三枝成彰 知って聴くのと知らないで聴くのとでは、大違い!
長調と短調に隠された秘密 (その1)
毎月連載
第7回
19/1/8(火)
Vector memory/Shutterstock.com
音楽には、長調で書かれたものと、短調で書かれたものがあります。長調の魅力もさることながら、短調が世界じゅうの人に好まれるのには、理由があるのです。明快で穏やかでわかりやすい長調は、世界のどの民族が聴いても心地よい響きを持っている。安心・安全な音といえるでしょう。それに対して短調には悲しみやメランコリーがあり、ときに人の心を揺さぶり、ときめかせる力があるのです。不安、驚き、恐れ、せつなさ……、短調の響きにこれを感じるのは、用の東西を問わず、世界共通です。
演歌やポップス、ロック、映画音楽も、もちろんショパンもチャイコフスキーもラフマニノフその他のクラシック音楽も含めて、心動かされる楽曲を分析していくと、必ずといっていいほど短調が用いられていることに気づくのです。
2000年代のはじめ、『冬のソナタ』に代表される韓流ドラマが日本で大ブームを巻き起こしたのは記憶に新しいところでしょう。驚くのは、いまではまったく文化の違う中東諸国でも盛んに放送され、人気を得ているということです。ヒットの要因には、ストーリーづくりの巧みさや俳優さんのお芝居のうまさもあるでしょうが、私としては、恋愛を扱った韓流ドラマがあれほど視聴者の心を動かし、支持されたのは、短調を絶妙に使った音楽の力によるところが大きいと思っています。
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