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赤い公園は“決まった型”にはまらないーー『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』で見せる挑戦的なスタイル

リアルサウンド

19/11/20(水) 18:00

 衝撃の連続に体感としてはあっという間だった。

 赤い公園が、現在全国11公演にわたるツアー『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』を開催している。ツアー2公演目、11月10日に東京・EX THEATER ROPPONGIで行われたライブを観た。筆者が赤い公園を観るのは、今年春に開催された新体制となって初のワンマンツアー『Re: First One Man Tour 2019』以来。およそ半年の期間で、夏フェスへの出演を経て、バンドはさらなる変貌を遂げていた。

 2018年5月に新ボーカルとして石野理子が加入。同年の夏フェス、冬フェスへの出演はあったものの、『Re: First One Man Tour 2019』は石野を迎えた新しい赤い公園が、全国のファンに会いに行くという意味合いを持ったツアーだった。そこで披露されたのは、石野が加入する以前の赤い公園の既存曲と2018年10月に新体制初の新曲として発表された「消えない」だけでない、多くの未発表曲。赤い公園は新体制の初お披露目となった『VIVA LA ROCK 2018』のステージでもすでに新曲を披露していたが、ライブ、ツアーを重ねるごとに、新曲のストックは増え続けている。実験的で、挑戦的なその活動スタイルは、今年7月に生配信され、音源化されていない新曲を中心としたライブが展開された『赤い公園 YouTube Live』からも見て取れるだろう。10月にリリースとなった『消えない – EP』は、現在の赤い公園のライブスタイルからすれば、言わば“体験版”。オフィシャルインタビューからも、石野の存在に感化された津野米咲(Gt)の湧き出る創作意欲が伝わって来る。「凛々爛々」のMVで石野が全力疾走しているような、限りなく前傾姿勢の状態が、今の赤い公園だ。

石野理子(Vo)

 今回の『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』で最も驚いたのは、半年前から遥かにアップデートされたバンドのパフォーマンスだった。オープニングSEが会場に響くと、4人がゆっくりとステージに登場。おもむろに楽器が鳴り始める中、石野だけが俯き加減に、ステージの中央で凛とした姿で立っている。そんな思わず息を呑む光景から1曲目はスタートする。石野は『VIVA LA ROCK 2018』から、10代とは思えない佇まいと歌声でフロアを圧倒し続けてきたが、同時に彼女の持つ風格はより研ぎ澄まされていっているように思う。津野、藤本ひかり(Ba)、歌川菜穂(Dr)の3人も石野に呼応し、グッとバンドとしてのグルーヴ感が強くなっていく。


 そのことをより強く感じさせたのが、『消えない – EP』の収録曲を披露した際。収録曲5曲のうち、今回のツアータイトルにもなっている「Yo-Ho」以外は前回のツアーでも披露されていた。音源と比べてみても、今回のツアーへ向けての細かなライブアレンジが見られる。中でも驚いたのが、メロウなビートが乗るヒップホップ「Yo-Ho」。赤い公園としても初の試みの楽曲であるだけに、ライブアレンジも決まった型にはまらない、はまろうとしない、バンドのスタンスが垣間見える。『消えない – EP』のアートワークは、担当したskydiving magazineが「消えない」にインスピレーションを受け、“周囲に同化しないカメレオン”を描いたというが、その思いは4人も一緒のはずだ。

 『FUYU TOUR 2019 “Yo-Ho”』では、赤い公園の既存曲、『消えない – EP』収録曲、そしてさらなる未発表曲が披露された。セトリに組まれた新曲を聴いて感じたのが、キャッチーな曲調とメッセージ性の強さ。一度聞いただけで、帰り道で口ずさめるほどにポップでありながらも、どこか変態性も孕んでいる、津野の記名性が光る楽曲が並ぶ。

〈こんな所で消えない/消さない〉(「消えない」)

〈片道切符で僕ら未来へ行こう〉(「HEISEI」)

 この2曲は、赤い公園のこれまでとこれからを歌った楽曲だ。今の赤い公園は運命のような巡り合わせをした奇跡のバンド。『消えない – EP』がたくさんある新曲の一部であるように、今見ている赤い公園もさらに進化していく前の形なのかもしれない。そう期待させる勢いと可能性を彼女たちは身に纏っている。以前、津野はパーソナリティを務める『赤い公園 津野米咲のKOIKIなPOP ROCKパラダイス』(NHK-FM)にて、赤い公園として目指す場所を“大きな景色”と明言していた。満員となったEX THEATER ROPPONGIの光景を見て、赤い公園について行けば、“大きな景色”を見せてくれるのだと、強く確信した。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

赤い公園 オフィシャルサイト

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