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「喜美子の横にいるのはしんどいな」漏れ出た八郎の本音 『スカーレット』が描く“才能”の残酷さ

リアルサウンド

20/1/11(土) 12:30

 『スカーレット』(NHK総合)第14週「新しい風が吹いて」では、喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の間に少しづつ生まれていた亀裂がついに“声”となって露わになる。

 昭和44年、八郎は金賞を受賞してから3年が経ち、いまだに自分の過去の作品を超えられずにいた。銀座で個展の開催が決定し、生活は以前よりも安定はしていたが、八郎の中で息苦しさは日に日に増していく。

 ある日、かわはら工房に新しい風が吹く。弟子入りを志望しやってきた三津(黒島結菜)。美大出身で芸術一家、明るくものおじしない性格の彼女は、八郎にもどんどん意見をぶつけていく。「大胆に土を替えてみては」「新しいものを取り入れたら先生の作品は変わります」。進化せずに落ち着いてしまったと上から評価された八郎は陶芸の道に迷い、さらには信楽への強いこだわりが自身を苦しめていた。

 「壊したらええんよ。縛られてるから。壊そうや、一緒に」。喜美子からの提案にも「僕と喜美子はちゃうで。違う人間や」と突っぱねる八郎。そんな時、八郎の心に響いていたのが三津が何気なく明かした元彼・さそり座のヒロシの話だった。ヒロシは、益子焼の師匠に学びながら自ら作品も発表し奨励賞も取っている、閃き型の天才肌。不器用な三津はヒロシから「君も頑張れ」と言われ出来ない自分に余計に腹が立ち、「才能のある人は無意識に人を傷つける」と思った。

 その境遇は八郎と喜美子の関係性とも同じだ。八郎が三津、喜美子がヒロシ。喜美子にコーヒーカップの注文が入ったり、ちや子(水野美紀)が女性陶芸家として作品を作ることを強く勧めたりと、以前から予兆はあった。八郎の中でそれが確信に変わったのは、喜美子が釉薬のこと、調合のことを2年半の間で勉強し、追いついてきた時だろう。「豊富な知識に裏打ちされた自由奔放な作品ほど怖いもんはない」。ついに喜美子は独自の作品を作り始める。八郎が行き詰まっているのを励まそうとしている。一緒に前へ進もう。才能のある喜美子の行動、言葉は、八郎を知らず知らずのうちに傷つけてしまっていたのだ。

 「喜美子の横にいるのはしんどいな」。八郎は三津にぼそっと告白する。自分を軽く超えていった喜美子と不器用に粘土をこねる三津。そんな本心を打ち明けられるほどに、八郎は三津に居心地の良さを感じているのが分かる。おにぎりを握りながらいたずらに笑う喜美子と、才能への憎悪が隠しきれない八郎の対比が、恐ろしく生々しい。

 かわはら工房に吹き込む新しい風とは対照的に、信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)には幸せな新しい風が舞い込む。信作の気遣いのできる優しいアプローチもあり、百合子は徐々に信作を男性と意識していく。そして、ついに「家庭を築いてもええよ。結婚前提にお付きあいしてくれても」と百合子から切り出す。「ええ人~?」と百合子お得意の多数決から満場一致の2票で付き合うことに。

 第15週「優しさが交差して」では、直子(桜庭ななみ)から交際相手との間に子供を授かったという連絡が入り、信作と百合子の結婚話どころではなくなってしまう。また、予告では三津の「先生のこと襲っちゃうかも」という大胆なセリフ、八郎が喜美子に「結婚する前の頃の作品に戻ろうと思ってんねん」と告げる場面もある。徐々に大きくなっていく2人の不協和音。昼ドラばりの不穏な空気のまま、喜美子と八郎は別れを選んでしまうのだろうか。(渡辺彰浩)

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