東宝のゴジラなら、こっちは大映のガメラみたいなもんですよね。

その例え、的確ですね(笑)。つまり『ガメラ』を『ゴジラ2』って言って公開してるような感じですからね。

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