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『HiGH&LOW』は“永遠”から“継承”へ 『THE WORST』スピンオフドラマの狙いは?

リアルサウンド

20/11/5(木) 8:00

 EXILE HEROが企画・総合プロデュースを務める総合エンターテインメントプロジェクト『HiGH&LOW』(以下、『ハイロー』)の新プロジェクトとなる全6話の連続ドラマ『6 from HiGH&LOW THE WORST』が11月19日から日本テレビ系の深夜ドラマ枠で放送される。

 本作は昨年公開された映画『HiGH&LOW THE WORST』(以下、『ザワ』)の後日談となる物語で主人公は、希望ヶ丘団地で共に過ごした幼馴染6人。

 天真爛漫な花岡楓士雄(川村壱馬)、成績トップの桐原誠司(白洲迅)、ケンカが好きな尾々地真也(中務裕太)、正也(小森隼)のオロチ兄弟。お転婆で勝ち気な石井マドカと内気な性格の前川新太(矢野聖人)。個性がバラバラの6人は固い絆で結ばれていた。10年前に埋めたタイムカプセルを埋めた6人が揃った夜の帰り道、突然の悲劇が起こる……。というのが現在紹介されているあらすじだ。

 『ザワ』は『ハイロー』の中では外伝的な作品で、高橋ヒロシの不良漫画『WORST』(秋田書店)とリンクした世界観となっており、劇中では『WORST』に登場する鳳仙高校と『ハイロー』に登場する鬼邪高校の不良たちが戦う姿が描かれていた。

 SWORD地区を統治する5つのチームの抗争が裏社会を牛耳る九龍グループとの戦いとなり、物語が行き着くところまで行き着いてしまった結果、次の展開が難しい中、新たな可能性として注目されているのが『ザワ』である。

 本編と違うのはサイズダウンしたことで、地に足のついた密度の濃い物語を展開できているところだろう。

 これは『ハイロー』では、地元商店街とのつながりが強かったコブラ(岩田剛典)たち山王連合会のパートで掘り下げるべきだった物語で、うまく描くことができれば宮藤官九郎脚本の『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』(ともにTBS系)のような、地に足のついた20代前後の若者(マイルドヤンキー)の青春ドラマに仕上がったと思うのだが、シリーズは日常的な物語を丁寧に見せていくよりも、LDHが得意とするMV的な映像によるド派手な集団アクションを見せる方向へ本編は向かっていった。

 この選択は結果的に大成功だったと言える。筆者はテレビドラマ『HiGH&LOW~STORY OF S.W.O.R.D.~』(日本テレビ系)が始まった当初から『ハイロー』に注目していたのだが筆者の評価は、ビジュアルとアクションといった映像面のもので、ドラマとして話の見せ方や各キャラクターの描写に関しては厳しいものがあったと記憶している。  

 何より、あの誰が誰だかわからないまま進んでいく破格の群衆劇に戸惑ったのだが、このバランスの悪さ(普通のドラマは脚本が良くても、ビジュアルが貧しいので真逆である)が病みつきとなり、「これは今まで自分が観たことがない新しいドラマだ」と思って追っていたのだが、本格的に人気の火が付いきEXILEのファン以外の層まで広がったのは、劇場版第1作『HiGH&LOW THE MOVIE』(以下『ザム』)からだった。

 しかし、『ザム』も、ドラマパートの弱さをアクションと映像美で補うという基本姿勢はテレビドラマと同じだった。以降のシリーズは基本的にアクションと映像で見せて弱点であるドラマパートが悪目立ちしないように削る方向へと向かっていったのが、このバランスの悪さは今となっては妙な味わいとなっており、琥珀(AKIRA)周辺のくどい回想や台詞で延々と心情を吐露する場面は、逆に無いと寂しいくらいだ。

 しかしこれは、マニアがダメな部分すら愛おしく思ってしまう「あばたもえくぼ」というやつであり、より広い国際的なマーケットを狙おうという気概と可能性が『ハイロー』プロジェクトにはあるわけで、そうなるとアクションパートだけでなく、日常描写等のドラマパートも、国際的な視線に耐えうるものへとブラッシュアップしないと厳しいだろう。 

 おそらくこれは、作り手が一番の課題として感じていることではないかと思う。

 そういった観点から見たときに『ザワ』は団地で育った若者たちの青春群像劇をベースに、彼らがいかにして大人になっていくか?という地に足のついた物語を不器用ながらも丁寧に描いていたと評価できる。

 どこまでも高みを目指す“永遠”を志向するのではなく、次世代へとバトンをつなぐ“継承”を全面に打ち出したテーマも悪くない。

 これはもちろんEXILEというグループが内包しているテーマなのだが、現在、大ヒットしている漫画『鬼滅の刃』(集英社)にも見られる近年のヒット作にある傾向で、うまくハマれば、より広いファン層を獲得できる可能性は、まだまだある。

 もうひとつの課題は、男の世界である『ハイロー』において女性をどう描くのかという問題だろう。だからこそヒロインのマドカに富田望生という演技力に定評のある若手女優を起用しているのだろうが、彼女の魅力をどこまで引き出せるかが、一番の見どころかもしれない。映画シリーズがNetflixでも配信され、大きな注目が集まっている今だからこそ、これまでとは違う展開に期待したいものである。

※高橋ヒロシの「高」はハシゴダカが正式表記。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『6 from HiGH&LOW THE WORST』(全6話)
日本テレビにて、11月19日(木)スタート 毎週木曜24:59〜25:29放送
※関東ローカル。放送時間は変更になる場合あり
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督 : 久保茂昭、平沼紀久、上條大輔
出演:川村壱馬、白洲迅、中務裕太、小森隼、富田望生、矢野聖人
プロデューサー :植野浩之
脚本:高橋ヒロシ、平沼紀久、増本庄一郎、渡辺啓、上條大輔 
企画制作:HI-AX
制作プロダクション:サルベージ

■配信情報
映画『ROAD TO HiGH&LOW』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE RED RAIN』(2016年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』(2017年)
映画 『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』(2017年)
映画 『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』(2018年)
映画 『HiGH&LOW THE WORST』(2019年)
Hulu、Netflixにて配信中

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