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没後10年 高峰秀子が愛した12本の映画 ~名女優自ら選んだ、名匠たちとの仕事~

20/1/6(月)

『馬』1/11、17 新文芸坐 「没後10年 高峰秀子が愛した12本の映画 〜名女優が自ら選んだ、名匠たちとの仕事〜」(1/11〜22で上映) 『馬』については、監督の山本嘉次郎が『カツドウヤ水路』で、主演の高峰秀子が『わたしの渡世日記』で、助監督の黒澤明が『蝦蟇の油』で、同じく助監督の堀川弘通が『評伝 黒澤明』で、各自書いているのでエピソードが豊富に残っている。 そのたくさんあるエピソードの中で今でも語り継がれているのは、助監督の黒澤と15歳(撮影期間は13歳から15歳までの3年間)の高峰の恋の物語だろう。 山本は、『カツドウヤ水路』の中で以下のように書いている。 「デコ(高峰秀子)がはじめて馬の手綱をとって馬を扱う場面は、田すきのところであった。(中略)午前十時頃から撮影を開始したが、どういうわけか、デコは皆から離れたところで、ひとりポツンと背を向けて立っている。その後ろ姿では、どうやら泣いている様子である。助監督であった黒澤明君が憤然猛然としてデコのところへ素っ飛んでいった。十分か二十分、なにやらポソポソと黒澤君がいっていたが、とうとうたまりかねて、大声で叱咤した。それと同時にデコは豪雨沛然といった形で泣き出してしまった。その泣き声は二時間も三時間もつづいた。そしてその日は、一カットも撮影できず、中止となってしまった。私は、デコと黒澤君の様子にただならぬ気配を感じた。それはデコが十五歳の春のことである。」 水先案内から逸脱している引用だが、本作での高峰秀子の素晴らしい演技を生んだ背景のエピソードとして、紹介したかった。 彼女の『わたしの渡世日記』(新潮文庫)では、その恋の顛末が綴られている。同著は日記文学としても傑出したものだと思うので、是非読んでいただきたい。

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