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コロナウイルスで壊滅的な春興行 頼みの綱は『名探偵コナン』

リアルサウンド

20/3/18(水) 19:00

 新型コロナウイルスの映画興行への影響は大きく分けて三つ。一つは、感染リスクを避ける客の映画館離れ。二つめは、主に子供の観客層を中心とする作品やハリウッド大作といった高い興収が見込まれていた作品の公開延期。三つめは、公開に踏み切った作品も、メディア向けの完成披露試写や初日舞台挨拶などの中止もあって、作品のプロモーションを十全に行えないこと。本来ならば春の映画興行のピークとなるはずの3月14日、15日の週末、遂に動員ランキング1位の作品(『Fukushima 50』)の興収が1億円ギリギリの水準(1億800万円)まで落ちた。2位の『仮面病棟』も、土日2日間の興収は8200万円。例年の同時期ならば、いずれもトップ10にギリギリ入る程度の数字だ。日本では、中国、アメリカ、欧州各国のように(北海道などの一部地域を除いて)映画館の閉鎖にまでいたらなかったのは不幸中の幸いと言うべきだが、相次ぐハリウッド大作の公開延期を受けて今後も半年以上にわたって慢性的な作品不足や、プロモーションの機能不全や、同時期公開作との想定外の観客層のバッティングが起こることは決定的で、2020年の映画興行は深刻なダメージを負うことになる。

参考:国内外で相次ぐ新型コロナウイルスによる映画の公開延期 今後も広がる興行への影響を考える

 今の時期の映画興行において明るい側面はなかなか見つけにくいのだが、強いて挙げるなら、本格的なコロナショックが起こる前から健闘していた『パラサイト』や『犬鳴村』などの作品の上映スクリーンの数が、作品不足によって高水準でキープされていること(しかし、それも感染リスクを危惧する観客の映画館離れと合わせて、良くてもゼロサムといったところだろう)、『ミッドサマー』がヒット中のアリ・アスター監督の『ヘレディタリー』の4DX上映などの旧作の企画上映が増えたことくらいか。

 そんな中で注目されるのは、例年4月中旬に公開されて、近年はその年の年間興収記録のトップ5には確実に入り、直近の2作品では興収90億円を超える興収を上げている『名探偵コナン』シリーズの最新作、『名探偵コナン 緋色の弾丸』が4月17日に公開予定であること。幅広い年齢層から支持されている同作がもしそのまま公開されれば、映画興行の停滞ムードも一気に吹き飛ばすほど大勢の観客が劇場に押し寄せるのは確実だが、今のところその公開日が変更されそうな気配はない。3月13日には、一時期発売が見合わされていた前売り券やムビチケも発売に。配給の東宝は3月6日公開予定だった『ドラえもん のび太の新恐竜』の公開を延期(現時点で公開日は未定)したことで年間の公開スケジュールに甚大な影響を及ぼすことになっただけに、なんとか『名探偵コナン 緋色の弾丸』だけは死守したいところだろう。

 1ヶ月後に日本における新型コロナウイルスの感染状況がどうなっているのか、また、映画館という環境にどれほどの感染リスクがあるのか、専門家であってもはっきりとしたことは言えない状況。しかし、ちょうど1ヶ月後となる『名探偵コナン 緋色の弾丸』の予定通りの公開は、配給の東宝だけでなく、映画興行界全体にとっても「正常化」の指標となるだろう。興行界が最も恐れているのは、人々から「映画館で映画を観る」という習慣がなくなってしまうこと。ただでさえ、日本は国民一人当たりの映画館での年間鑑賞本数が平均1.5本程度という映画興行衰退国だ。それでも、年間平均1本を割り込む寸前だった数年前から比べたら、ここ数年でかなり持ち直してきてはいた。近年で年間観客動員数が顕著に落ち込んだのは東日本大震災があった2011年。その後、前年の2010年の水準に戻るまでに約5年の年月がかかった。今回のコロナショックは、それにともなう国内外における大不況の長期化も危惧されていて、さらにかつてのテレビの普及期やビデオの普及期とも内実のまったく異なるストリーミングサービスの普及期とも重なっているだけに予断を許さないが、なんとか持ちこたえてもらいたい。(宇野維正)

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