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和田彩花の「アートに夢中!」

[特別展]仏像の姿(かたち)〜微笑む・飾る・踊る〜

毎月連載

第2回

今回紹介するのは、仏像を「顔」「装飾」「動きとポーズ」の切り口で紹介する、三井記念美術館で開催中の「[特別展]仏像の姿(かたち)〜微笑む・飾る・踊る〜」(11月25日まで)。日本には古来多くの魅力的な仏像が伝えられている。これらの仏像の作者である「仏師」の豊かな感性と独創性、そして高度な技術に光を当て、普段あまり気付かない仏像の姿に迫る同展。仏像好きの和田さんにとっても、多くの発見がある鑑賞体験となったようだ。

よい意味で力の抜けた
穏やかな《如来立像》

 まず展覧会場に入って、展示数の多さに圧倒されましたが、仏像大好きな私としては最高の空間でした。

 私はいつも仏像の全体の印象、オーラなどを初めに見るのですが、今回の展覧会で面白かったのは、切り口が最初から提示されていたことです。『「顔」「装飾」「動きとポーズ」を見てください』と掲示されていたので、「なるほど、ここを見たらいいのか」と。でも、それを頭に置いて見ていくと、いままで私はいったい仏像の何を見てきたんだろう! と、愕然としてしまいました(笑)。実はちゃんと仏像のこと、特に細部を見ていなかったんだなって。

 観る切り口を定めてしまうことは、時には視点を狭めてしまうことにもなりかねませんが、今回は違いました。切り口を提示してもらうことで、仏像ときちんと向き合い、もっと深く知ることができたように思います。

《如来立像》 鎌倉時代(13世紀) 個人蔵 撮影:六田知弘

 まず私が最初に惹かれた仏像が、《如来立像》です。360度ぐるっと観ることができる展示になっています。

 とても穏やかなお顔をされた如来だなと思いました。お顔をよく見てみると、目尻が少し下がっています。そして横から見るとよくわかるんですが、上唇がすごくぽってりしていて、そこにも親しみがわきました。私にとって如来は「無」の表情という印象。そんなに穏やかさを感じることがあまりなかったので、「あ、この人案外親しみやすい!」って嬉しくなりました(笑)。

 あと、「猫背」具合も親しみやすさを倍増させています。正面から見てもやや猫背とわかりますが、後ろや斜めから見ると、もっと猫背具合がわかる上に、肩の厚みがかなりあり、頼り甲斐があるとも思いました。

 もちろん仏像が姿勢正しく凛としているお姿は美しいし、対峙するこちらも気が引き締まりますが、どうしても近づきがたい印象があったりしますよね。でもこの如来さまはいい意味で力が抜けていて、私たちを優しく穏やかに包み込んでくれます。

 この如来で私が皆さんに観てほしいもう一つのポイントが、「衣文」です。まず衣文が細かく三角形に下がっているのがわかりますが、その線は真ん中だけがしっかり彫られているんです。一見すると複雑な衣文線を描いているように見えますが、案外さっぱりとしていて、垂下する衣が下にいくにつれて綺麗に収まっている。そのバランスの美しさにも目を惹かれましたね。繊細で技巧を凝らした衣ももちろん素晴らしいですが、この如来の衣はとても軽やかで、これも穏やかさを感じさせる要因の一つだなと思います。

豪快さ、怖さも感じた
《十一面観音立像》

《十一面観音立像》 平安時代(9世紀) 三重・瀬古区 重要文化財

 そして次に目が止まったのが、《十一面観音立像》。

 普通、十一面観音と言われたら、まず頭の上の顔の多さに皆さんも注目して見たり、びっくりしたりしませんか? なのにまずそこに目がいかないぐらい、このちょっとブスッとした表情とか、衣からいまにもこぼれ落ちそうな、樽のようなメタボなお腹が気になってしまいました(笑)。

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